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墓神  作者: 示右来
GIRL-HOOD
5/9

級友の嗜み_日時丸

閑話です。



 冬休みが終わり、新学期に向けての始業式が始まる一月某日。例に漏れず、雪道を慎重に歩く厚手のコートを着たの二人。コートの中は恐らく制服であろう。

 高校生にしては高身長且つ、ガタイのいい肩幅のその左隣には、少年と比べると華奢で、筆箱に入る定規ぐらいの身長差の少女が一人。

 十开とその幼馴染アイシェである。

 幼馴染と言えばそれはそうなのだが、昔からの家の付き合いの方が、今の関係性を築く原因でもあった。しがらみや、厄介なお家事情が無いわけでもないが、二人は大層仲が良く、今や幼馴染の域を超え許嫁として添えられていた。


 通学は毎度毎度、アイシェの方から十开を迎えに行き、朝食また昼食の弁当まで拵えて家を出る。

 まるで通い妻の様だが、半分はそれで正しかったり、しなかったり。

 今日は始業式のみなので、朝食だけを食べて来た二人。その背後の方から、勢い良い足音が、ザクッ、サクッ__と聞こえてくる。彼らの足元までそれが近づいた瞬間。


「おっはよー」


 トン__

 軽くアイシェの左肩に、声の主であろう少女の右肩が軽く当たった。

 ストレートのサラサラな濡烏ぬれがらす色の髪の毛には、カラフルなヘアピンが四方八方に散らばっている。それでもダサさはなく、少女の顔面の強さも相まって非常に映えていた。

 そんな見た目の派手な少女は日時丸かじまると言い、名前はえらく古風なのであった。

 二人と同じ様に厚手のコートを羽織ってはいるが、膝上のスカートとコートのボタンが締まっていないその様子を見て、十开は怪訝な表情を浮かべていた。


「ご機嫌様……と言いたい所ですが、何だかご機嫌宜しくない様ですわね? 日時丸さん」

「あはっ、わかるー? わかっちゃうー? さすが日時丸の親友だよ、アイシェ()


 アイシェをこれでもかと褒めちぎりながら、十开の方をチラリと僅かに伺っている日時丸。あからさまな十开に対しての嫌味ではある。視線に対しては流石の十开も察しているが、しかし、その真意には気付かない男、それが墓守はかもり十开とあなのである。


「……何だ? 俺の顔に何かついているのか?」


 この有様。


「日時丸さん、そう呆れないでやって下さいまし? 是が非でも鈍感な人なんです」

「だいじょーぶ。元から期待なんてしてないしー?」


 言われたい放題の十开だったが、それに対して不満を持つでもなく、いつもに様に日時丸に声をかける。


「お前、兄ちゃんに構ってもらってないから不機嫌なんだろ、どうせ」

「はぁ? どうせって何よ、どうせって! 」


 歯に衣着せぬ言い方と、そう言うことだけは一丁前に分かっている十开の発言は、どうやら彼女の地雷であった。

 彼女の背景に猫が毛を逆立てている絵が浮かぶ。つまり全然威圧感がない。子供が癇癪を起こしたくらい、可愛いものだった。

 しかし、彼女の様子を見た十开は更に追い討ちをかける。


「お前の兄ちゃんは大変そうだな。だが話くらいなら聞いてやれるぞ」

「……大変? 聞いてやる? 上から目線で笑えないんだけど」

「どうどう、抑えてくださいまし日時丸さん。十开さんの口が達者でないことは、今に始まったことでは御座いませんから。それに悪気も一切ないのですから」

「悪気いのがいっちばん、悪質なんですけどー」

「あらあら、わたくしも口を滑らせてしまったみたいですわ。十开さん」

「……何をだ?」

「……話になんないじゃん」

「まぁ、十开さんですから」


 アイシェの一言には彼女も言い返す気力がない様で、不満そうにむくれていた。

 彼女の頬が紅葉しているのは怒りのせいじゃなく、この寒空のせいだろう。十开とアイシェ二人で居ると、ポツリポツリと他愛無い僅かな言葉を交わすばかりだが、日時丸が居れば、頻繁に空気が白く色づく。


「十开さんですけれど、日時丸さんのことをちゃんと思っていらっしゃいますわ。『どうせ』も『話くらい聞いてやる』も『俺らが居るから、気の済むまで何でもする』と仰いっているのですよ。ほら、口下手ですもの」

「アイシェの言うことだから本当なんだろうけどさ。だからふ・も・ん、にしたげる」

「不問なんて言葉知ってんだな」

「……」

「日時丸さんは博識だな、と仰っていますのよ」

「……」

「十开さんのご家庭は兄弟が多いですし、日時丸さんもお兄様も墓守の家で修学されておりましたし、十开さんにとっては家族みたいなもで、妹みたいに可愛がられているのですよ」

「……ふーん。無駄にパーソナルスペースが近いのよ。口下手なくせにさぁ?」


 十开の不躾な言葉に、再び苛立ちを覚えた日時丸だったが、アイシェの十分すぎるフォローに直様気分をよくした。不満そうな顔だが、口角は緩んでいる。

 家族という言葉を聞いて心が凪いだのだった。

 彼女にとって、己が死んでも大切なものが家族それだったのだ。


「じゃ、今日はめーいっぱい付き合ってよね?」


 数歩前に出て、二人の方を振り返って、満面の笑みを浮かべながら彼女は言った。

 そして次の日、彼女は学校に来なくなった。

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