「私」と聖女
魔物の女王の消えた後、私達は急いで家に戻った。
少年に関しては助けてもらった事もあり、一部不可思議な所もあるが敵だは無いだろうと、代表でフィル姉さんが少年にお礼を述べていた。
正体に関しては、はぐらかしているがミリルお姉ちゃんも根掘り葉掘り聞く事はしなかった、知らない方が良い事も在るし、機嫌を損ねて敵にしたくは無いのだろう。
あの魔物の女王を手玉に取れる位の強さだ、お姉ちゃん達では手も足も出ないだろうし。
少年はこの場から離れる事を提案して来たので、私達は一度戻る事にした。
魔物の女王との戦闘で、当初の目的であった武器回収どころでは無くなった、どうしてこうなった。
酷い戦闘に、また死に掛け、改造された?それに私は少年が言う"世界を救う"とか意味が分からない。
戻るとボロボロになった私達を見て驚いていたミリルお姉ちゃんだが、すぐにお湯と布を準備してくれた。
体を拭き終わる頃、食堂でミリルお姉ちゃんが温かいお茶を淹れてくれた。
熱いお茶が温くなるまで無言で席に着き、皆固まっている原因は、
ズズズズ・・・
『フゥ、オイシイ、オチャダネェ、オカワリモラエルカナ?』
にこやかにコップをミリルお姉ちゃんに差し出すこの謎の少年だ
お姉ちゃん達には話せないが女神アリアと同じように天界の住人なのは確定だ、私にアイテムボックスをくれたり、時間を止めるような事が出来たり、普通の人間で無い。
あ、ミリルお姉ちゃんが困惑しながらお茶を注いでる、だけど、眼が説明を求めるように私達をちらちら見ている、ごめん、私達も良く解らないんです。
「魔物に苦戦していた時に助けて貰ったのよ」
「そうなんですか、助けて頂いてありがとうございます」
『キニスルコトハナイヨ、ファナクンハ、アソコデ、シナセルワケニハ、イカナカッタシネ』
少年が可愛くウィンクしてくる、あぁ軽く頭痛がする、ちょっと落ち着こう、お茶おいしそう、ズズズ・・・
『サテ、ファナクン、セカイヲスクウ、ユウシャヲ、キメテクレルカイ?』
ブフォ!気管にお茶がぁぁぁ。
ゲホゲホと咳込み喉の引っかかりを取り除き少年を見る。
「勇者を決める?何で私が?」
「勇者…ですか?」
「・・・っ」
ミリルお姉ちゃんは訳が分からず状況を把握中だが、フィル姉さんとエル兄さんは"勇者"と言う言葉に反応した。
『ソウダヨ、キミハ、セイジョダロ?ユウシャヲキメルノハ、キミノヤクメダ』
「聖女?私が?私はただの魔女だし…」
そう私はただの魔女だ、魔法が使える女性…うぐぅ…聖女では…。
女神アリアが私を魔法使いにし傷を治してくれた時"聖女の再誕"と言ったのは覚えているが、冗談だと思ってた。
『ソウナンダヨ、メガミ、ハ、キミニセイジョノ、チカラヲ、アタエテイナカッタンダヨ』
そういうとウンウン頷く少年、皆黙って聞いているがミリルお姉ちゃんだけが何故か嬉しそうだった。
「…女神…は…ですか…」
フィル姉さんは何か気が付いたようだけど現実離れしすぎて言葉に出さないのかな?
しかし、聖女の力?聞きたくないが聞いてしまった。
「聖女の力?何ですかそれは?」
『ユウシャヲ、ミツケダスコトダヨ、ソシテ、ムスバレルノサ!」
大きく両腕を広げこれ以上ない笑顔だ。
「・・・え?えーと、もう一度お願いします」
『ン?ユウシャト、ムスバレルンダヨ、ココロノソコカラ』
『オヤ?ユウシャ、トモニタビヲシ、ササエ、タタカイ、アイシアイ、ムスバレ、デンセツニナル、ダロ?』
愛し合う?結ばれる?伝説?なにそれ…私はあれだよ…無理だよ?
「それは……御伽噺の話じゃないでしょうか?」
『アレ?セイジョッテ、ソウジャナイノ?』
何処の世界の聖女のお話だろうか…ちなみにこの世界の聖女様は、世界各地の魔物を討伐しながら行方不明になってる。
勇者達は勇者達で相討ちで消えてるし間違っても聖女と結ばれたりしていない。
少年はカクンと頭を傾け少し困ったような表情をした、嫌な予感がする、聞いたほうがいいのか迷うが聞かなくても結果は変わらないだろう。
「どうしたんですか?」
『ン~、タイセツナコトダカラ、ハナシテオクヨ』
「大切なこと?」
『ソウダヨ、キミニアタエタ、モウヒトツノ、ジンキ、サ』
そうだった私はもう一つ神器を貰ったんだったんだけど…それと大事な事とは…
『テッキリ…コレハコレハ…キミガ、ミトメタモノガ、ユウシャ、ニナル、イヤ、ユウシャニスルノウリョク、ダヨ』
「私が認めた人が勇者になるんですか?」
『カンタンニ、イエバ、ソウダネ』
『オマケデ、ユウシャニ、コイ、スルヨウニ、シテアルンダヨネ』
「そっか~恋しちゃうんだ、好きになっちゃうんだ~」
アハハハハ、と笑う私と少年、良い笑顔だね……殴りたい。
黙って聞いていたエル兄さんが急に謎の少年に声をかけた、
「どうして君はファナに神器を与えたり出来るんですか?あの白銀の鎧との戦いも、君は何者なんですか?」
フィル姉さんもミリルお姉ちゃんも黙って少年を見ていた。
少年と言えば、ほんの少し口元を釣り上げた。
『ソウダネ、ヒトノマエニ、アラワレタノハ、400ネン、ブリクライカ』
そういうと少年は立ち上がり私達から少し離れた。
「400年ぶり?いったい何を言って…」
女神アリアの知り合いだし、400年何て今更だよね、私も魂だけなら400年超えてるし…
『400ネンマエ、コノセカイヲ、スクッタ、エイユウタチ、イライダシネ』
『ボクハ、コノセカイノ、ソウゾウシュ、ダヨ』
訳の解らないポーズを決める、驚いた、そう驚いた、ポーズにじゃ無くて"創造主"だという事に、
「まさか、創造主だなんて…女神アリアの…さらに…」
「"ソウゾウシュ"ってなんだ?ファナは分るのか?」
「えーと、その…」
この世界の神様は女神であり女神アリアだ、創造主と言っても今の人族には解らないだろう。
『コノハンノウハ、イガイニキズツクネ、メガミヲトウカツスル、モノダヨ』
ポーズまで決めたのに反応が薄かったせいか肩を落としがっかりしている。
「女神の…女神様のさらに上の上司みたいな存在…」
こう言うしかなかったが分かってくれたかな?
「女神のさらに…」
「良く解りませんが、神話に出てくるような方なのは分りました」
エル兄さんは首を傾げているがお姉さん達はなんとなく理解してくれたようだ。
『……マァ、ソレデイイヨ、セツメイスルノ、メンドウダシネ』
少年はまだ立ち直れてない様だ。
しかし、そんな存在だとは思わなかった、少年の姿は趣味か…な、まぁそれは良いとして
「もし私が勇者を決めなければ世界はどうなるんですか?」
『マモノノジョオウニ、クイツクサレ、ホロブダロウネ』
『ソレト、コノスガタハ、シュミ、ジャナイヨ』
何故かエル兄さんが挙手をした。
『ハイ、エルクン、ダッタカナ』
「はい、エルゼルです、ファナに認められるにはどうすればいいんですか?」
『ア~、ソウダネ、ユウシャ、ニナル、ジョウケンハ、ヨロイヲマトッタ、ファナクンニ、カツコトダヨ』
勇者になる最低条件は、勇者の鎧を纏った私に勝つ事、これって無理ゲーじゃないだろうか。
二人はあの戦いを見てるし、魔法使いでも勝てないと思う、いくら私は弱くても…私って魔法使いになってから一度もまともに勝利した事無くない?
クマに負け、魔物に負け、エル兄さんやフィル姉さんには魔法技術では敵わず…負け続けてる。
「じゃあ、僕がファナに挑戦します!」
「「「え」」」
『ホホウ、イイネェ』
その発言に最初は冗談かと思ってたけど、エル兄さんの顔は真剣だった。




