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Notice-code:Ω -scientist-  作者: 霧島宇宙
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57/65

ROTTEN APPLES SPOIL THE FORTRESS

 今回もよろしくお願いします。

 さーてと。

 最後の大詰めだ。


 翌朝、クリスタに色々吹き込んだあと捕虜たちの前に立たせた。

「アーディル派の上層部は、実権を握ることで国中の利益を独占するつもりだ」

 はっきりとした、十分な間を持たせた口調で始まる。

「確かに今は十分な金をくれるかもしれない。だが、このあと待っているのは間違いなく物資の独占と重税だ。君たちは王室から値段をつり上げられたパンを無理矢理売りつけられることになる」

 クリスタは周りを見渡す。

「私たちには、今すぐに君たちの生活を改善する力はない。だが、これから汗水流して働く志と国全体を豊かにする先見の明がある。だから、私たちのこれからのためにアーディルを倒すのだ」

 静まり返っている。そりゃそうだ、捕虜に「裏切れ」と唆しているのだから。

「国家とは人だ。国民がいないと国王も貴族も成り立たない。だから、我々は国民のために最大限尽くすことを約束する。だから今一度、私たちに力を貸してほしい」

 しばらくして、一人の兵士が前に進み出た。

「おっ、俺はクリスタ殿下についていくぞ!ここまで俺ら庶民のことを考えてくれている王はこれまでにいなかった!」

「俺も!俺だっていい暮らしがしてえよ!」

 それから堰を切ったように歓声が広がり、ほとんど全ての兵士がついてきてくれることになった。

「…なぜ、ここまで簡単に皆が賛同してくれたのだろうか?」

「いや、これくらいの結果は想定していましたよ。このために一ヶ月前からちまちま敵の兵糧を削り続けたんです」

「というと…」

「いきなり飢餓になるよりじわじわと食糧を削られる方が人が受けるストレスは大きい。慢性的な飢えに陥り、いよいよ限界だというタイミングで私たちは強襲をかけました。適度に鈍かったので上手く罠に嵌められましたし、それまで軍で配られていた食事よりも豪華な食事を配るだけで潜在的な忠誠心をクリスタ殿下に向けさせられます」

「でも、もうそろそろそれも限界なのではなくて?」

近くで話を聞いていたシュヴァルツに話しかけられた。

「あなたたちは我が軍の斥候、つまり目だけを削ぎ落として大軍の存在を隠し通した。でも地方の駐屯軍も馬鹿じゃないわ。今頃王都周辺からの情報が入ってこなくなったことを不思議に思ってる。いつここに敵が来るかわからない状況じゃない?」

「ええ。ですから早めに、具体的には今日か明日にでもアケメネス城を落としたい。そこで、少数精鋭部隊(われわれ)の出番です」

「…まさかそのために私を…」

 シュヴァルツは何か気づいたようだ。

「各隊、所定の戦術に沿って動くように。ダゴンの兵にもしっかり伝えろ」

「「はっ!」」

「それとオドゥム将軍。あなたの副官をする予定の彼女、ツェーリンゲン二等弓術兵というのですが、特技は弓の早撃ちだそうですよ。あまり妙な動きはしないことをお勧めします」

 部下に指示を出し、自分も準備する。その辺で拾ってきた一般騎馬兵の鎧だ。

「でも、まだ城の中には3万を超える兵士が…、知っているでしょう?アケメネス城の防御力はアル=イスカンダリーヤ城よりも高いのよ?」

「ええ、ですからあなたが必要なんですよ、オドゥム将軍。あなたは今から敗軍の落ち武者だ」

「まさか、イスラフェル殿…」

 仮面をつけたアズラエルが震える声で聞いてくる。

「ああ、君も()()()()のメンバーだ。君がいるからこの一見無謀な作戦を立てたまでのことはある」

 そう。この作戦はアスターテ王家の家計能力“玄廻眼"なくして成り立たない。

 玄廻眼を用いて敵の配置・伏兵の有無を割り出し、最速のルートで王弟アーディルとハルブ大将軍がいる玉座の間に突入する。ただ、一番のネックは…。

「情報将軍アルマ・イリュシオン、か…」

 ダゴン王国情報将軍”写身(うつしみ)”のアルマ。任務が特殊な情報科なだけあって固有魔法の詳細はほとんど公表されていないが、現在レイヴンがつかんでいるアルマの魔法は「他人に化ける」というもの。ソフィの結界を使ったなんちゃって変装ではなく、魔力の絶対量や固有魔法などその人しか持ち合わせないはずのステータスですらその身に写し取ってしまう。カウンターがあるとすれば、魂を直接視ることができるアズラエルの弦廻眼で本物のアルマを割り出すくらいしかない。まあ万が一のための指示もアレウロを通じて全軍に伝えてある。何とかなるだろう。

「さーてと、行きますか」

 アレウロが馬にまたがった。


 * * *


「ありゃあ…なんだ?」

 第一城壁正門の物見櫓から見張りをしていた兵士が、大きな土煙に気付く。

「すげえ数だ…援軍か?おいマルコ!上に報告しておけ!」

「了解です、隊長!」

 そばにいた若い兵士に命令し、自分は再び見張りを続ける。

「でかい煙だなあ…。ありゃまるで10万くらいの大軍が一度に動いてるみてえだ」

 やがてその発生源が見えてきた。兵士は目を凝らす。

 あれは…。少数の騎馬隊が…大軍に追われてる…?どういうことだ…?先頭の旗印はオドゥム将軍か…。いや、問題は()()()()()()だ。馬も装備もダゴンのものだ。明らかに昨日まで味方だった軍じゃないのか?

 まさか…!

「一瞬だけ門を開けろ!先頭だけ通すんだ!」

「え、でもこんな時に開けるなんて…」

「構わん、全責任は私がとる!このままじゃオドゥム将軍がやられちまう!」

 若い兵士たちが見張りの気迫に押されてわずかに門を開ける。馬3頭が横に並んで通れるほどの幅だが、アケメネスの巨大な城門に比べたら細い隙間だ。

「感謝する、見張り兵!」

 シュヴァルツは城門の上にいる兵士に一声かけ、隊列を整えて城内になだれ込んだ。

「ボロボロだ…。あのオドゥム将軍が何をされたらこんな状態になるんだ…」

 無事に敵から逃げ切った兵士たちの様子を見て、若い兵士たちがつぶやく。

「ほぼ全軍が何らかの原因で敵に寝返った、としか考えられんだろう」

「何が原因なんですかね?」

「さあな。それこそ神のみぞ知る、だ」

 オドゥム将軍の300程度の騎馬部隊が城内に入っていく。これからおそらく国王陛下に会いに行くのだろう。これだけひどいやられ方をして、内心穏やかではいられないだろう。

「くわばら、くわばら…」


 * * *


「将軍、一体どうしたというのだ」

「申し訳ありませんアーディル陛下、あの小僧がこれほどまで姑息に立ち回れるとは考えつきませんでした」

「今はもうよいではないですか陛下。ナッジスパロウ将軍を片付ける優先順位が上がったということです。このアケメネス城の籠城能力なら、今の人数でもあと1年以上は持ちます。気長に行きましょう」

 横やりを入れたのはザイ―ド・フォン・ハルブ、ダゴン王国大将軍である。

「そうだな、ハルブ将軍。どのみちダゴン人がダゴンの城を攻めているのだ。2週間もすれば、気の持ちようも変わるだろう」

 ザイードの反対側にいるのは前衛将軍ヴィーヴル・フォン・ドラグナイア。本来ならば彼女が出れば10万に満たない数の軍はすべて蹴散らせてしまうのだが、先の侵入者との戦闘で竜が負傷して出撃できないとのことだった。

「まあ、オドゥム将軍を退ける策を練ったのはナッジスパロウ将軍その人というわけではないでしょう。優秀な人材を掘り出したとか、その辺のことだと思いますよ」

 ヴィーヴルの隣に座っている妖艶な女性は情報将軍アルマ・イリュシオン。ザイードの教え子だ。

「だが、おかしいな…。”静か”だ…。壁の向こうからは城を落とそうという気迫がほとんど感じられない」

 情報科出身であるハルブの固有魔法は「感じる」ことである。半径10キロ以内の生物の群れが持つ感情を気配として感じ取ることができる。個人の感情をピンポイントで読み取れるような精度はないが、合戦においてはかなり都合がいい能力だ。

 だが、それが()()()


 アリの穴から、城が崩れ始めた。

 読んでくださり、ありがとうございます。


 「超かぐや姫!」見てきました。超おもろかったです!

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