1623 *シエイラ* 9 可愛い子には旅をさせろ
ちょっと酔ってきたけど、報告を続けた。
「ラグスル王国か。本当に国を興させるとはな。あいつに不可能はないんじゃないかと錯覚してしまいそうになるよ……」
確かに、タカトはいくつもの窮地を切り抜けてきた。
それは下準備を怠らなかったり、人を育てたからできたこと。奇跡なんてなに一つ起こしてはいない。
……いえ、奇跡みたいな出会いはしたわね……。
わたしみたいな女がタカトと結ばれた。無理だと思っていた我が子を抱けた。これを奇跡と言わずなんという? 女神様が与えてくれた奇跡だわ。
「そのラグスルの王子を鍛えているわけか」
「はい。筋はよいと言ってました」
見た感じ、元気な男の子って容姿だったけど、確かに建国したのなら王子であることに違いはないわね。
「タカトが認めているのか」
なにか考えに入ってしまった。関係をどう結ぶか考えているのかしら?
「──よし。ミルドもタカトに預けよう」
はぁ? ミルド様を預ける? 急にどうしたの?
「あ、あの、いったい……」
「ミルドをタカトに預ける。その王子と友好を結ばせるとしよう」
「……き、危険ではありませんか……?」
「タカトなら大丈夫だろう。レニアもいる。万が一のときはもう一人こしらえるさ。まだまだ産める歳だからな」
ま、まあ、二人産んでいるわけだし、健康体でもあるなら可能なんでしょうが、ミルド様やレニア様(は十三歳になったかしら? お二人に似ず、か弱い方だったはず)にしたら複雑な心境でしょうよ……。
「そ、そうですか。そのときはエレルダスさんに声をかけますよ。そちら方面の技術があるそうなので」
男児を宿らせることもできると言っていたわ。
「そのときは頼らせてもらおう」
本当にミルド様が亡くなった場合を考えて産むようだ。す、凄まじいわね……。
「ミルドは?」
控えている侍従に尋ねた。
「ミロルド様の授業を受けています」
「ちょうどよい。二人を呼んでくれ」
しばらくしてミルド様とミロルド様がやってきた。
見ない間にミルド様は成長したわね。すっかり青年の体つきになっているわ。この頃の少年少女の成長力は凄まじいわよね。
……なんだか年寄り臭いこと言っているわね、わたしったら……。
まだ若いつもりでいても三十歳はもうおばさんだ。ま、まあ、まだ二十代に見られるけどね!
「二人とも。タカトのところで修行してこい」
なんとも唐突だけど、それはいつものことなのでお二人は苦笑いを見せるだけで、領主代理様の命令に承諾した。反論しても無駄とわかっているからだ。
お二方、ご愁傷様です。




