「私」と魔剣
誰も居ない筈の宝物庫の壁に人の影が映る。
人が居る?それが信じられなかった、この森自体にフィル姉さんが魔法で人が侵入出来なくしている。
間違っても猟師や旅人が迷い込んだとかはあり得ない、とすると此処に居るのは人以外だ。
魔物の女王本人か手下だろうか?影の形は人のようだけど、昨日の今日で現れるとか…
私は重心を下げる様に身構え周囲を見渡すが見つからない。
「魔物か?どこに居る?」
「分からないけど人…影だよね」
「二人とも油断しないでね」
物音一つしない中魔法の明かりで映し出された影だけが揺らめいていた。
まさかと思いながら魔法の明かりを宝物庫の四方に灯し確認してみた。
「あの辺りかな…」
ゆっくりと目星をつけた場所に移動すると、武器の小山の頂上部に大きさは3,40㎝程だろうか可愛らしくお辞儀をする少女の彫刻が傾き置かれていた。
「あはは、コレですよコレ驚いて損しちゃった」
二人に見えるように彫刻を持ち上げると壁に映っていた影も消えた。
「ふぅ、そうかぁ」
「緊張したねぇ~ふふふ」
少し気の抜けたような返事が返って来た、しかしこの彫刻良く出来てるし背中に蝶の羽が在った、そう所謂妖精だ。
鎧の指先で壊さないように摘まみ色々な方向から見ている、不思議な事に気が付いた。
(この世界で妖精なんて聞いたことないんだけどなぁ・・)
地球なら色々なお話の中に出てくる妖精だが、こっちの世界で色々な話を近所のご老人達に聞いたがコレは聞いた事が無かった、とんでもない話も色々有ったのに。
二人にも聞いてみようかとも思ったが武器の選別を始めていたので、一度鎧を髪に戻しアイテムボックスの中に収納する。
すると頭の中に『妖精ジェル』と言う名が浮かんだ、この彫刻の名前だろう。
この姿やっぱり妖精なんだ…まぁ私が知らなかっただけか、ミリルお姉ちゃんこういう置物好きかなお土産にしよう
周りを見てみると武器と共に装飾品も多数転がっている、っと言っても長年放置されていたせいでくすんで見た目が悪いし彫刻類は殆どが破損していた、白銀の鎧の放った魔法でボロボロだ。
無事な武器類の多くも錆が浮き木製部は朽ちている物が目についた。
鎧からすると小さ目な朽ちた剣を持ち上げながら、
「よく見ると使えそうなの少なくないですか?」
魔力を使い少しずつ小山を崩し吟味している二人が
「昨日はよく見て無かったけど確かに少なそうね」
「気にする余裕が無かったからな」
使えなさそうな武器を部屋の隅に投げ飛ばし、何かを思い出したようにエル兄さんがこちらに振り向いた。
「ファナ、鎧の腕とか切られたよな、アレは特別な剣だったのか?」
右腕を半ば切裂かれたのを思い出したが、別に特別とかじゃないだろうと思う、あの少年が言うには魔力を通して威力を上げるとか。
「あの少年が言うには剣に魔力を通してたと言ってましたよ」
フィル姉さんは信じられないと言った表情になり
「剣に直接魔力を通すと砕けるわよ?」
「え?」
「ですよね」
どうやら私は知らなかったが二人は試した事があるようだった、しかし砕けるのか…魔力の負荷に耐えられないのかな?
そう言えば制御に魔力込めすぎると砕けたね…直接通すと更に砕けやすくなるのかな?
手にしていた朽ちかけの剣に魔力を通すと刀身に亀裂が走り砕けた。
「ホントに砕けた…バラバラだ…」
「まぁそうなるわね、ん?ファナちゃん昨日使ってた剣は魔力通してたの?」
「はい、防がれたけど魔力は通してました」
「とすると、魔力を通しても砕けない剣が在るって事ね」
「名刀の部類か宝剣とかですか?」
昨日の戦った場所に両手剣が半ば土に埋もれてソコに在った。
右腕だけで持ち上げると特に傷らしい傷も無いのを確認し魔力を通してみた。
両手剣の刃が赤い輝きを放ち始めた、これでもう少し細かったらジ〇ダイ騎士の光の剣なんだけどなぁ等と思いにふけりながら見つめていると。
「ホントに砕けないのね」
「コレを試し切りしてみてくれ」
フィル姉さんが驚いているとエル兄さんが汚れたプレートメイルを持って来て、鎧を魔力で立たせると私の側に固定した。
「その鎧を切れるんだ、これなら刃位通るかもな」
「うん、試してみる」
上段の構えを取りスッと両手剣を振り下ろした。
ギン、ギュィイインンンン…ズドン!
フィル姉さんもエル兄さんも私も何が起こったか分からなかった、気が付くと剣先が地面まで振り下ろされていたのだから。
少し間を置き真っ二つになった鎧が大きな音を立て倒れた。
うそぉ、なんの抵抗も無く真っ二つとか…思わず少女にあるまじき声が漏れた。
「うぉぅ…何じゃこりゃ…」
「…そんな声出しちゃダメよ」
「これは探す価値ありだな」
エル兄さんが笑みを浮かべ武器の山に眼を向ける、他にも在るだろう魔力に耐えれる剣を探す事、この剣さえあれば、私はともかく魔力の扱いに長けた二人なら女王に少しでも抵抗できるかもしれない。
少し希望が出て来た。
だがこの山積みの中から探し出すのは大変なんて物じゃないし魔力が幾ら有っても足りなさそうだ。
「と言う事でファナこの山に手を当てて全体に魔力を通してくれ」
「え?」
「余剰魔力?が有る位だしいいだろ?」
確かに余ってると言えばそうなんだけど。
「この山の次は向こうの山に通してくれ」
奥にある山々を指差す。
「エル兄さんも手伝ってよ」
「僕だと魔力切れを起こすかもしれないからな!」
フィル姉さんは両手を顔の前で合わせていた、味方は居なかったようだ。
魔力量は確かに増えたらしいけど、それ程二人との差があるのかな?
数値化されていない魔力量を知る方法が無いんだよねぇ、まぁやるんだけど。
武器の山に手を当て魔力を流し込むと派手な音をだし山がその高さを低くしてゆく。
私の足元にも大量の砕けた刃が崩れ落ち鎧に当たり甲高い音を立てた。
ふむ生身だと危ないわコレ、こういう意味でも言ってたのかな。
「ふぅ、こんな感じでいいかな?」
「充分だ、向こうの山も頼む、師匠とこの瓦礫から使えそうな剣が有るか探すよ」
「ファナちゃん無理のない程度にお願いね」
二人は小さな欠片を器用に部屋の一方に飛ばし始めた、私は他の山にも同じように魔力を通す、数十分後全ての山に魔力を通し終わると流石に疲れたので鎧を解除し休息をとる事にした。
「大丈夫ファナちゃん?休んでてね」
「ファナのおかげで何本か見つかったよ」
「うん、休んでるね」
魔法で水を創り口に流し込む。
魔力に耐えれる剣が何本か見つかったのか、戦力増強だね、頑張ったかいが有ったよ。
分かったのは魔力を通すって使い方は思った以上に疲れる事だ、使用する魔力量が多いのかな?
魔力を通して剣を扱うのは色々訓練が必要かも、流しっぱなしだとすぐ魔力切れ起しそうだし。
全ての瓦礫を探した結果、
片手剣が5本
両手剣が3本(私が持っているのを含む)
ナイフが4本
見つかった。
確認でもう一度魔力を通してみたが問題無かったのでこれ等を持ち帰る事にした。
部屋の隅には砕けた武器が高く積まれていた、あれだけ在って使えるのがコレだけとか、魔力に耐えれる武器はレアだねレア、まさに名刀と言うか…魔力に耐えれる剣…で魔剣って言っていいんじゃないかな。
ナイフはともかく見つかった本数は少ないので担いで帰る事も出来るけど、ここはアイテムボックスに収納して帰るとしようかな。
鎧を戻し準備する。
「剣を渡して下さい、髪の中に収納します」
「鎧だけじゃないの?何でも入るの?」
「はい、まだまだ余裕ありそうなので」
「聖女になって色々便利な魔法を身に着けたな」
魔法なのかな…まぁいいか、剣を髪に当てて貰い剣の収納を開始する。
フィル姉さんが剣を髪に当ててくれる、手からでも出来るけど髪から直接出来るかも試してみたかったからだ。
「こんな大きなの入るの?」
「大丈夫です、初めてなのでその、ゆっくりとお願いします」
「じゃあ、無理そうなら言ってね」
「はい」
髪に剣がゆっくり飲み込まれてゆく。
「うわぁホントに入って…すごい…もう半分入ったわ」
「ん…」
「大丈夫?ファナちゃん」
「はい、一気に根元までお願いします」
「あ…全部入っちゃった…苦しくない?」
髪に取り込む時に少し何かが体を通り抜けるような感覚は有るけど苦しくは無い。
「ファナ、髪からしか収納出来ないのか?」
僅かに頬を染めたエル兄さんが小さな声で呟く。
「手からも出来るけど、髪から直接収納できるか試したかっ・・・」
「残りは手から収納してくれ!」
被せる様に言い放つとフィル姉さんの方を見てた、何故か悪戯がばれた子供のように視線を逸らすフィル姉さんが私を見て可愛くウィンクする。
はて?何か問題が…収納しただけだし?エル兄さんをもう一度見ると小さく溜息を付き。
「師匠下品ですよ?」
「下品じゃないし―、ね~ファナちゃん、エルゼルが変な想像するからそう聞こえるんだよ?」
「そんな事は…ファナも注意してくれ」
少しピリピリしてた二人の雰囲気が何時ものゆるい感じになってた、私は何が問題だったか分からないけど。
「うん、よかった」
笑顔でそう返事するとエル兄さんはがっくりと肩を落とし、
「はぁ…ファナはまだ子供なんです、後でばれたらミリルさんに怒られますよ師匠?」
「ぐっそれは困る…黙っててね…」
腕を組んでるエル兄さんに慌てるフィル姉さんを見てると笑みが零れる。
武器回収も出来たし予定より早く帰る事になった、ミリルお姉ちゃんにもお土産出来たし喜んでくれるかなぁ。
日が暮れるまでに戻ろうと急ぎ外に出ると夕暮れ近くの空は珍しく雲が少なく、茜色の空がとても綺麗だった。
勝負まであと2日いろいろ問題も見つかったし対策を考えないといけない。
そう、剣に魔法を通すこと教えるとか…これって自爆じゃない?




