1617 *シエイラ* 3 事務所
マサトをあやしたら事務所に向かった。
各地から送られてくる情報を纏める者が交代でエウロン紙に書き、一人がプランデットに写し、副館長たるルシフェルが確認する。
外職員はコラウス周辺を回ってゴブリンの警戒、魔物の排除、聞き込みなどをしている。
冒険者が減ってしまったもので、コラウス周辺の魔物が増えてしまった。
被害は村まで及んではいないのだけれど、冒険者の目撃情報が増えているそうなのだ。
タカトの働きで冒険者を減らしてしまったので、セフティーブレットが冒険者の仕事を補っている状況になっている。
セフティーブレットとしても魔石は重宝しており、皮や肉は商人に卸しているので運営資金として潤沢になっているわ。
完全にコラウスの仕組みや流れが変わってしまったけど、不満を口にしている者など皆無でしょう。
食べれない者は冒険者になるしかなかったが、今は道路工事や河川工事、建築に流れ、農民は魔物やゴブリンに苦しめられることもなくなった。
商人たちも道と治安がよくなり、大きいところはさらに大きくなり、それなりのところもそれ以上に繁盛している。コラウスは今、大発展を見せている。
物乞いはいなくなり、孤児にすら仕事がある。ウワサを聞きつけて人も流れてきているほどだ。不満など耳にすることもなくなって当然だわ。
「ルシフェル。少しいいかしら? また問題が出たのよ」
片手にカップを持ちながらプランデットをかけるルシフェルに声をかけた。
元金印冒険者ながら汚れ仕事が嫌いという変わり者なエルフ。稼いだお金で貴族のような暮らしができるというのに、朝の八時から夕方の五時まで律儀に働いている。給金だって冒険者として稼いでいたときの一割にも届かないはずなのにね。
それでも館での暮らしのほうが快適だと、副館長の座を必死に守っているんだから笑っちゃうわ。
「また? ほんと、問題に事欠かないわよね、駆除員って。金印のわたしもびっくりよ」
確かに、金印の冒険者になるにはたくさんの問題を解決しなければならない。そんなルシフェルが言うんだから苦笑いしか出ないわ。
「少し長くなるから食堂で話しましょうか」
別に急ぐ仕事でもないし、休憩なんて自由に決めて構わない。
食堂も二十四時間体制で、仕事から帰ってきた請負員がちらほらといた。
「また種類が増えたわね」
食堂は基本、セルフだ。いくつかの料理が並べられており、すぐに作れるものなら料理人にお願いする。お金を出せばお弁当も作ってくれるわ。
「最近は、料理人になりたいって者が増えたからね。その練習も兼ねているみたいよ」
朝と夜はホームで食べ、昼はマサトと過ごすので食堂はあまり利用しないのよね。
「お菓子も出るようになったからありがたいわ」
ゴブリン駆除ギルドで働きながらゴブリンは嫌いからと駆除をしないときている。
わたしが差し入れはしているけど、夜、たまに食べたくなるときがあるそうでモヤモヤしていたそうよ。
「あ、紅茶が切れそうなのでお願い」
「同じのでいいの?」
「ええ。レモンティーが一番わたしの口に合うわ」
今飲んでいるのはアップルティーなんだけど? って突っ込みを入れたいのをグッと堪え、ホームでのことを話した。
「……ライングル帝国の背後に堕天使、か。そう言えば、聞いたことがあるわ。堕天使を信仰する者がいると。まさかそんな繋がりがあるとはね……」
わたしも変な神を信仰する集団がいるって話は聞いたことがある。でもそれが堕天使を信仰しているとは夢にも思わなかったわ。
「タカトが今から館の警備を整えておくべきだと言っていたわ」
「本当に先に先にって動く男よね」
「……それだけに心を病みやすいのよね……」
前もそうだった。本当に壊れそうなところまでいってしまうのだ。
「まあ、わたしもそれには賛成よ。警備のことはわたしが進めておくわ。エルフにも仕事を与えないと思っていたから」
「仕事がないの?」
エルフは魔法に長けている。コラウスなら仕事なんてたくさんあると思うのだけれど?
「他の種族が集っているのに自分たちだけ取り残されているって感じているのよ。エルフも氏族によって違うからね」
そういうものなのね。
「なら、ルシフェルに一任するから好きにやってちょうだい。タカトにはわたしから言っておくから」
「ありがとう」
別にルシフェルがエルフの代表ではないけど、仲間意識は高いのは知っている。エルフが仲間となってくれるならこちらとしても大歓迎だわ。




