1609 ボックスロッカー改
さすがに同じ山崎さん(あ、この酒の名前ね)ばかりでは飽きると思ったのか、梅酒になった。
「山崎さんの梅酒か。また微妙なものだな」
他に酒を飲んだことがないのか? 強靭な肉体故に酒が効かないのか? タバコも信じられない量をお願いされたときもあったし。
「梅酒か~」
オレは飲まないが、女性陣には好評だ。感謝の手紙を添えておこう。
そこから梅酒が続き、とんでもない量に。二百本は越えたかもしんない。
「出すのも大変だな」
ってことは入れるのも大変だろうよ。誰が入れてんだ?
「もうちょっとデカくならんのか? 台車で入れられるなら楽なのに」
床から一メートルくらい高いところにある。軽いものでも入れるのは大変だろうよ。
「そう言えば、このボックスロッカーって、どちらの領分となってんだ?」
どちらもダメ女神の権限のはず。でも、こちらは報酬から拡張し、あちらは魔石で拡張される。ここだけ別の領域なんだろうか?
タブレットを持ってきてボックスロッカーが拡張できないか調べてみたら……できるっぽかった……。
「倍にするには二百万円か。まあまあかかるな」
こちらからできるならあちらからもできるんじゃないか?
手紙を書いてみる。魔石を使ってボックスロッカーを拡張できないかを。
「あちらで入れてるな」
二つのセフティーホームが繋がらないようにしているのか、片方が開いているうちは開かない作りになっているのだ。ランプもつけるほうがいいか?
また梅酒が入っており、えっちらほっちら出して手紙を入れて閉めた。
しばらく待ち、ドアを開くと、手紙が入っていた。
プランデットの翻訳機能を使って読む。これがあったから文字の勉強は止めてしまいました。
「山崎さんと相談してみる、か」
入れている人、どんな人なんだろう?
セフティーホームに常駐している者がいるとは手紙に書いてあったが、ミサロみたいな者があちらにもいるんだろうか?
魔王軍との戦いで忙しいだろうから時間を置き、タルガの修業を終えて帰ってきたらボックスロッカーが人が入れるほどのドアになっていた。
「あちらでもできたんだ」
ほんと、そういうところがあるんだよな、あのダメ女神は……。
「ん?」
ドア横にモニターとスイッチ類が現れた。テレビ電話的なものか?
「日本語表示か。山崎さんとご対面か?」
期待して待っていると、モニターが灯り出した。
テレビが点くときのようにプツンとなり、モニターに女の子が映った。
二十五、六歳だろうか? やけに肌が白い。いや、髪も白い。雪女かなにかか?
「イチノセ様でしょうか?」
「あ、ええ。一ノ瀬孝人です。いつもお世話になっております」
思わずお辞儀してしまった。
「こちらこそお世話になっております。わたしは、アズリュースと申します。アズと呼んでください」
「わかった。オレもタカトと呼んでくれて構いませんよ。様とかもいらないです」
様づけとかむず痒いわ。
「はい。タカトさん」
柔軟な人でよかった。
「タカトさんの提案でボックスロッカーを拡張してみました。ドアを開いてみてください。開閉スイッチがあるのわかりますか?」
「ああ。開いてみるよ」
ドア横にある開のスイッチを押してみた。
横にスライドし、車が一台入れるくらいの広さになっていた。ドアは一メートル二十センチくらいしかないけど。
「ドアの幅と高さを三メートルにできますか? フォークリフトで入れられるようにしたいので。なんならそちらにフォークリフトを送りますよ」
「素人でも操れるものなのですか?」
「使用法をプランデットに入れて送ります。そちらの文字で表示されるので大丈夫だと思います。不安なときは山崎さんにお願いしてみるといいでしょう」
会社員だったようだが、車を運転できるのならなんとなくわかるはずだ。フォークリフトの運転は地球のフォークリフトとそう変わらんからな。
「わかりました」
「今のところ物資は足りているのでゆっくり学んでください。あと、山崎さんによろしくとお伝えください」
「はい。ご主人様にお伝えします」
山崎さん、ご主人様とか呼ばれてんだ。小恥ずかしくなるな。聞かなかったことにしよう。
閉めボタンを押すと、ドアが拡張されていった。




