34.『小型ワープ装置』改め
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今回は五千超え……( ̄Γ ̄;)グフッ
*最後、三人称(パパ視点?)あります。
◆
夕食の後、辺境伯に『蒼焔の魔術師』さんが来る“きっかけ”になった手紙のことを問い質されたが――――恥を忍んで答えたよ……。
未確認大型魔獣(複数体)討伐のため、『魔の森』へ行っていた辺境伯と手紙のやり取りを“パパッとやれたらなぁ……”と思ったこと――辺境伯には前にも言ってるから、言うの二回目なんだけど……。ぐぅッ!
――案の定、揶揄われたけどねッ!!
だから言うの、イヤだったんだよ! くっそー!
――――機嫌が直って、大変よろしゅうございましたッ。
私の精神はゴリゴリ削られたがな! くそッ!
◆
翌朝。
“もふもふ”と温もりと、“グルグル、ゴロゴロ”という、小さいながらも響く音で目が覚める。
昨日の夜、寝る前に魔術師さんが滞在することになった客室へ向かい『睡眠と朝ご飯の大切さ』、『徹夜をすること・朝食を摂らないことで起こる弊害』を話し、説得した。
依頼じゃないから時間もあるし、ゆっくり行こう! 急がば回れ、だよ! って。
徹夜と朝食抜きは、どちらも集中力・思考力・作業効率を低下させるし、ミスが増えてイライラしちゃったりする。
それに睡眠不足は、お肌の天敵なのだ!
結果は――魔術師さんから言質を取りました! 私の粘り勝ちです!
……魔術師さんが苦笑してたような……。
いつの間にか布団に入っていた『従魔』のサーベルタイガーの幼獣が鳴らす、喉のゴロゴロ音を耳にながら微睡む。
モフモフを軽く抱きしめ、ぬくぬく……
はぁ~……あったかぁ……。
部屋の温度は魔道具で調整されているそうだが、最近はホント、めっきり寒くなってきた。
ちょっと前までは、ちょっとくっついてるだけで、すぐに暑くなってたんだけどなぁ……。
秋がすぐいなくなっちゃった! 冬の訪れが早い……!
隣国の王都は、ここまで寒くなかった――はず。
離宮はハルバード辺境伯領より南西の方にあるから、あったかったのかな……?
……。
ちょっと前まで居たのに、ずいぶん昔のことみたいで思い出せないや。
……あ。乳母に手紙出してない……!
冒険者になってから月一で出してたんだけど、辺境伯と契約親子することになってから出せてない……。
……心配してるかなぁ……。
あ、でも、今、手紙出したら迷惑かけるかも……。
居ない者扱いしてたのに、何故か、私のこと探してるみたいだし……。
王宮から監視されてるかもしれないから、暫く様子見……かな? むむ。
「……レック?」
「むは」
「ふはっ。『むは』ってなんだ、『むは』って……!」
「しつこーい!」
気が抜けてる時に声をかけられて驚いたんだよ!
私の側で寝ていた幼獣が“煩い……”というように「……ミニャァ……」と、ちょっと低い声で鳴いた。ごめん。
幼獣は、一月ちょっとで“成猫サイズ(軽い)”から“大型猫サイズ(大きさに見合う重さ)”にまで成長した。
急成長では?! と、ちょっと幼獣の体が心配になって、馬を診てくれている獣医さんに話を聞いてみたところ――
『足りなかった栄養が摂れるようになったからでしょうな。
成獣であったなら、どんなに栄養を摂ろうとも成長は止まってしまっているから、大きくなれない――が、幼獣だから大きくなっているのでしょう……』
ただし『専門家ではないので、定かではありませんが』とのこと。
そりゃ、そうだ。魔獣を診ることなんて、普通ないもんねー。
(なら、大丈夫……?)とも思ったけど、成長痛とか……痛くない?? と訊ねたら、『従魔』には契約主の魔力が供給されるから普通の魔獣より丈夫になるんだって。『従魔契約』による恩恵か……。
起き上がり、幼獣の眉間の辺りを“こしょこしょ”する。
おぅ……ゴロゴロ、グルグル鳴り出した。そして、ごろごろ、くねくねして……機嫌が良くなったようだ。
幼獣の体を一撫でしてから手を上げて、のび~!
布団を出て、お着替えです! チチ〜ン♪
……乳母への手紙に関しては辺境伯に相談しようかな……。
◆
「小型ワープ装置の試作品、出来たわよ〜。
といっても、レックスちゃんから預かった魔石に魔法陣と術式を彫っただけの簡易的な物だけど」
そう言って見せてくれたのは、【ワープ】の魔法陣と術式が書かれた小さめの“板状の魔石”だ。
術式は――ちょっと何を書いてるのか分からない。ただ私が理解できたのは、私と魔術師さんの名前である『アレックス』と『レティアス』が、二つの魔石にそれぞれ書かれていることだ。
昼食を終え、昨日と同じように子供部屋にやってきた私と魔術師さん。
『手紙魔法』改め『小型ワープ装置』(試作)の試運転をすることになったのだ!
完成、はやー!
昨日だよ? 昨日、話し合いをしたんだよ? 仕事、早くなーい?!
“私から預かった魔石”とは、昨日、魔術師さんが魔道具師思考になって、ノートにガリガリ書いている間に作った『長方形の板状にした魔石』のことだ。
これは昨日、夕食時に魔術師さんに見せ、意見を聞き、渡した。
魔石の透明度と厚さはOKをもらえたんだけど、ちょっと大きいって言われちゃったんだよね。
手紙はそこまで重くないから、『板状魔石』の三分の一の大きさでいいらしい。手紙ぐらいの大きさはあった方がいいかな〜って思ったんだけど――難しいねぇ……。
因みに『板状魔石』の大きさは、前世日本のお札――“諭吉さん”で、厚さは二センチ。
この板状魔石で試作品を作ってくれた。
そして私は、新たに板状魔石を作ることに……――試作品が上手くいったら、量産したいしね!
板状魔石を三分割にしたかったんだけど、丁度良い魔法が思いつかなくて……。魔術師さんに「新たに作った方が早そうね……」って苦笑されちゃった。あはは……。
小さいから午前のおやつの時間に、チョチョイのチョイ! した。
で、お昼ご飯の時に魔術師さんに再会したんだけど――――夜、ちゃんと寝たから「お肌の調子がいいのよ〜」「化粧のりがいい!」とテンション高めで現れた。
私の知る魔術師さんは、普段からテンション高いけど、今日のには、ちょっと驚いた。「もう、徹夜しなーい」って。
朝食時に食堂には現れなかったけど、部屋でフルーツ(+ヨーグルト)やクッキーを運んでもらって食べていたらしい(情報提供:老執事)。
「寝たから頭がスッキリして捗る、捗る」「徹夜してたらミスってたかも〜」なんて笑ってた。
……ミスは笑えないよ、魔術師さん。
三分割され、小さくなった板状魔石――どうやって割ったんだろ……? 綺麗に分かれている。道具か、魔法か……。
因みに。残った半端の魔石は、魔道具の材料になるから魔術師さんに提供します。
「まずはこっちの――『アレックス』って書いてある魔石に魔力を流してくれる?」
そう言った魔術師さんから『アレックス』と書かれた魔石を受け取ると、名前のところに触れて魔力をちょっと流す。
魔術師さんも『レティアス』の方の魔石に魔力を流していた。
「……これで、いーい?」
「OKよ。
『レティアス』の方に手紙を置いて、レックスちゃんが魔力を流すと、レックスちゃんの魔力に反応して、対になってる『アレックス』の方に手紙が転送される――はずよ」
「はず……」
魔術師さんが、「こっち」「こっち」と指を差しながら説明してくれた。
魔石をまじまじーっと見る。
半信半疑な私に「実験はこれからだもの」と魔術師さんが苦笑する。
「それじゃあ早速、使い方だけど――まあ、さっき言ったけど、魔石に魔力を流すだけね」
「……つかいかた……それだけ?」
「魔道具は、どれも単純なのよ? 誰にでも簡単に扱える道具として作ってるから。
ただまあ――クッソ、魔力食うがな」
「え」
魔石を見ながら魔術師さんの話しを聞いていたら、低めの声で恨み節のようなものが聞こえ、驚いて思わず顔を上げた。
「あぁ……『ワープ装置』の話しね」
……魔術師さんが、なんか虚無ってる……。
『ワープ装置』に恨み――いや、『ワープ装置』に関する仕事で魔力食われすぎた、とか……?
だから、小型化するという発想に食いついた……?
「これは、そんなに魔力は必要ないから――――距離が長くなったら、ちょっと分からないけど……」
「……それはね……しかたないよ」
距離が長くなったらそれだけ負担が大きくなるもの……。【瞬間移動】もそうでしょ……? ダイジョブ、私、分かってるから。
すぐにでも実験したいのに、これから手紙を書くとなると……――絵でもいいかな? いやでも、見られて描くのは……ちょっと……。
「んー……てがみはむり、だから……ちーさいものでも、だいじょーぶ?」
「魔石の上に乗る物なら大丈夫よ」
「じゃー、じっけん!」
そう言って『レティアス』と書かれている方の魔石を持って、椅子からぴょんと下り、タタッとテーブルから離れる。
二メートルぐらい離れ、魔術師さんに背を向けてしゃがみ、魔石を床に置く。
「いっくよー!」
魔法陣の上に【空間収納】から出した緑っぽい『人魚の涙』を置いて――魔力を流す。
魔法陣と術式がふわりと光ると、その光りがくるくる、ゆらゆら〜して回る。
そして光りが消えると、魔法陣の上にあった『人魚の涙』が消えた。
「お〜! きえた!」
バッと立ち上がり、振り返ると、テーブルの上がふわっと光った。
しゃがんで魔石を掴むと、急いでテーブルに向かう。
私がテーブルについた時には、光りが消えていた。
天板を掴んで背伸びをし、テーブルの上を見る。
「きたぁ?!」
「えぇ、実験、成功よ♪」
そう言った魔術師さんが、魔石の上に転送されてきた物――緑っぽい『人魚の涙』を摘んで見せてくれた。
「おぉ~! せーこーだぁ! それじゃぁ……――」
◇◇
邸から護衛を後ろに連れて現れたお子様――アレックスは、花壇の前にくると、ゆらゆら体を揺らして何やら物色中。
そんなアレックスの元に、庭師がゆったりとやってくる。
庭師に気づいたアレックスは、花壇に咲く秋桜を指差し、庭師に何かを言っていた。
辺境伯のアレクセイがそれに気づいたのは、二階の執務室から、休憩がてらに窓の外を見ていたからだ。
――丁度、アレックスが中庭に出てくるところを。
「……何やってんだ、あいつ」
「おぉ、坊ちゃんだ。――今って、蒼焔の魔術師と一緒じゃなかったっけ?」
書類を持った側近のハンスが、アレクセイの隣に来て同じように窓の外の見、思ったことを口にした。
それを聞いたアレクセイの眉間に皺がよる。
ピシ…と、空気が少し冷える。
そろ〜っと視界にアレクセイを捉えたハンスは(……こっわ)と、思わず口にしそうになったのを、空気と一緒に飲み込んだ。
口にしてたら射殺される――そうでなくても、自分の発言で空気が冷えたのだから。危ない、危ない。
庭師が花切り鋏を取り出し、秋桜を何本か切る。
「コスモスもらってるね〜」
庭師から秋桜を笑顔で受け取ると、アレックスは秋桜を抱え、その場にしゃがむ。
右手にずっと持っていた物を地面に置くと、その上に秋桜を一本置いて、手を翳す。
すると、それは光り出し――
“ずっと持っていた物”――それは、【ワープ】の魔法陣と術式が刻まれた“板状の魔石”で、アレックスがそれに魔力を流したから、光り出したのだ。
「!」
「あ。地面に置いたやつって、坊ちゃんが言ってた『手紙魔法』関連のやつ?」
光りが消えると、魔石の上に置いた秋桜が消えていて――庭師は驚き、勢いよく立ち上がったアレックスは、これまた勢いよく足踏みをはじめた。
地団駄を踏んでいるようにも見えるが、両手を突き上げたので、喜んでいるようだ。
「ふふ……はしゃいでるね〜。余程、嬉しかったんだなぁ……」
「チッ」
はしゃぐアレックスの姿に、微笑ましく見ていたハンスの耳に、舌打ちが聞こえた。
言わずもがな。隣にいるアレクセイからだ。
自分の知らないところでやっているのが気に食わないらしい。大人気ない。
「……大人気ないな〜、パパ」
「パパ、言うな」
「いいじゃん。これから仕事中でも、簡単な手紙のやり取り、出来るようになるかもよ?」
揶揄い混じりに言ったハンスは、可能性を示唆する。
けど、それがいつになるか分からないから(……知らんけど)と心の中で呟く。
「……そ、うか」
満更でもなさそうなアレクセイに(……仕事にならなくなったら困るけどねぇ……)と、ちょっと遠い目になるハンスだった。
「――二人共、そろそろ仕事を再開しましょうか」
再び光った魔石の上に紙が現れ、それを見たアレックスは、庭師に別れを告げると、魔石と手紙を持って邸へ走って行く。
そのタイミングで家令のルークから声をかけられた。ちょっと刺々しい……。
「……」
「へ〜い」
アレックスが邸に入っていくのを見届けた二人は、ルークに促され、仕事を再開させた。
◇◇
な、なんとか終わ…… ﹏φ(_ _;)




