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Notice-code:Ω -scientist-  作者: 霧島宇宙
CATASTROPHE

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REALIZE TRUE FEELINGS

今回もよろしくお願いします。

「殿下、剣をお収めください。今ここであなたの魔法を使ったら周りの者もただでは済まないはずだ」

 パルケウチカを見ると、すでに次の矢を構えていた。クー・パルケウチカ将軍はアスターテではあまり見ない藍染の着物を着た男性だ。だが一番興味をそそられるのはその漆黒の弓である。この世界では単一の素材で作られたいわゆる丸木弓が主流だが、彼のものは真竹と木を組み合わせて黒い漆を塗り重ねられた複合弓。それも和弓に近いなりをしている。他にも名前の表記法が平地と違って性→名の順であるなど、文化の違いは色々ある。北方の少数民族出身の彼が幼少期から使っているものらしい。

「レラティビティ一等将校、意見には賛成するが言い方というものがあるだろう」

 アズラエルは少し動きを止めたあと我に返り、剣を鞘に戻した。

 その後場は収められ、会議は続いた。僕とアズラエルはそれ以降、友人として言葉を交わすことはなかった。


 * * *


「私はこんなところに来てまで子供の喧嘩の仲裁をしたかった訳ではないのだが」

 会議が終わり一度仮眠を兼ねた休憩が挟まれたとき、パルケウチカがレーレライに呟く。

「仕方が無い。彼らも本当なら、あと3年はまだただの学生だ。その子供たちの体躯に見合わない重荷を無理矢理背負わせているのは我々大人だろう。むしろ私はあの2人がこれまで大人以上に仕事をこなしていたことに驚いていたよ」

 パルケウチカはため息をついた。

「あの貴官の机に載っていた名簿、筆頭はジブリル・フォン・ルシフェルだったか?全員魔術学院や武術学院に通う者たちだった。貴官は名簿の彼らも前線に送るつもりだろう?」

「ああ、もちろん。学生といえども力ある者だ、アスターテのため戦ってもらう」

「全く、まるで悪魔だ」

「それで結構、国の為だ。私の名が後世で忌み名として語られることになっても構わんよ」

「…アズラエル殿下のお気持ちが少し分かったよ」

 紅茶を飲み終わったあとパルケウチカが自室に戻っていくのを見て、レーレライは一人呟いた。

「ああそうさ。私は未来で何と蔑まれても構わない。何としてでも、アスターテだけは…」


 * * *


「こりゃ破壊の眷属どころじゃなくなっちまったな」

 僕は自室で一人今後について思案していた。

「いや、待てよ。あのシグルドとか言う魔法使い、もしかしたら…」

 彼女の魔法は文字通り「破壊」であった。同じ固有魔法でも個人で仕様に差が出る。創造神様は漠然と「何かぶっ壊す感じの魔法かも」とだけ言っていた。つまり彼女が破壊の眷属でも何ら不思議はないわけだ。それに今回の襲撃のタネは完全に1年前と一致している。今度も恐らくトランティーロとか言うテロ組織が一枚噛んでいるだろう。そこにどんな思惑が働いているか知らないが、何を調べるにも彼らと接触しなければ。だとしても、あの謎の洗脳魔法が人にも効くものだとしたら?

「"あれ"の完成を急ぐしかない。問題はアズラエルだが…」

 まだ断片的なパーツしか描かれていないホログラム設計図を見ながら、そう呟いた。


 * * *


「あの様子じゃ、助けが来るのも難しいわね」

 ソフィが結界の微調整をする。

 王都が魔物の大群に襲われたとき、ラミィとソフィ、それと一部の生徒は学院内の植物園に逃げ込んだ。すぐに気づかれてしまったものの、その場に偶然居合わせたソフィが咄嗟に防護結界を張って一時的ではあるが難を逃れられたのだ。ただ、今も周りを群れに囲まれている状況は変わらない。

「さて、どうしましょうか」

「やはり自力で脱出するしかないでしょう。今いるものだけで何とか城壁から出ることができれば、あるいは」

 ほかの生徒と違い、一度実戦を経験している分ジブリルが頼りになる。

 「幸い食料と薬、水に関しては魔法でなんとかなります。魔物の群れに関しても突き破るだけならいけます。ですが、皆さんもアレに気づいているでしょう」

 ジブリルが音質のすりガラス越しに外を指さした。

「ええ、わかっているわ」

 ソフィもその方向を見る。

「あの大きさの魔力。確実に悪魔がいますね」

 ラミィが確かめるように言った。

「だけど、あいつがどんな魔法を使うのか全くわかりません。イスラフェルがいればなあ…」

 もっと悪魔について聞いとけばよかった、とジブリルは後悔した。イスラフェルは古アスターテ語で書かれた悪魔の解説の載っている文献を全て暗記しているのだという。今では言語学者でも理解できる者が少ない言語であり、そもそも悪魔なんてここ数百年は出現記録がなかったから誰も研究していなかった。

「かといってこのままここにいるのも危険ですね。幸いというべきか、あちらは我々に気づいていないようですし」

 ジブリルは胸をなで下ろす。

「いや、そうとも限りませんよ」

 ソフィがそれを遮る。

「悪魔は原則一つの魔法しか使えない、と授業で教えたでしょう。現状見つかっていないということは、裏を返せばその分戦闘に向いた能力なのかもしれません」

「とにかく、あいつを倒さなきゃどこにも行けませんよ。私が少し見に行ってきましょうか?」

 ソフィは首を横に振った。

「今は夜です。それに、みんな疲弊しています。敵に感づかれていない限り、今夜は見張りを立てつつ朝まで休息をとって体力を取り戻した方がいいですね」


「やっぱ先生って大変なのね…」

 ソフィは手すりに寄りかかり、月明かりが照らす花を見つめる。今まで任務でそこそこ大きな権限を与えられたこともあったが、それとはまた別の種類の責任が伴う仕事だ。

 ただこなせば終わりの短期任務ではなく、アズラエルの護衛をしつつしっかり生徒を育てなければいけないちゃんとした教職。本当に大変だがやってみると意外と楽しい。割と天職なのかもしれない。生徒一人ひとりに向き合うため授業が一つ終わるごとにメモを取り続け、教え子たちが引き起こす予測不能な事態に共に立ち向かう。そして、ささやかな恋も…。

「ローズ先生」

「ふぁい?!」

 突然後ろからラミィに話しかけられ、思わず変な声を上げた。

「…顔、真っ赤ですよ。何妄想してたんですか」

「べっ、べべべべ別に、何もありませんって!」

 ラミィはソフィの隣に立った。

「結構前から、何となくわかってましたよ。先生の気持ち」

「…何のことですか?」

「先生、イズのことすきでしょ?」

 何も言い返せないソフィ。

「…そんなの無いですよ、と言ってもどうせすぐバレちゃうんでしょう。ええ、そうです。私はレラティビティ君、いや、イスラフェル君のことを愛しています。

 ちょっとしたことに気が利いて、自分なりの信念をもっていて、夢中で魔法を研究しているところがかわいくて、仕事モードのときからは想像がつかないほどやさしくて。知ってますか?私の研究室の窓際にある赤いサルビアの植木鉢、あれイスラフェル君がお世話してるんですよ」

「めっちゃイズのこと好きじゃないですか」

 ソフィはうつむいた。

「ああ、でも私のことは気にしないでください。私は平民の出ですし、そもそも教師と生徒ですし、釣り合いませんよ。生徒の幸せを願うのは教師として当然のことですよ」

 ふと、あの日アケメネスでしてしまったキスのことを思い出した。

(でも…、ここで全て諦めてしまったら、あの時のキスを…、自分の本心を裏切ることに…)

「…私は別にいいですよ」

「…え?」

 ソフィの顔が初めて上を向いた。

「先生にも幸せになってもらいたいし、人の良いイズが先生の気持ちに気付いたら絶対断らないだろうし、それに先生とイズが結婚してもイズの第一夫人(いちばん)は私でしょうし」

「…いいの?」

「ええ、第二夫人(にばん)なら。もちろんイズが納得したらですけど」

「うそ…!うそうそうそ…!なにこれ?!夢?!…痛った!夢じゃない!本当にいいの?!」

 自分のほほをつねりながらソフィが嬉し涙を流す。

「ちょっと先生、落ち着いてください!」

「うふふ…、こんなに笑ったの、人生で初めてだわ!今は全然笑える状況じゃないのに!」

 太陽よりも明るい笑顔で、ソフィがラミィに抱き着く。


 翌朝。

 ソフィとしては生徒を、ましてや将来人生の大半を共に過ごすだろう相手を危険にさらすのは不本意極まりないのだが、今のところ偵察できそうなのがラミィしか居ない。

「まずいと思ったらすぐに私たちを呼んでください。良いですね?」

「…はい」

 ラミィは唾を飲み込み、覚悟を決めた。

 

 ラミィは蜃気楼(ミラージュオーラ)蜃気蛟(ミラージュヘイズ)を常時ONにして、ソフィが結界の毛紅作った小さな隙間から外に這い出た。足音を立てず、慎重に。温室から出ると、そこに広がっていたのは…。

「何これ…?」

 周りの建物が茶色く…、()()()()()

 時計塔の鋭い屋根の上に座っているのは入れ墨のようなどす黒い魔法陣をもつ青年の悪魔。


 ”腐食”を司る第14の悪魔、レライエだ。

 読んでくださり、ありがとうございます。


 人生で初めて髪を染めました。一度ブリーチかけてから染めたんですが、色を載せてない金髪のときの僕を見たら完全にHIKA〇INと同じ顔になってました。

 ちなみにピンクにしました。

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