† 東都 中央地区α+ †
今回は《事件》というよりも、ちょっとした《騒動》です。
うたた寝している疾斗の夢からスタート。
薄水色の空が見える。薄い雲を浮かべた薄水色の空だけしか見えない。
鈍銀の枠と無色透明な壁の外は、一体どんな音がしているのだろう。
ルーフバルコニーの下を見た時にあった信号は、昼間はどんな風に見えるんだろう。
街を歩く人達はどんな服を着てどんな話をしているのだろう。
藍色に染まった夜、人が疎らな時間の外界しか知らない。
普通の人の半分の視界しか見えない自分には、きっと眩しいかもしれない。
(疾風、早く帰ってこないかな…)
勉強机に置いた時計を見れば午後二時半。双子の兄が帰ってくるまで三時間はある。
時計を睨んだところで時間が進む訳はなく、ちょっと寂しい気持ちになって、テレビに繋いだゲーム機のコントローラーを握り直す。
一時停止状態からゲームを再開すれば、大きな画面には蒼く煌く大海原が広がる。巨大な魔物が画面いっぱいに暴れ泳ぎ回り、水飛沫を上げて主人公の前に立ち塞がった。
指先で画面上の自分や仲間へ指令を送れば、僅か数秒もかからぬ内にキャラクター達はそれに反応し、各々が手に持つ武器を掲げて強敵へと立ち向かい、攻撃を繰り出して相手の体力を削ってゆく。
(あともう少し……!)
二挺の銃を握る主人公のイラストが数秒閃き、高く跳ね上がり弾雨を降らせれば、魔物が悲鳴を上げて水飛沫になりながら散り消えて、戦闘画面は白く明滅しながらフィールドへと戻ってゆく。
昨日たどり着いたボスだったのだが、兄と一緒に一生懸命考えた作戦で戦った結果の勝利に嬉しくて、自然と頬が緩んでしまう。
「たっだいまー!」
待っていた声が予想よりも遥かに早く聞こえ、驚きと嬉しさに部屋から飛び出して玄関へと向かう。
「っお、おかえり……あれ?今日早い?」
「土曜だからな、ちょっと遅いくらいだぞ?あ、昨日のボス倒したのか?」
「うん。疾風と考えた作戦でいま倒せた」
「ホントか?!やったな!よし、続き遊ぶ前に宿題片付けよーぜ」
「宿題?」
「算数のプリント。お前のぶんも渡されたんだ」
「出来る…かな…」
「オレがトクベツ授業するに決まってんだろ?あんな先生の授業よりわかりやすくやってやる」
同じ顔をした双子の兄が少し得意げに笑いながら背を叩き、それにつられて笑う。
いつか、昼間でも一緒に遊べるようになるのかな。
いつか、一緒に学校に行けるようになるのかな。
いつかは、うけおいにんに、なれるかな。
その時は───
幼少期、右目の力が強すぎて小学校は高学年になるまでは通信だった疾斗さん。




