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地方生まれの聖女様  作者: タタラ
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「私」とエルゼルの秘密2

「いつまでも泣いてるんですかぁ?」

「誰のせいだ誰の!くそぅ・・・見られた・・・」


濡れた金髪が頬に張り付き、何時もより赤く染まる頬が色香を漂わせ、伏目がちに目元を赤く腫らしたエル兄さんが此方を睨み吠える。

いやマジ泣きしてるんですか?前に一度見たし、今更じゃ?


「フゥ、そんな些細な事より、何故、魔物の女王を知っていたか教えてください」

そう言うとエル兄さんは目を見開く。

「些細な事だと…お、お前………話してやらん!話し手などやるものかぁ!」


湯舟の中、両手で股間を隠すようにして泣き怒り状態のエル兄さん、やだ本気で怒ってるわ。


大体、私は見せられた方で被害者なのでは?っと考えてもエル兄さんの羞恥心が振り切れてて聞いてくれなさそうだしなぁ

私としては変なもの見たっとかじゃ無いしエル兄さんさえどうこう言わなければ笑い話なんですがねぇ。

いいじゃん見られても、ご褒美だと思えば……そんな性癖じゃないか。

「お前だって見られたら怒るだろうが」

「いえ…特に…見ようが見られようが気にしないんで」

「……お前はそういう奴だったな、もう少し恥じらいとを…もういい…」


恥じらいかぁ、私だって見せろと言われたら拒否はするよ。

ラッキースケベだから許すんだよ?偶然なら仕方ないよね?ソレを責めるのは可哀想だしな。

まぁバカな事考えてないで聞く事聞いとかなきゃ。


「ふぅ、聞いた話では数十年毎に何処かに現れるそうですが、その都度、諸国が協力して討伐されているはずじゃ?エル兄さんの歳で見た事が在るのは可笑しいじゃないですか」


「それは…そうなんだが…」


通常は諸国が協力し討伐される魔物の女王をエル兄さんの歳で知っている訳が無いし、すぐ返答出来ない所からも何か隠しているのは確実なんだけどなぁ、


「あの時は、居るとは思わなかったんだ、それで驚いて…フゥ……今話すんもどうかと思ったんだが話しておくよ」


顔に湯をかけ、涙を洗い流し真面目な表情で見つめて来た。

私はゾクッとし湯に浸かったまま背筋を伸ばした、さっきまでとは違ってちょっと怖い。

「アレは僕にとって…いや、父さんと騎士団の仇なんだ」


仇?騎士団?あれ?エル兄さんのお父さんは騎士だったのか?

魔物の討伐に向かって…なのか。


「ファナが言ったように魔物の女王を発見した場合は諸国が協力し討伐するんだ、だが前回から60年近く発見されて居ない…事になってる」

「なってるって?」


「数年前にファーグリンド帝国は魔物の女王を発見していたんだ、いや、発見し逃げられた…か」

「え?」


「帝国の北にある森で小さな魔物の巣が見つかってな討伐に向かった成人前の第三王子直轄の第三騎士団に僕も見習い騎士として従属していたんだ」

「見習い騎士?エル兄さんが?」


「僕が魔法使いになるきっかけだな・・・第三王に実戦を経験する為でもあった魔物の討伐自体は順調で巣の奥まで進んでいた、そしてアイツが居たんだ」


そこまで一気に話すとエル兄さんは薄暗くなった空を見上げ小さく溜息をつく。

「魔物の女王の大きさは今のファナより少し大きい位だった、見た目はアノままだったがな、当然騎士団長は撤退を進言したが第三王子は何を思ったのか討伐すると言い出したんだ」


まぁ世界の敵でもある魔物の女王を倒せば名声は大陸中に轟くだろう、若さゆえに欲に駆られた…か。

自分の力、いや、自分の(・・・)騎士団の力を過信したんだろうなぁ。


「……どうなったんですか?」

「相手は魔物の女王一体だけ、剣を抜いて斬りかかった第三王子は一撃で壁の染みさ、僕は見たモノが信じられなかったよ、騎士団長は見習い騎士に事の顛末を報告させる為に撤退を命令すると騎士団は魔物の女王を取り囲んだんだ」


「王子を殺されてしまったので騎士団は撤退出来なくなったんですね」

「そうだ、父さんも僕を見て何かを叫んでいたけど…理解できなかった、僕は必死で逃げた荷を捨て必死で走ったさ、悲鳴と何かが潰れる音を聞きながらな」


結局外まで逃げ出せたのは見習いの3人だけだったそうだ40人も居た騎士は誰一人出て来なかった、帝国に戻った後、事の顛末を報告し沙汰を待つ事になったそうだ。


第三王子死亡、第三騎士団壊滅、魔物の女王の逃亡、信じられない様な大事件だ、だが結局表立った沙汰は無かったのだとか。


何よりも魔物の女王を発見しながら取り逃がした事が諸国に知られては帝国の威信に関わる。

外交であらゆる交渉に不利になる、そう、そして魔物の女王の事を無かった事にしたのだ、何もかも、第三王子と騎士団は不慮の事故で全滅…するかよ普通!

だがそうなった、見習い騎士の三人はエル兄さんを残して訓練中の事故死、でエル兄さんは殺される前に帝国から逃げて偶然フィル姉さんに出会い魔法の素質を見抜かれ師弟になった。



「小さい頃から父さんと二人だった、僕にとって騎士団の皆は家族だったんだ、だから仇を討ちたい」

小さな声で呟く。


「・・・・・・」

「ファナが魔物の女王と戦うなら協力させてくれ」

「エル兄さん・・・」


ちょっとした好奇心で重い話を聞いてしまった、家族の仇か…討ちたいよね、でも今の中身は女王で有ってそうじゃ無い。


もう一つ問題がある、エル兄さんが見習い騎士だった事だ。

騎士としての戦闘訓練を受けているのだ、私なんてロントと木の枝でチャンバラした位しか…


鎧を纏っていても魔剣を使っての戦闘になれば…すっごく不利じゃないかコレ。

剣に触れていないと魔力を通せないとなると剣技が必要になる、訓練生と素人じゃ勝負にならないよ!


どうする?どうする?このままだと負ける?

「どうしたんだファナ?怖い顔して…僕じゃ力不足か…?」

「・・・・・お姉ちゃんだ」

「え?ファナ?」


そうだ!もう時間は無いけどミリルお姉ちゃんに!

お姉ちゃんは神官戦士だ戦い方も知っている、野獣や盗賊討伐も行うのだ。

こうしちゃいられない、すぐにお姉ちゃんにお願いしに行かなきゃ!

勢いよく立ち上がるとそのまま湯舟から飛び出し脱衣所に向かう。


「うわぁぁぁ!だからーファナー!」


振り返るとのぼせたのか鼻血を垂らしたエル兄さんがあわあわと妙な動きをしていた。

「エル兄さんのぼせる前に上がってくださいねー」


取敢えず、エル兄さんとの試合まで後一日、ダメ元でミリルお姉ちゃんに戦い方を教えて貰う事にする。



「おねーちゃん助けてー」

髪も濡れたまま台所に飛び込みミリルお姉ちゃんに抱き着ついた。

この一言でエル兄さんが、いわれなき疑いを掛けられたのは言うまでもない。


ごめん、でもよく考えたらエル兄さん見たよね、じゃあこれ位良いよね?


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