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地方生まれの聖女様  作者: タタラ
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「私」と聖女2

私と勝負?エル兄さんが?惚れて…え?

「いやいやいや、エル兄さん何言ってるの?私と戦うの?」


パタパタと手の振りながらエル兄さんに引き攣った笑みを向ける。

「僕は本気だ、勝負してくれファナ」


冗談を言わないことは私も分かってる、エル兄さんはこんな冗談は言わない、だからこそ、

「私を倒して勇者になりたいの?」


「倒したいとかじゃ無い、認められればいいんだろ?」

認められれば、だけど赤い鎧を纏った私に勝負するのだ、さっきの戦闘も一部見ているだろうし。

それでも勝負するように言ってきた、勝算が在っての事なんだろうけど。

『フム、キミガ、カテバ、"ユウシャ"モ"ファナ"クンモ、キミノモノサ』


お茶を啜りつつ少年が言う、何かリズムを刻むように揺れる肩が彼の心境を語っていた、楽しそうで何よりですね…。


「ファナを物みたいに…何を言ってるんですか!エルゼル君も!」

ミリルお姉ちゃんが机に手を叩きつける、負ければ相手に惚れる勝利者のモノとなる、私の意志とは関係なくって所を怒ってくれているんだろうけど。


「ミリルさん、僕は純粋にファナと戦ってみたいだけなんです、勝ち負けに興味は無いですよ」

「お姉ちゃん、大丈夫だよ心配しないで」


赤い鎧の性能も試しておきたい、魔物の女王との戦いでは我を失っていてハッキリしないし、戦う相手が普通の人(魔力の無い人)より鎧の能力が分かるはずだ、でもお姉ちゃんは納得はしてくれなかった。


「でも、ファナこのま…」

『ソウダヨ、コレハ、ファナクン、ノモンダイダ、キミタチガ、ドウコウ、イウコトジャナイヨ』

この一言でフィル姉さんとミリルお姉ちゃんの視線が厳しさを増す。


『セカイヲスクウ、ノニ、ヒトリノギセイデ、スムンダ』

ズズズ・・

『ナニモシナケレバ、セカイガ、ホロブンダヨ、キミタチハ、ドチラヲ、エラブンダイ?』


何もしなければ魔物の女王に世界が滅ぼされる、『世界を喰らい尽してやる』確かにそう言った。

それは二人も聞いていたので何も言えず俯いていたが、


「でもファナはまだ子供で…女の子じゃないですか」

『ダケド、メガミノカゴヲウケタ、フツウジャナインダヨ』


そっとミリルお姉ちゃんの手を握る、じっとお姉ちゃんの泣きそうな顔を見る…優しいお姉ちゃん。

「私は聖女なの、勇者を探してみるね、ありがとうお姉ちゃん」


本心は納得などしていない、転げ回り暴れまくる…姿は見せずニッコリと微笑む。

「ファナ…」

ぎゅっと抱きしめられながらエル兄さんを見る、


「エル兄さん勝負は3日後でお願いします、まだ体調が」

「そうだな、戻って来た所だし…急ぐ訳でも無いしそうしよう」


女神の加護のおかげである程度回復しているとはいっても、魔力も体力も万全では無いので余裕を見て3日後にして貰った。


『ジャア、ミッカゴ、ニクルヨ、ソレマデ、ショウブハ、ハジメナイデネ』

そう言うと指を鳴らし少年は姿を消した。


「「「はぁ~っ」」」

3人が同時に何とも言えない疲れを含んだような息を吐く。


「あの少年は…フゥ…何と言うか…恐ろしい…"存在"っと言った感じかな」

「ですね…純粋な好奇心というより楽しみの為っと言った感じでしたね」


ドカリと椅子に座り直す二人に抱きしめ合う私とお姉ちゃん。

「お二人さんもそろそろ離れて頂戴」

「「はい」」


ゆっくりと惜しむように離れる。

お姉ちゃんのおかげでかなり落ち着いた、色々有ってテンパってたのかな。


取り合えず食事を摂ってこれからの事を相談する事になった、皆でいそいそと準備にかかるが疲れていた為簡単にスープとパンがテーブルに並ぶ。


「ファナ、3日後でいいんだな?」

「うん、エル兄さんそれでいいよ」

カチャカチャと食事を進めながら確認を行う、私は一晩眠れば大体回復するので、3日も見てれば完全回復するはず。

ボロボロの鎧が回復するかどうか分からないけど、なぜか直る気がするんだよね。


「どうしても二人は戦うのですか?」

「うん、私は新しい能力を確認したいし…負けないから」


木の匙を咥えてながらミリルお姉ちゃんに

「私、聖女になったらしいし」

「…聖女様ですか」


さっきは嬉しそうにしていた表情が今は少し辛そうだ。

お姉ちゃんは私が聖女候補であるという事で護衛をかって出てくれた、今は違うけどそれでも聖女になったことを喜んでくれると思ってた、心配かけてごめんね。


「まぁ魔物の女王の事を知っているのは…何とかしないとね」

フィル姉さんの間の空いた言葉に、少し引っかかる所が有るが、戦いが始まるまでどれ位の時間が残されているのか。


「あの少年にどれ位の時間が在るか聞いておけば良かったですね」

「3日後に来るらしいし、その時に聞きましょう、教えてくれるかどうかは分からないけど」

フィル姉さん達も気になっていたのか、あの少年が来た時聞いてみる事にする。


その後は特に会話も無く食事の時間は終了した。

ミリルお姉ちゃんが後片付けをしてくれて、私達は早めの就寝となった。


部屋のベットに倒れ込むように体を埋めるとそのまま眠ってしまった。




『ファナさん、申し訳ありません…いつか必ず…必ず…』




『アリア…?』




ゆっくり瞼が開き、冷たい空気が意識を覚醒させる。

夢を見たようなでも思い出せない…まぁいいか、体調を確認する。

腕も脚にも疲れは無く少し眠気が在るが問題なさそうだ、布団を押しのけ起き上がると着替えもせず眠った為、しわくちゃになった服が目に入った。


「うッ…怒られる…」

急いで着替えを引っ張り出し着替え始める、

「さむーさむー」

体は特に変化は無い…無い…どこがどうこうでは無いが…髪の色が赤くなった位かな。


動きやすい服装に替えコートを羽織り部屋から出て外に出る。

明るくなり始めた空、照らされる白銀の世界は相変わらず美しく、空気が煌めいて見えるようだった。


建物から少し離れて意識を集中する。

「ハァ~…赤い鎧よ」

白い息が顔を覆うより早く、瞬時に赤く色の変わった髪から鎧の腕と脚が現れ、私を覆うように鎧が組み上がる。


腕を体の前に伸ばしてみる、自分の体を動かす様に動く鎧、そして吹き飛ばされた左腕もちゃんと元通りに直っていた。


「左腕がちゃんと在るし、削られた装甲も戻ってる」

呟くようにして一つ一つ確認していく、傷はどこにも無さそう完全復活かな。


前回のような万能感は無く平常心だし、あの少年がまた何かしたのかな?

取り合えず屈伸運動をしてから、私は鎧の試し運転を兼ねて迷いの森を一周する事にした。


「3日後の勝負、負けないんだから…負けたら…困るし…」

少し顔が熱くなるのを意識しつつ森に向かって駆け出した。



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