東都 東地区α 四月十四日 午前十一時三十二分
「疾斗ちゃん、悪いな…っ!」
声が切ると同時、手をかけた首筋から全身へ向けて体内電流を増幅させて奔らせる。
「っぐ!!」
身体中を巡っていったであろう激痛に、思わず腕を掴んでいた右手を離してこちらを見上げてきた副官へ、眉を下げた月原は謝罪がわりに片手を上げる。
「悪い…お前さんが自分で言った時間になっても戻ってこなかったんでよ。何か視えたか?」
「いや、呼び戻してくれて助かった。美南 龍弥に触れた時と同じだ。兄貴…疾風の声は聞こえたが、相手も映像も何も視えなかった」
「マジかい……須藤のヤロウの能力にはそんなモンがあるなんて聞いてねーぞ」
苦々しく顔を歪めて頭をゆるりと振る自分の言葉に頷く疾斗は、目前で懇々と眠り続けている疾風を見つめる。
染髪剤の色が抜けて本来の色を取り戻し始めた実兄は、古びた寝台に真新しい点滴を繋がれており、その呼吸は明らかに浅い。
拘束した青年が吐いた疾風の居場所は、今回の依頼調査のために彼が臨時外科医として入った東都東中央病院だった。
日が昇るのを待って仲川に連絡を取ったところ、院長である彼もまた全く連絡の取れない状態であった疾風を捜していたらしい。
本来であれば入ることの出来ない日曜の院内へ入り、空いている病室を全て回ったが居らず。
手詰まりかと思ったところで仲川に旧病棟を案内されて探したところでようやく見つけたのだ。
疾斗自身にも僅かな医療知識はないわけではないらしいが、それは彼自身が使用する睡眠抑制剤と基本的な治療方法だけだ。眠り続ける男がもつ専門知識もなければ成分を視る能力も持ち合わせていない。
点滴を調べてもらおうにも先程まで同行してくれていた院長は、生憎呼び出しの電話を受けて外に出てしまっている。
疾斗が再度疾風の夢を共有しようにも、能力を使い過ぎれば、その代償に彼は何時間もの強制睡眠に襲われてしまう。
月原が持つ能力である【体電流能力】を使うことも提案はできるが、彼に苛む異様な睡眠に勝つだけの電流強度がどれほどなのかも分からない状態で行うわけにもいかない。
「何かヒントはなかったのか?」
「…声の穏やかさと言葉から考えるなら、話していた場所は自宅で、相手は」
「香坂 伊純、じゃないかしら?」




