1622 *シエイラ* 8 考えたくない
「これ、魔王と戦うヤマザキさんから贈られたお酒です。タカトがいうにはかなり美味しいとのことです」
まずはお酒を領主代理様に渡した。
「たくさんあるので毎日飲めると思いますよ」
適当に詰めたから何本かはわからない。とりあえず出してみた。
「こんなにか?」
「はい。パレットで送られてくるのでたくさん持ってきました」
えーと。四十三本か。我ながら結構入れたものね。
「氷を」
小間使いの方に氷を用意してもらい、さっそく飲み出す領主代理様。今日だけで数本は空になりそうね……。
わたしはお茶をもらい、領主代理様が落ち着くまで待つとする。もう二本目に移っているわ。これでまったく酔ってないのだからバケモノよね。
「これはいいな」
「値段的にもいいものみたいですね。詳しくは聞いておりませんが」
まず普通に生きていたら買うことがないものだと言っていたわ。
「だろうな。気に入った。また持ってきてくれ」
さらに三本目に移っている。飲むの早くない!?
五本目で満足したようで、次は炭酸割りにして飲み出した。
「で、なにかあったのか?」
いつもの御用聞きとは違うと感じたようだ。本当に勘が鋭いお方だ。
「実は──」
プランデットをかけてもらい、情報を渡した。
「……堕天使にライングル帝国、さ。また厄介なのが出てきたな……」
「はい。タカトとミリエルには考えがあるようなので、次に情報をお渡し致します」
「どうにかできると考えているわけか」
「体を壊しそうなくらいお酒に逃げていましたが、覚悟を決めたようで頭をフル回転させておりました」
「あいつは限界を越えると本当に恐ろしくなるな」
「無理しないか心配です」
わたしには慰めてあげることしかできない。ミリエル並みに賢ければよかったのに……。
「お前はそれでいい。あいつは妙に大人であろうとしている。甘えたり慰められたりするのは恥と思っている。そんな男を包み込んでやれるのはお前だけだ。無理をしたら抱き締めてやれ。ダメなら許してやれよ」
他の女をあてがえと、暗に言っている。
「わたしとしては構わないのですが、タカトの性格上、浮気はしないと思います」
「だな。あいつの性格では」
自分だけ愛されている喜びはあるけど、それよりもタカトの心が守られることが大切だ。まったく、もっと軽く考えて欲しいものだわ。
「身持ちが固いのも考えものだな」
「サイルス様も身持ちが固いですよね」
いや、もうミルクティーに浮気しているようなものか。糖尿になりそうな勢いでミルクティーを愛しているからね……。
「他の女に手を出したらチョン切ると言ってあるからな」
可能にできる方なだけに乾いた笑いしか出ない。
「ま、まあ、サイルス様ですからね。他の女に手を出すところなんて想像できませんよ」
三年以上、秘書みたいな立場にいて、サイルス様を見てきた。あの方は、領主代理様以外の女に意識が移ることはないでしょうよ。
「ふふ。そうだな。帰ってきたらたくさん可愛がってやろう」
考えたくないのでお酒をいただいてお茶に注ぎ、一気に飲み干した。




