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Notice-code:Ω -scientist-  作者: 霧島宇宙
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59/64

AS A BROTHER, AS AN APPRENTICE

 今回もよろしくお願いします。

 * * *


「でっか」

 マルクス・サヴォイアは物陰から倒すべき敵を見据えて独り言を放った。

「出て来いって。そこにいるんだろ?()()()()

 筋肉ガチムチの大男が巨大な戦斧を担ぎ、こちらに向かって歩いてくる。

「正々堂々やってくれなきゃ、この一等前衛将校カルロ・アームストロングの名が廃る!」

(ヤバいって!マジでヤバいって!)

 マルクスはそのポーカーフェイスの裏側で上官に対して愚痴を吐き散らかす。

(あのヒト本当にムチャな仕事振るんだから。俺のこと一体何だと思ってるんだレラティビティ将校は)

 手話で部下にサインを送り、機会を見て後ろに控えた雑兵を片付けるよう指示する。

(なんだよ「君ならできるよ☆」って!相手一等将校じゃねえか!それになんだあの年上っぽい言い回し!一応あの人6つ下だよな?!)

「出てこないのかなあ?仕方ないなあ、もう壁ごと吹き飛ばしちゃうよ?」

(しゃあねえ…やるしかないか。幸いアケメネス城(ごえいたいしょう)の中ではアームストロング一等将校の強みの広範囲破壊力が活かしづらいはずだ。それに、多少は城を壊していいって言われてるし)

 マルクスは木製の壁に手を当てる。

『アイアタル』

 壁を通して魔力を伝わらせ、カルロの周囲に木の兵士を生み出す。

「むぅ、腕のいい魔術師がいるようだな!」

 だが、木の兵士はすぐに大斧に薙ぎ払われてしまった。だが、その一瞬の隙でカルロの間合いから距離をとることができた。

(まあ木で作った人形じゃ決め手に欠けるよな…。俺の魔力適性が植物系に向いてないってのもあるけど)

 腰の小さなポーチを探り、いくつかカプセルを取り出す。まわりに特定の素材しか無いときのための、非常用の人形の『種』とも呼べる装備だ。”人形遣い(マリオネット)”は、素材となる物体と触れられれば術者の魔力量が許す限りいくらでも人形を作り出すことができる固有魔法だ。

(岩は動きが遅いが膂力は桁違いだ。それは大技として温存するとして、使えるのは手持ちの水、鉄、宝玉、氷…、あとは周りの空気から風、いざとなったら血もイケるな)

 能力の万能性と手札を整理して瞬時に最善の手を導き出す判断力、その二つがマルクスがレイヴンに引き抜かれた所以だ。

『サイクロプス』

 鉄のカプセルに触れ、一つ目のからくり人形のような人形を生み出す。

「ふんっ!」

 カルロは木の人形と同じように斧を人形に振り下ろしたが、鉄の人形はその硬い体でその一撃を受け止めた。

「む、止めるか!」

 全身の力を振り絞って斧を鉄の人形から引きはがした。

(そこだ!)

 斧を体の後ろ側に振りぬいたため、カルロの前側はガラ空きだ。

『カーバンクル』

 赤い結晶から人形を作り出し、カルロの前面に集中して配置する。

「放て!」

 人形たちは体の中心の核に魔力をため、自身の身体構造を利用して魔力の反射をコントロールして収束させた。そこから赤い光線を発射し、カルロを追い詰める。人形一つにつき一回しか使えないが、マルクスにとっては貴重な遠距離攻撃だ。

 カルロは今斧が体の後ろにあり、重心バランスが崩れている。無理矢理動かして防御に回せるほど軽い斧ではない。ならばとるべき選択肢は一つ、”後ろに下がって避ける”だ。

『ゴレム』

 マルクスは石造りの床に触れ、カルロのすぐ背後に岩の人形を作り出した。カルロが反応しきれないほど早く動かすことはできなくても、出現位置を指定することはできる。

 カルロをがっちりと岩の人形にホールドし、もう一体の岩の人形で正面から頭めがけてその拳を振り下ろす、が…。

「ふむ、軽いな!」

 カルロには擦り傷こそつけられたものの、深いダメージは1ミリも与えられていないようだ。

(ウソだろ…!)

 カルロはそのまま斧を円形に振り回し、周りの壁ごとすべての壁を薙ぎ払った。その中にはマルクスも含まれていた。

「やっと姿を現したな、魔術師」

(クッソ、勝てねえよこんなの…)

 自分の人生の短さを嘆き、そのすべてに毒づく。


 そういえば、兄さんもこんな感じの強さだったなあ…。


 マルクスは自らの記憶をたどり、幼少期の景色を見ていた。


 * * *


「まだだ!もっと強く剣を握れ!」

 マルクスの父ゲルズは、少しばかり名の知れた剣士だった。

「そうだマルコ、もっと力強くだ!弟だからといって手加減するな!」

 名のしれたと言っても、一部の人間にだけ「そこそこの腕がある」と評される程度の小物の剣士だった。ゲルズはその劣等感を息子二人に押し付けて、息子たちが5歳になった頃から無理な稽古をさせていた。

「よし、いいぞ!マルコ、迷いを捨て去った剣筋を持つものが強い剣士になれるのだ。戦いの決着を決めるのは魔法使いどもじゃない、剣士だ。お前は次の時代を担う剣士になれる!」

 体質や個人差を無視して無理矢理教科書通りの剣術を押し付ける。体質的に魔法に適性のあったマルクスが5つ上の兄マルコにどうあがいても勝てないのは自明の理であった。

「こんなクソ親父の家なんて、逃げ出せるときに逃げ出した方がいい」

 マルクスの10歳の誕生日である1月15日、その夜にマルコはベッドに腰かけて語り出した。

「今度、アスターテ軍に前衛兵として登用されることが決まったんだ。僕がこの家からいなくなったら一番苦しむのは君だろうから、最後にできる限りのアドバイスをさせてもらうよ」

「アドバイスって?」

「一人で生きていくための方法さ」

 マルコはろうそくの火を見ながら続けた。

「僕が家を出るのが2か月後、3月の半ばだ。その時にはクソ親父は大げさにに何か催し物を開くと思うんだ。マルクスを放っておいてね。その時が狙い目さ。親父はどうせ僕を祝いに来た人たちにありもしない過去の武勇伝を夢中になって語るはずだ。だから、マルクスから目を離す瞬間が来る。それを確認したら一番人目が少ない厠の窓から逃げ出すんだ」

「逃げ出してどうするのさ」

「王都に行って魔術師を探すんだ。絶対にマルクスのことを見出してくれる人がいる。その人に弟子入りすれば衣食住を保証してくれる。そうすれば、少なくとも今よりずっといい暮らしが待ってる」

「そんなあ…、僕、兄ちゃんと別れたくないよ」

 マルクスの目には涙が浮かんでいた。

「大丈夫だ。もう一つ、いいことを教えてあげよう」

「いいこと?」

「ああ。マルクス、君は本当は僕や親父よりずっと強いんだ」

「…嘘つけ」

「僕は魔法のことはちんぷんかんぷんだから、何か言えるのは剣についてだけだけどね。マルクスはほかの剣士と違って足が強いから、今よりもっと速く動けるはずだ。でもそんな速さで走りながら安定して剣をふるうための方法は剣術指南にはどこにも載ってない。だから」

 マルコがにやりと笑う。

()()()()()()んだ」

「組み合わせる…?」

「ああ。組み合わせるんだ。覚えたことを組み合わせて、今までにないマルクスだけの剣を作り上げろ。その剣は親父なんかよりも、たぶん前衛将軍よりも強くなるだろうね」

「よせやい、そんなことないよ~」

 マルクスは照れるが、マルコの顔は真剣だった。

「でも、しっかり覚えとくね」

 マルクスは愛する兄にニカッと笑い、そのまま眠りについた。


 * * *


ノード要塞駐屯兵団出兵報告書 第43号


アスターテ歴240年1月16日未明 ボロート地方の農村で中規模な魔物の襲撃事件が発生


同日昼頃 第2駐屯大隊が現場に到着、ヴェンタス・ウィルキャット16頭の群れを討伐


農村全体が壊滅、村民全員が死亡又は行方不明 


現場は凄惨を極め、原形をとどめていない被害者が殆どであった


遺体の身元判別は難航、遺体の見つからないものも多かった


以下、最終的に判明した死者名簿


①サヴォイア邸


家主 ゲルズ・サヴォイア 50歳

 後頭部咬断創、腹部臓器欠損、左右脚部欠損


被保護者(続き柄:長男) マルコ・サヴォイア 17歳

 頸部裂傷、腹部臓器欠損、左腕欠損、右手掌および指腹に連続した擦過痕と圧痕


備考

 家主の配偶者は次男の出産時に死亡

 尚、次男マルクス・サヴォイアの遺体は発見されておらず、魔物に捕食されたか身元不明の遺体として記録されているかと思われる


(中略)


以上 死者53名 行方不明者45名 身元不明遺体 32ないし35体


同年2月5日 最後の身元不明遺体の埋葬・供養が完了


最後に埋葬されたのは20代~40代の女性のものと思われる左足であった


これを以て、本件の全状況の終了が宣言された


 * * *


「ここは僕が残る。マルクスは逃げて、生き残るんだ」

 それがマルクスが聞いた兄の最後の言葉であった。

 マルクスはひたすら走った。涙をこらえながら、雪の中を裸足で何十キロも走り続けた。万引きで食料を調達し、貨物運搬用の馬車に忍び込んで王都アル=イスカンダリーヤを目指した。兄の言葉を信じて。


 1年後。

 王都での戦勝パレードを物陰からじっと見つめる汚れた身なりの少年がいた。年は10歳程か、あるいはもう少し大人びているか。

 ふと、行列の中心にいた金色のローブを身に着けた青年が少年の発するただならぬ魔力を感じて足を止めた。青年は馬から降り、観客が左右にはけて作った道を通って少年に近づいた。

「君、家はないのかい?家族は?」

 少年は首を横に振る。

「名前は?」

「…マルクス」

 消え入りそうな声でそうつぶやくと、少年は今度は青年を指さした。

「僕の名前かい?僕はフラム・ソールっていうんだ。マルクス、僕の弟子にならない?」

 読んでくださり、ありがとうございます。お久しぶりです。霧島です。


 マルクスの半生についてもここまでぎっしり書く予定はなかったんですが、「ここは削れない」「ここもだめだ」と設定メモを見続けるうちに4000字に迫る勢いになってました。


 それにしても、今まで書くのが一番きつい回でしたね。まったくどこのバカヤローが考えたんだ?こんな人の心がない設定と演出は。


 ドミニク・ゾンネ→フラム・ソールに名前を変更しました。もともとあんまり考えこんだ名前じゃなかったので、スピンオフ執筆開始も見据えてこの際に整えようと思いまして。

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