「私」とエルゼルの秘密
魔物の巣からの帰り道は特に何も起こる事も無く静かな物だった、魔物も居なかったしね。
鎧を身に纏い先頭を駆けている、夕暮れ近い森は茜色に色付きとても綺麗だった。
・・・だがその素晴らしいひと時を破る愚か者が居た。
「ファナ、魔物が居ても殴るなよ、、プフッ」
森の中を駆け抜ける間にエル兄さんが昼間の事を茶化して来たので、木の枝に積もっていた雪をそのにやけた顔めがけて弾き飛ばしてやった、どうやら油断していたらしい見事に顔面にヒットした。
「ギャッ!」
っと言って空中で2回転程して墜落した。
「エルゼルが悪いわぁ~」
「ギャッ、それが最後のセリフでしたね……サヨナラお兄様………フッざまぁみろです!」
空中から確認すると、頭から落ちたのか足からして仰け反るようにして埋まって居る様に見えたが、まぁ積雪も充分なので大丈夫だろう。
脚をジタバタさせている、体が抜けない様だがアレでも魔法使い自分で何とかするでしょうと放置した。
もう少しで到着と言う頃に全身を震わし、白い顔をしたエル兄さんが追い付いて来た、
「さ、さぶ、寒い!ファナ殺す気か!」
抜け出すのに周りの雪でも溶かしたのかずぶ濡れの状態だった、流石にコレは風邪でも引くかと思ったがアレだよね、何とかは風邪引かないとかいうしさ大丈夫でしょ。
「殺す気なら周囲を氷で覆ってますよ、体調悪くて負けたとか言わないで下さいよ」
口を尖らせ挑発する様に言ってやった。
「む、誰がそんな事…こうなったら勝って…」
何故かエル兄さんの鼻の穴がムフッと広がった、何かよからぬこと考えてるな?
「変な事考えてないで急いで下さい、エロゼル兄さん!」
「変な事なんて…考えて無い!しかもエロゼルってなんだエロゼルって!」
昨日は腕試しなんて言いながら、私に勝ったらエロ同人みた…は無いか、流石にね。
「ハ~イハイ、二人とももう着くから、ファナちゃんは武器を保管部屋に、エルゼルは風邪を引く前に湯に浸かりなさい」
お互い顔を付き合わせ返事をした、フィル姉さんはヤレヤレと言わんばかりに両肩を少し上げ諦めたようだった。
エル兄さんは勢い良く扉を開けそのまま湯に浸かりに行ったようだ。
だが、私は慎重に行動を起こそうとしていた、そう、前回のようなミスはしない。
家の前に到着すると足元の確認、水たまりは無い!
鎧を髪の中に戻し見事な着地を決めたと思ったら…鎧の重さで出来た冷たい泥水の溜まった穴に脛まで沈むことになった。
自分の足元がめり込んでたー気付かなかった―!
「イヤァァ、つめたーい!」
小さな悲鳴を上げるとミリルお姉ちゃんが飛び出して来た。
「ファナ!ファナ大丈夫!」
「ただいま、お姉ちゃん…」
脛まで泥水に浸かり何とも間抜けな姿で返事をすると、お姉ちゃんは胸を撫で下ろすような動作をすると、私をそっと抱き抱える様にして引き上げてくれた。
「ん、お姉ちゃん、恥ずかしい」
何とか見上げるとお姉ちゃんと目が合った。
「何言ってるんです、泥だらけじゃない恥ずかしがってる場合じゃないでしょ」
いやいや、恥ずかしいのはその…この柔らかな二つの膨らみでして…思わずもう一度埋め直した…至福の一時だ…。
泥だらけになったブーツと靴下、ズボンを脱ぐとお湯を貰い玄関先で足の汚れを流した。
「冷た~エル兄さんまだ上がらないかな?」
暖炉の前で布で足を擦るがなかなか温もらない、お湯に浸かればすぐなのだが、現在エル兄さんが浸かっているので飛び込む訳にもいかず……って良いか、私が気にしないしね!
「回収した武器、保管庫に置いてきます」
そ~と炊事場を覗くように声を掛ける。
「うん、適当に並べて置いてね、ファナちゃん」
「暗いですから…灯りは魔法で用意できましたね…」
ミリルお姉ちゃんの言葉が最後の方が少し小さくなったけど、取り合えず今フォローは引き攣った顔のフィル姉さんに任せておきますか。
一人にしないでっとフィル姉さんの表情が訴えていたが笑顔で返しておいた。
保管部屋に着くと明かりを灯し、髪の中から武器を取り出していく。
この時頭の中に武器の名前?が浮かんだ。
【片手剣 デ・ジャルグ作】
【両手手剣 デ・ジャルグ作】
【小刀 デ・ジャルグ作】
この武器の作成者の名前?だけが表示されていた、魔力を纏わしても砕けない武器を作った名匠?って言うのかな、今度からこの名前の付いてる武器を残せば良いので探しやすくなった。
まぁ一度アイテムボックスに放り込まないと分からないんだけど。
武器自体には名前が無いのは鍛冶職人さんが名与えなかったのかな。
其々を立て掛けじっくり眺めてみるが特に之と言って目立つような造りでも無く、まぁ普通の武器だった。
何処に名前でも彫ってるかと思ったけどそれも無かった。
「まぁいっか、お湯お湯お風呂!」
此処からはだ潜入任務だ、保管部屋から音を立てず廊下に出ると足音を立てる事無く脱衣所の扉の前に立つ。
炊事場の方に眼を向けるが二人は夕食の準備でこちらに気付いていない、今しか無い!
そっと扉を開けなかに滑り込み静かに扉を閉めた。
「ふふ…完璧…完璧すぎて怖い…」
いそいそと服を脱ぎ布を取り湯船に向かう。
ペタペタペタ…鎧着ればよかったかな?寒いぃ
夕暮れ空に身を切るような風が吹く、湯気で湯舟は良く見えないが、まぁいつもの奥の方に居るだろうと辺りを付け、奥に向かう。
そ~と足音を立てず近づくと、居た居たエル兄さんだ。
「フゥ…ファナめ……勝ったら………ふぅ」
何を言ってるんだエル兄さん、勝ったらどうするんですかね?
「エル兄さん、勝ったらどうするの?」
お湯に浸かり完全に気の抜けたエル兄さんの耳元で呟くと、小さな波音を上げて立ち上がった。
「な、何で居るんだよお前はぁぁぁ!」
布で体を隠して足を少し上げ叩く素振をする。
「いやぁ足元が泥水で冷えちゃって仕方なくですね」
泣きそうなエル兄さんにニヤリと意地悪い笑みを浮かべると。
「だったら反対側に行けよ!なんで寄って来るんだよ!」
まぁ当然の反応だ、だが丁度二人っきりなのでこの機会に聞いておこうと思うのだ色々と。
湯に体を沈めると、小さく吐息が漏れる。
「入ってくんなよ!俺出るからな!」
少し紅潮した顔のエル兄さんが目を背け湯舟から出ようとするので
「まぁまぁエル兄さんもちょっと待って、聞きたい事が有って…」
エル兄さんの腕を掴み引き戻そうと力を込める。
「なっ何だよ聞きたい事って?」
腕を掴まれ僅かに体をこちらに傾けると小さな声で聞いて来た。
「気になってたんですが、エル兄さんは魔物の女王の事知ってたよね?私は初めて見たし、姿なんて知らなかった」
「それは…その…それはだな……」
言い難そうにキョロキョロしだすその姿に…どうしたモノか…
思わず見入ってしまった。
うん、在ったんだよねコレ…ふっ
「エル兄さん取敢えず湯船に浸かってください…目の前でプラプラされても困ります」
私は湯に浸かりエル兄さんは立っている、姿勢がだよ、まぁどっちにしても目線の辺りで揺れてるので目線に困ると言うか、前世では見慣れてたけどね!
エル兄さんは今度こそ女の子の様な悲鳴を上げ湯船にザブンと沈んだ。
数十秒後浮かんできたエル兄さんの瞳には涙か湯か分からない何かがとめどなく流れていた。
立場逆だろ、乙女か!




