1502 *ミシニー* 11
隊商の護衛って、こんなにのんびりしてたっけ?
わたしも長いこと冒険者をしている。隊商の護衛も何十回とやった。なのになんだ、こののんびりした空気は? 魔物の気配もなければ緊張した気配もない。順調に進んでいるわ。
もちろん、夜はわたしが見張りに立っている。油断はしていない。なのに、平和すぎて気が緩みそうになって仕方がないわ。
……ワインが飲みたいな……。
仕事だと自分に言い聞かせて我慢しているが、ここまで平和だと飲みたくて飲みたくてウズウズしてくる。なんの拷問かしら?
「本当に道がよくなったわね」
去年、いや、一昨年の冬か? この道を通ったのは?
エルフの感覚なら昨日のことに思えるはずなのに、何十年も前に思えてしまうのはなぜかしら? 変わりすぎたから? 時代に取り残されたから?
「アシッカだ! アシッカが見えてきたぞ!」
道がいいからコラウスを旅立って約四日。以前なら倍はかかっていたはず。今は逆に道がよすぎて夕方には広場で着いていたものだ。
……そのうち夜通し進んでしまいそうな勢いだわ……。
「アシッカも変わったものね」
ゴブリンに滅ぼされかけていたのがウソのようだ。道沿いに家がちらほらと増えている。畑も耕されているわ。
「新しいルースカルガンが飛んでいるわね」
空を飛ぶ乗り物なんてと驚いていた時代が懐かしい。今は飛んでいても誰も驚かない。見上げるのが精々でしょうよ。
今回は昼前にはアシッカ領に入り、夕方前には隊商広場に到着できてしまった。
「なんかペース配分が大変になった感じね」
無理をすれば二日で着いてしまうとわかれば商人も無理してしまうかもしれない。それって逆に隊商を苦しめてしまうんじゃないかしら? そんな時代にはなって欲しくないものだわ。
「ミシニーさん。明日は一日休みにします。自由にしてくれて構いません」
「見張りはいいの?」
「こそ泥の心配はありますが、それは商会連合で金を出し合い警備を雇っているそうです」
「へー。今はそんなことをしているのね。中規模商会には大変なんじゃない?」
「アシッカは税金が安いので警備費なんて微々たるものですよ。これもタカトさんのお陰です」
タカトは昔から道の大切さを説いていた。その理由がこれというわけか。
「それならアシッカでお金を落とさないとね」
「そうですね。酒場も結構できたそうで、美味いものを出すところは行列ができていると聞きました」
ほんと、変われば変わるものね。ゴブリンに襲われていたのがウソだったようだわ。
「それはいい情報を聞いたわ。わたしも探してみようかしら」
さすがに酒は飲まないようにします。数日でこれまでついた肉は落ちないからね。我慢だ、我慢!




