1503 *ミシニー* 12
お酒が飲めないことがこんなに辛いとは。不味くてもいいから葡萄酒が飲みたいわ。
って、誘惑に負けて小さな酒場に入って葡萄酒を頼んだら、死ぬほど不味かった。
昔はこれをありがたいと飲んでいた。美味しいと感じていた。なのに、わたしの舌は異世界のワインに変えられてしまった。
不味いのだ。渋くて薄くてアルコール度数も低い。とてもコップ一杯も飲み干せなかった。
周りを見たら美味そうに飲んでいて、お酒を楽しんでいる。わたしだけ取り残されたようだ。
「急用ができたから飲んでよ」
「いいのかい? こんなに」
「構わないよ。これで楽しんで」
見も知らぬ男たちに葡萄酒を渡し、銀貨一枚をテーブルに置いた。
「セフティーブレットの若いのが困ってたは助けてやってよ」
アシッカでもエルフが歩いていても人間は気にも止めない。というか、普通にエルフが歩いているわね。マイセンズの者かしら?
「あ、ミシニーさん。久しぶりです」
わたしに気がついて、男女が話しかけてきた。
「え? あーどうも。マイセンズはどう? 食べられている?」
誰だっけ? わたしと会ってた? マイセンズの者とそんなに話してはいなかったんだけど……。
「はい。開墾も進んで果物を育て始めました。アシッカにも働きにきているので毎日食べられています」
賑やかに笑っている。マイセンズのエルフも危うく滅びそうだったのにね。
「それはなにより。魔物やゴブリンは出ているかしら?」
「請負員が競うように駆除しているから魔物もいなくなりました。今はミヤマランかロンレアを目指していると聞いてます」
「あれだけいたのに、あっと言う間にいなくなったわね」
請負員として生きるとなると大変ね。だからと言って辞めるわけにもいかない。報酬で買えるものが買えるものだからね。わたしだって稼いでなかったら死に物狂いでゴブリンを探し回っていることでしょうよ。
「はい。でも、穏やかに暮らせてます。来年には十人以上、子が産まれる予定です」
どうやら夫婦のようで、女性も妊娠しているそうだ。
「マイセンズの者は妊娠しやすいの?」
「いえ、若い者が多いだけです。年寄りは若い者を生かすために犠牲になりましたから」
随分と思い切ったことをしたわね。マイセンズのエルフはわたしたちとまったく違うのね……。
「それは喜ばしいことね。しっかり守ってあげてね。タカトにも伝えておくから」
「はい。お願いします」
去っていく二人を見送り、なんか気分が萎えたので宿を探すとする。
「子供か~」
あんな幸せな姿を見せられると、自分も子供が欲しくなるわね……。




