「私」と理
うっすらと覚醒する意識を思い留まらせる、もう少し眠りたい・・・
水の中に浮かぶような感覚に身を委ねていると暖かな日差しが頬を撫で微風が甘い花の香りを運んできた。
「そろそろ起きてくださいよファナさん」
「疲れてんだよ…もう少し寝かせて…」
「大事な話があるので駄目です、起きてくださーい!」
え…この声は…うっすらと目を開けるとアリアが腰に手を当てふんぞり返っていた。
「女神アリア―かぁー!」
「ヒィィーなんですかいきなり」
飛び起きると両手でアリアの首をガクガク揺らしながら絞めた、当然力は入れていないけどな!
「まぁ冗談はこの位にしてお話ししましょうファナさん」
そう言うとアリアは俺の両手を掴んで同じ顔の高さに持ち上げると少し目の下にクマのある顔でニッと笑う、嫌な予感しかしないその笑顔に俺の顔はこれでもかって位引き攣ったのはこれまでの経験上仕方ない事だと思う。
「話ってなんだよ?しかもまた天界に来てるし俺・・」
「大丈夫ですよここ天界じゃ無くてファナさんの夢の中ですから」
俺の夢の中とか・・・頭の中って事か・・何でも有だな女神様は・・・
「色々気合い入れて来てみました、夢の中なのに現実に近いでしょ?」
「・・・・・」
「驚いて声も出ないようですね!」
「・・・バッカじゃないの?話ってなんだよ?」
人の頭ん中で何やってんだよ・・・
もの凄く落ち込んだ女神が腕を振るうとテーブルと椅子が現れる、女神とセットだなこれ。
女神アリアは席に座ると俺にも座るように促しバタークッキーとココアを出した。
サクサクと懐かしい甘味だココアも甘くて夢でも美味しいこれなら幾ら食べても太らないし眠れば楽しめるとか良いよなぁ~いつでもこの夢見れるようにしてくれないかな。
無駄な事を考えながらもぐもぐとクッキーを食べていると女神が申し訳なさそうな声で話し出した。
「さっきファナさんから連絡あった時出られなくて慌てて奇跡の対応したらミスっちゃいました、テヘ」
女神のテヘペロとか今更驚かないし、女神のミスなど気にしてたら生きていけない・・・が
「説明宜しく」
女神アリアは"ん~"と唸りながら両手で頭を抱えている、その姿をジッと睨んでいると諦めたような表情になったアリアが話し出した。
「実はですね、慌てていて"奇跡"では無く直接ファナさんが準備していた魔法に魔力を送り込んだんですよ、そしたらとんでもない威力が出て大量の魔物を吹き飛ばしたじゃないですか?」
確かに大空洞に集まっていた魔物の大群を吹き飛ばした、もしかすると女王も巻き込んで焼いたかもしれない。
「あーそういう事かあの大爆発は・・・髪が光らないからおかしいと思ってたんだけど」
魔物は倒せたし今回のミスは気にしないんだけどな、あれだ終わり良ければすべてよし?かな
「いやぁ・・それがですねぇ・・何と言うか・・・」
うわぁ何これ、何ドモッてるんだよ大事な話って何があったんだ。
「まさかあんな大群が居るとは思わず…大量の魔力が…ファナさんの体が耐えきれず……その…瀕死です!」
「魔物を倒した、それがどう瀕死になるのに繋がるんだよ?」
何かを隠すような遠巻きな説明に少しイライラし声が鋭くなった。
「うぅ・・この"世界の理"が問題を起しました、いえ前任の女神が書き換えた"世界の理"です、ファナさんは地球から来ましたから簡単に説明すると急激なレベルアップに体がついて行けず魂が崩壊しかかってます」
「はぁぁぁ?なにそれ?この世界にレベルとかないだろ?」
「肉体的なレベルでは無く魔力的なレベルです、この世界は魔物を倒すと少しの魔力ですが相手から吸収し自分の魔力を増やせるんですよ、これは前任者が"勇者"を強くする為に書き換えたようなのですが現在もこの"世界の理"は有効なんです」
魔物の持つ魔力を吸収すると魔力の容量が増える?経験値みたいな感じか?なら誰でも魔法使いになるんじゃないのか?経験値の様なモノなら魂のレベルも上昇するんじゃないのかな?
「じゃあ魔物を倒していれば誰でも魔法使いになれるのか?」
「ファナさんの疑問の答えは否です、元から魔法を使う事が出来る人でなければ魔力を吸収出来ませんから、魔法使いの魂には魔力を吸収し蓄える能力があるんですこれが一般人と魔法使いの違いなんです」
一般人と魔法使いは魂自体が違うってのか、魔法使いになろうとしてどんな努力も決して実らないって事か。
この内容からすると・・・
「許容量オーバーって事か…?」
「理解が早くて助かります・・・段階を踏んでいるのならゆっくりと容量を増やし負担は殆ど無い筈だったんですが、大群を一度に・・・レベル1が一気に100になるような魂の変化が起こってまして」
二人して項垂れる、これがゲームなら何ともないだろうすぐに上昇したステータスをフル活用してシナリオを進めて行くのだろうが現実は違う、上昇する能力に体が追い付かず壊れてゆく。
小さな音を立て女神アリアが立ち上がると空間から光輝くクリスタルを取り出した。
「で、今回の件について私のミスでもありますので対処したいのですが、ファナさんに先に了承を頂こうかと思いまして」
何か出たよ、前回の神器といい嫌な予感しかしないだが
「それで俺にどうしようってんだよ・・・」
思わず立ち上がり俺は髪の事も在り女神アリアから遠ざかる。
「これはファナさんの容量不足分を補う神器です、これを取り込んで貰えれば崩壊を食い止めれます今も私が抑えていますが猶予が無いんです」
そこまで言われると嫌だとは言えない、断われば消滅だし・・なんか俺女神アリアに良いように改造されてるような気がするんだけど・・・笑いを必死に抑えてるような表情が更に俺の不安を煽るんだよな。
「アリア、俺を何にしたいんだ?どう考えてもおかしいだろ?」
「何かおかしいですか?私はファナさんを救いたいだけですよ、しいて言えば世界を救って欲しい位ですか
?」
え・・今なんて言った?世界を救え?確かに魔法は使えるが半人前だし無茶ぶり過ぎだろ。
「イヤイヤ無茶言うなよ、俺は10歳の少女だぞ世界を救うなんて出来るはず無いだろ」
「こんな10歳の少女は居ません!」
正論すぎて文句が言えない・・こんな10歳少女は確かに居ないだろうな。
女神アリアは真剣な表情で俺の両肩に手を乗せ静かに瞳を閉じた、そしてゆっくりと目を開き俺を見つめる。
「それに最近地球産のドラマって言うんですかにハマっちゃって時間ないんですよね~」
アハハと頭を掻く女神の言葉に力が抜けた。
「・・・世界より趣味か・・・って地球産って・・繋がり在るのかよ!」
「しまった・・聞かれてしまっては仕方ありませんね、実力行使しますよ」
自分で喋ったんじゃないかという反論はさせて貰えず、女神が杖を振るうと地面から大量の蔦が俺の体を絡めとる、変な絡み方すんなーお前どんなドラマ見てんだよ!
そして女神アリアは手をワキワキさせながら物凄く邪悪な笑みで俺に近づいて来る。
「うわぁ、変なモノ近づけるなぁーそんなの入る訳無いだろ、やめろ~!」
ツタに絡み取られた体は全く動けずただ頭を左右に振るだけしか出来なかった。
「大丈夫ですよ直ぐ済みますから私に任せてください、ちょっと痛いだけですよほらほら」
女神アリアがクリスタルを俺の胸元に当てると溶けるように消えて全身に痛みが走る。
「イタァイタタ、ちょっと痛いって何これ何するんだよー」
「魂の不備の埋め合わせしてるんですから仕方ありませんよ、目が覚めたら少し変化が在るかもしれませんが気にしない様に、でわ良い旅を~」
夢の中なのに眠たくなって来た、瞼が落ちていく、
「世界なんて・・・知らねぇ・・からな・・」
「あ、後、魔物の巣を良く調べて下さい、色々眠ってる筈なのでファナさんの役に立つはずです」
くそぅやっぱり女神に良いように利用されてるんじゃないか、こうして俺は目を覚ましたがどうやら10日程眠りっぱなしだったらしい、それと俺は自分の体の変化に驚いて絶叫した。




