† 東都 中央地区α+ †
タイトルは2話前と同じですが、こちらは疾風の夢。
晴れ渡った薄水色の空の下。
三色の信号は早く帰りたい自分を嗤うように赤い色を点して、延々と車を通し続ける。
漸く色を変えたと同時、高い建物の足元をすり抜けて、息を切らせながらただ一心に走る。
(アイツの授業、終わってるハズだよな?)
生まれつき持っている能力が強力すぎる影響で、弟が外に出られる時間は夜だけしかない。
入学式以降は通信授業を受けているために学校へも行っていない。
壁を透かし見て人の少ない裏路地を見つけて進めば、自分の住んでいるマンションが見えてくる。
半分平日で半分休日の様な今日は、いつもより帰る時間が早いせいか人が多くて邪魔すぎる。
(早く疾斗とゲームやりてーのにっ)
家まで間もなくのところ、近くの公園に立つ時計付き照明を見あげてみれば、その二つの針は午後二時半を示していた。
額や横顔に浮く汗を手の甲で拭い、目と鼻の先にまで近づいたマンションへまた走りだす。
管理室に座る父親への挨拶もそこそこに玄関ポーチを抜け、エレベーターへカードキーと指紋を読ませて自宅階を連打して、誰も居ない事を確認してドアを閉めれば、機械音と共に上昇を始める。
通常居住階とは違い、エレベーターは一切止まることなく昇り続けて、規則的に見える数秒間の窓外の同じ風景を見つめるうちに、自分達の暮らす居住階へと止まる。
早く帰宅出来た事と遊びたい心で逸る気持ちが、キーケースを見つけさせてくれない。
「あったっ…と、たっだいまー!!」
鞄奥から掴み出した鍵を差し込み開けながら、広い廊下へ声を響かせる。
靴を脱ぎ捨て玄関を上がれば、部屋から出てきた弟は目を丸くして迎えてくれた。
「っお、おかえり……あれ?今日早い?」
「土曜だからな、ちょっと遅いくらいだぞ?あ、昨日のボス倒したのか?」
「うん。疾風と考えた作戦でいま倒せた」
「ホントか?!やったな!よし、続き遊ぶ前に宿題片付けよーぜ」
「宿題?」
「算数のプリント。お前のぶんも渡されたんだ」
「出来る…かな…」
「オレがトクベツ授業するに決まってんだろ?あんな先生の授業よりわかりやすくやってやる」
いつか、一緒に学校へ行けるようになるのかな。
いつか、昼間でも一緒に遊べるようになるかな。
いつかは、うけおいにんに、なりたいんだ。
その時は───




