HOPESTARⅠ
今回もよろしくお願いします。
「まさか…、本当にそうなのか…?」
ヴァサーゴが震える声で問いかける。
「ああそうだ。私はお前たちとこの国を滅ぼすために17年間生きてきた」
「17年前…?もしかして…、アルフェラッツの…」
必死に記憶をたどる。17年前、突然序列1位のアルフェラッツ家が取り潰しの命を受けた事件があったはず。当時の当主を含め一部のものが何らかの理由から反乱を起こしたはずだが、結局国からはたいした説明も無しにそのまま壊滅していた。詳細はいまだに有耶無耶にされている。
「生き延びていたのか。アルマロス将軍、貴官の真名は…」
「ああ、そうだ。我が真の名はアルキオーネ・フォン・アルフェラッツ。貴様が手にかけたアルクトゥルス・フォン・アルフェラッツの長女だ。そういうそこの鎧人形くんももう中身を隠す必要はないんじゃないかな?イスラフェル」
「おい、サイエンティスト⋯、まさか⋯」
言い逃れはできないらしい。僕はアーマーのヘルメット部分を胴体に格納した。
「と言うことで、役者は揃った」
レーレライが指を鳴らすとどこからともなく仮面をつけた7人のの手下が現れ、僕らを取り囲んだ。その中には1年前に見たシグルドもいる。というかあの緑色のローブの剣士と青いローブの魔術師、ウソだろ…!
「真実を世に晒す時だ。ヴァサーゴ、覚悟はできているな」
レーレライが手元で何かの魔法を起動する。
「…待て、これは私のとるべき責任だ」
「…ほう?いいだろう、待ってやる」
ヴァサーゴがレーレライを制止した。
「…あれは私の罪であり、最大の後悔だ。その責任から逃げるつもりはない。だが国の混乱を避けるため、そして友の最期を踏みにじらぬためにも時が来るまで隠すべきだと思った。レラティビティ一等将校にもかかわる話だ。老いぼれの昔話だが、皆、取り敢えず聞いてくれ⋯」
そしてヴァサーゴは自身の過去を語り始めた。
* * *
アスターテ歴221年。
「アルクトゥルス殿、出番でございます」
係の者が控席で水を飲んでいたアルクトゥルスを呼ぶ。
「アルク、がんばれよ。学園祭武術大会史上初の3年生の優勝が君の勝利にかかってるんだ」
先鋒のチームメイトは惜しくも敗れてしまったものの、副将のヴァサーゴが1勝を取り戻したところだ。正直このまま5年Aクラス相手に1勝で終わってもよく1本取ったと絶賛されるくらいだが、せっかく決勝まで来たのだ。どうせなら優勝を勝ち取りたい。
「分かってるよ、ヴァサーゴ。うまくやるさ」
アルクトゥルスはその黒髪を風になびかせながら、フィールドに立った。二人の実力はほぼ拮抗している。主将の座を断じて譲ろうとしなかった二人を見かねて教師が割り込んだ結果、アルクトゥルスは公正なるじゃんけんによって主将の座を勝ち取った。
「相手は誰だったっけ?」
「確か今年武術学院から編入してきた人だよ。前2人がストレート勝ちしてきてて本人が一度も出張ってないからイマイチ実力がわからない。油断ならない相手だね」
アルクトゥルスは木剣を取り、相手を見据えた。
「5年生Aクラス第1チーム主将、ケルビム・エスパーダ!3年生Aクラス第5チーム主将、アルクトゥルス・フォン・アルフェラッツ!」
「本気でかかってきてください」
アルクトゥルスはケルビムにそう言い放った。
「承知いたしました」
ケルビムは剣を構える。アルクトゥルスもそれに続き、自らの固有魔法、"輝光神"を起動する。
「初め!」
『虹橋一閃!』
『不屈の戦士』
ヒト属史上初にして唯一光属性を扱えるアルクトゥルスの持ち味は、その圧倒的なスピードにある。大出力の光を噴射して推進力を得る、現代で言うところの光子力推進によって亜光速に到達するほどの移動速度において彼の右に出るものは居ない。そのはずだった。
ケルビムはそれをまるで予知していたかのように、いとも簡単に受け止めてみせたのだ。
ケルビムの固有魔法"不屈の戦士"は思考速度・認識速度・反応速度を極限まで加速させる。たとえ亜光速で移動しようとも、アルクトゥルスは決してケルビムの反応速度を上回る事が出来なかった。
刹那の間に2人は数え切れぬほど剣を交えた。数秒の後、両者が再び観衆の目に映る速度に減速した時にはすでに勝負はついていた。
結果は非情なまでに圧倒的だった。庶民出身の無名の剣士であったケルビムが、栄華を極める序列1位アルフェラッツ家の次男を完膚なきまでに叩きのめした。アルクトゥルスの刃はすべて封じられ、ケルビムの刃は全てがアルクトゥルスを切り伏せていた。
最初は皆、アルクトゥルスの妬みを買ったケルビムがアルフェラッツ家に消されるのではと思っていた。しかしアルクトゥルスとヴァサーゴはケルビムの剣技に心酔し、即座にケルビムに弟子入りを申し込んだ。
やがて彼らは時には師弟、時には固い絆で結ばれた親友として共に成長していった。
アスターテ歴230年。
ヴァサーゴはアスターテの国王となり、アルクトゥルスは大将軍"閃光"のアルクトゥルスとなり、ケルビムは親衛隊長となった。ヴァサーゴとアルクトゥルスは26歳、ケルビムは27歳であった。
「ヴァサーゴ、実は早ければ今年中に4人目の子どもが生まれそうなんだ」
「ほう!それはめでたい!無事に生まれたらまた盛大に祝おうじゃないか!それにしてもまだ子供が欲しいとは、プルケリマ殿もこんな夫を持って大変だな!」
「それで⋯良ければなんだが、今度の子にはヴァサーゴが名前をつけてくれないか?」
「おお、良いのか?ふふ、楽しみだなあ。そう言えばサーガの様子はどうだい?」
「この前2歳になりましたね。ついにイヤイヤ期に入りましたよ」
「そりゃあ大変だ!」
その頃、アルクトゥルスは魔法そのものについて研究していた。開発中の魔導兵器をアップデートするため、これまでブラックボックスだった魔法の仕組みを解き明かそうとしていた。それにはまず魔法を扱える人間の肉体を調べなければいけない。最初はもちろん身体検査や魔法の試験程度だった。だがアルクトゥルスの知識欲は黒く、貪欲に拡大していった。
そして、運命のアスターテ歴231年。
読んでくださり、ありがとうございます。
友人からの質問
Q, みんな悪魔をポンポン倒してるから悪魔の強さが分かりづらい
A, 彼らはF-22を素手でぶん殴って戦闘不能にしています。たとえ魔法があったとしても、こんなことができるバケモノは同世代中に2,3人いればいいほうです。




