PRELIMINARIES
お久しぶりです。今回もよろしくお願いします。
「…君は誰だ?」
早くもジブリルに敵意を向けられている。そりゃそうだ、とてつもない魔力量の仮面をかぶった怪しい人間がいれば僕だって警戒する。
「大丈夫ですよ」
「気にしないでくれ。彼は信頼できる人間だ」
それを見かねたマルクスとパルケウチカが助け舟を出した。
「アズラエル殿下のお知合いですか?」
「ああ、少し前からな」
それを聞き、ジブリルはようやく警戒を解いた。
「…何をするのか聞いてもいいか?」
「ああ、私も知りたい。いつ何と戦うのかくらい言ってくれないのか?」
パルケウチカも回答を求める。
「…トランティーロ、その本丸です」
「本丸って…まさか…」
ブライトバードを呼び出しながら答える。
「王都アル=イスカンダリーヤですよ。いや、正確にはこれから本丸になると言った方がいいか」
皆その名を聞いて一瞬たじろいだ。それもそのはず、王都が今どんな状態かは現在周知の事実となっている。
「このメンバーなら悪魔10体くらいと連戦しても勝てると思ったからあなたたちを呼んだんです。今ストレッチしといたほうがいいですよ」
「…わかった。と言っても私にはまだ何が起きてるのかさっぱりだがな。指揮官は君に任せる。今から私は君の部下だ」
パルケウチカはそう言いながら僕の肩をポンと叩いた。
「これ、酔うから嫌いなんだよな…」
ジブリルが何かぼやいた気がしたが、気づかないふりをして全員をブライトバードに押し込み離陸した。
ソニックブームをごまかすために亜音速まで減速し、王都に滑り込む。それでも行く手を大量の飛行型魔物に阻まれ、第2城壁より少し内側で全員を下ろした。
「兎にも角にも王城に入らなくては。悪魔に対応されるまでのスピード勝負だ。固まって一点突破陣形でいこう」
火力の高いジブリルとイスラフェルを先頭に両サイドをソフィの結界で守りながら門に向かって突撃する。僕は高熱のジェット噴射で周りの魔物を追い払いながら、突入をサポートする。
『断界の稲光!』
第1城壁の門が閉まっているのを見たアズラエルが、その扉を切り刻んで無理矢理道を作る。
「…!止まれ!」
パルケウチカが全体を止めた。するとその数秒後、まさにジブリルがいたところに上から火炎をまとった砲弾の雨が降り注いだ。
振り返ると、パルケウチカの瞳が群青色に光っていた。十数秒先の未来を視る固有魔法、『蜻蛉玉』が発動している証拠だ。
「クソっ、そのまま歩いてりゃせめて痛みを感じる前に殺してやったのになあ」
空を見ると、両腕から無数の砲身が突き出た女の悪魔が次弾のためその砲身に炎を充填している。
「序列42位、火砲を纏う戦火の悪魔ヴェパルだ!止まるな、狙い撃ちされるぞ!」
手早く指示を出したあと、アーマーをストレイフモードに切り替えてこちらからも制圧射撃を繰り返す。だが、ヴェパルも間隙を置かずすぐにまた砲弾の嵐を吹き荒らす。
ヴェパルが放った誘導弾をガトリング・ブリッツで迎撃し、”エクスカリバー”を放つアズラエルとともにトリニティ・インフェルノで牽制しつつ本体へのダメージを狙う。確かに手ごたえはあるものの、シンプルにヴェパル本体が固くて大きいダメージを与えられていない。ラディウスモードで一撃で決めようにも弾幕が厚すぎて間合いに入り込めるルートがない。何か、広範囲に高火力な一撃を叩き込める魔法使いがいないと攻略できない。それを言ったらそれこそ…。
「少しここを任せた!」
「おい、どこ行くんだよ!おい!」
「もう3か月も行動を共にしているんだ、少しくらい察してくれ!」
僕はリリーを連れ、皆を置いて全力で城に向かって走る。そしてインフェルノ・ブリッツシステムを再度呼び出し、城の地下に照準を合わせる。
「ちょっとあんた、何する気なの?!」
「気が散るからちょっと待ってて!」
半年前に一度足を運んだ時の記憶を頼りに、脳内で地下牢の立体図を描き出す。僕の魔力感知のできる範囲では、市街地にそれらしい反応はなかった。つまり確実にヴァサーゴはアル=イスカンダリーヤでもっとも守りやすく最も脱出しづらい場所、城の地下牢にいるはずだ。射線の角度が数度ずれたらヴァサーゴは灰になる。威力の調整をミスれば城は崩落し、ヴァサーゴは押しつぶされる。恐ろしくシビアな射撃だ。
息を深く吸い、1度目を閉じる。そして覚悟を決め、チャージを完了したインフェルノブリッツを解き放つ。
その閃光は城の地下を穿ち、地下牢をかすめやがて霧散した。ぽっかりと空いたトンネルの中は土埃が待っていたが、どうやら致命的な崩落は起こしていないようだった。
「陛下!いらっしゃいますか!」
「私を殺す気か!」
僕が穴の底に呼びかけると、遠くでヴァサーゴの声が聞こえた。
「今行きます!」
そう言って僕はトンネルの中に飛び込んだ。
* * *
「おい、どこ行くんだよ!おい!」
「もう3か月も行動を共にしているんだ、少しくらい察してくれ!」
アズラエルの呼びかけにもまともに応じず、サイエンティストはどこかに行ってしまった。強大な魔力源が近くにいるせいで魔力感知もまともに働かない。
「お仲間は命が惜しくて逃げちまったみたいだな
あ。てめえも早くくたばんな!」
ヴェパルの弾丸の雨は全く弱まるそぶりを見せず、身を隠せるような遮蔽物は次々と破壊されてしまっている。ソフィの結界で身を守ることはできるものの、媒介物質の無い結界では持続時間が短い。ラミィは持ち前の透過能力で動き回っているものの、彼女では硬いヴェパルに対して決め手に欠ける。
アズラエルは被弾する瞬間に小さくドラウプニルを発動して火炎弾を迎撃し、何とか宙に浮いているヴェパルの真下につけた。
『雷帝の槌!』
天から鉄槌のように振り下ろされた落雷がヴェパルを打ち付ける。
「ぐ…!」
一部だがヴェパルの盾がはがれ始め、そこに的確にパルケウチカが矢を叩き込む。いくら悪魔の魔法で作られた盾とはいえ、さすがにここまでのダメージの蓄積には耐えられなくなってきているようだ。
とはいえ、依然として弾幕が厚い。広い範囲を一気に削ぎ落として火炎弾を消滅させるような魔法使いか、あるいはキリルのような圧倒的な破壊力のある戦士を連れてこないと埒が明かない。ふと脇を見るとソフィは魔力が息切れし始めてるし、弦開眼で見えたラミィはすでに非実体化が切れているようだ。
「マズいマズい、マズいって…!」
弾丸を剣でさばきながら、アズラエルはつぶやいた。二刀流は使いこなせさえすれば、剣一振りよりも手数が圧倒的に増えるのも利点だ。だがヴェパルの物量がそれを凌駕しようとしてる。
「もう駄目だ…!」
アズラエルたちが諦めようとしたその時、サイエンティストの声が響いた。
「まだ早い!」
サイエンティストは音速で飛び回り、その場にいたものを全員抱えてヴェパルと距離を取った。
『ストレイタス』
その直後、空気の斬撃がヴェパルをその周辺ごと削ぎ落とした。
『これじゃあ、倒せたかどうかもわからないや…』
更地と化した城門を見て、アズラエルがポツリと呟いた。
* * *
「…よくご無事で、父上…!」
アズラエルがヴァサーゴの前で跪く。
ヴァサーゴの『天津風』は空気を固体化し、風を斬撃に変える固有魔法だ。通常時でもアストラル魔法に迫る効果範囲を持ち、その絶大な威力も合わさって、特に今回のヴェパルのような相手や多数の敵を相手取る際には恐ろしいまでの効果を発揮する。彼が国王でなければ、間違いなく魔術将軍に選ばれていただろう。
「我々全員が王都にいるとバレた以上、敵さんは休ませてくれませんよ。リリー殿下、お願いします」
「…それで私を連れてきたのね」
リリーの魔法で、すでに満身創痍だったラミィたちが一瞬で全回復した。
「治癒の魔法?!そんな、ありえない…!」
リリーの固有魔法について聞かせていなかったラミィやジブリルが傷があった場所とリリーを二度見する。そりゃそうだ、治癒魔法なんてこっちの世界でもファンタジーの領域の話だったからな。
「それで、なぜ我々をここに集めたんだ?」
僕は事の顛末をヴァサーゴに説明した。
「動機は不明ですが、誰が仕組んだのかは確信しています。ヴェンデッタと名乗るテロリストの正体は…」
「私が説明したほうがいいか?」
聞き覚えのある声。僕はすぐに剣を抜き、声の方向に向けて構えた。
「どこぞのジジイ、それとサイエンティストには心当たりがあるようだがな」
ヴァサーゴは唾を飲み込んだ。
「ヴァサーゴ・フォン・アスターテ、反省しているか? 17年前、私からすべてを奪い尽くしただろう」
ヴェンデッタは深く被ったフードを脱いだ。喉笛に切っ先を向け、狙いを定める。少なからず恩のある相手だ。僕だってできればこんなことは信じたくない。
「ヴェンデッタ…いや、レーレライ・アルマロス情報将軍。将軍位剥奪の上、国家反逆罪の容疑で…貴様を逮捕する」
読んでくださり、ありがとうございました。
ヴェパルはゴエティアでは人魚のような姿で武装船団と水を司る悪魔ですが、戦艦と言ったらやっぱ炸薬的な何かで大砲ぶっ放さないとなと思ったので炎属性のキャラにしました。いずれこの小説が書籍化されることがあれば、キャラデザは褐色肌で露出多めにしてほしいです。
あ、別に艦これじゃ無いですヨ()
ガンダムヘビーアームズとか仮面ライダースナイプ シミレーションゲーマーLv50みたいな、船よりも「大砲‼」って感じのイメージです。スナイプはアレもアレでまあ半分空母みたいな感じですけど。




