「私」とダンジョン5
周囲を見渡し逃げ道を探すが蠢く魔物に囲まれ身動きが出来ないでいた。
バリンガシャン
数体の魔物が障壁を殴り付け体当たりをしてくる、その衝撃に耐えきれなくなった障壁が火粉のような輝きを放ち消えてゆく。
障壁を数枚割ると魔物は後退し障壁を張り直すまで襲ってはこないのだ、こちらの魔力が切れるのを待っているような行動は追いつめた獲物をいたぶって遊んでいるのかのようだ。
「くそ、嬲り殺しにするつもりか・・」
「早く逃げ道を探さないと・・・」
急いで探さないとエル兄さんも攻撃せず防御に徹しているが二人で協力した障壁もこの数相手では紙切れに等しいし魔力も無限じゃない周囲を何度も見渡すが脱出方法が見つからず焦りが声に出る。
「くそ…」
魔物の女王の口のような丸い空洞が笑っているように歪み細くなった幾つもの眼が俺達を見詰めていた。
「どうにも出来ないのか…魔物の女王が目の前に居るのに…」
エル兄さんが呟きが耳に届く、障壁を張り直しながらずっと睨めつけている、アレの名前を知ってたり今までに見た事でもあるんだろうか?俺も名前は知っていたが見た事は当然無い、伝説に出て来る化物なのだから。
だが今は問いただしている暇はない、この状態から脱出するには奇跡でも起こらなければ…奇跡…
(こんな時こそ奇跡じゃないか俺なら起こせる筈、おーい、アリアーいや女神さまー)
俺はエル兄さんに見られない様に後ろで跪き祈りを捧げる。
(ツゥーツゥーツゥーガチャ、女神アリアですご連絡ありがとうございます、申し訳ございませんが本日の業務は終了いたしました。ピーという発信音の後にメッセージを記録いたしますのでお名前とご用件をお話しくだ・・・ガチャン)
俺は祈るのを止め歯ぎしりしながらゆっくりと立ち上がる。
(は・・・働けよ・・この・・この駄女神がー)
「っざけんなー!」
思わず叫んでしまった、一瞬魔物が怯んだ様な気がしたが気のせいだろう。
ぎょっとした顔でエル兄さんが振り向く、俺は何でもないと首を振るが恐怖でおかしくなったとでも思われたのかギュッと手を握り締める。
「落ちつけファナ、俺の命をかけてでもお前だけは・・」
「命をとか簡単に言うな・・それにこれだけの数を倒すなんて無理だよ・・・」
命を懸けるとか簡単に言うなよな・・・重いよ困るよ・・悲しいよ・・
俺達の魔力を全て使い切っても守りながらこれだけの魔物と戦う事は不可能だし、戦ってどうにか成るなら俺一人で焼き払ってやるさ・・命を懸けてっじゃ一緒か・・フフッ
だがどこかで覚悟決めなきゃなぁ俺は2度目の人生だしエル兄さんは何としてでも、相変わらず魔物達は俺達を見ている腹立つなぁクソ・・・見ている?そうだ、こいつら俺達を見てるじゃないか!
倒す事は無理でもこいつらを足止めする方法がある、イメージこそ魔法の力なら。
俺の魔力を込めるだけ込め中華料理の名前の人のあの技を再現する、強敵を足止めして来たあの技を!
「エル兄さん俺が3っ数えたら俺が良いと言うまで眼をきつく閉じてて」
「なんだよいきなり?何か策が在るのか?」
「説明してる暇ないからお願い!それと俺動けなくなるかもしれないから」
「お、おいファナ何をする気だ?」
俺は呼吸を整えイメージを強く思い描く、網膜を焼切るような光を・・・強く輝け・・・輝け!
「いくよ!3・2・1・眼を閉じて!」
エル兄さんは俯く様にし頭を抱える、俺が炎系の爆発でも起こす気で居るとでも思ったのだろうか?まぁいい目を瞑ってくれればな!
バッ!と額に向け両手の掌をかざす、イメージをより強くする為に。
「いけー!太〇拳!」
キィィンィーーーーーーー!
カッ!と俺の額が輝き髪がたなびくと大空洞を光が白く染め上げる。
俺も眼を閉じて手で隠すようにするがそれでも瞼が白く染まって見えた、数秒後に周囲から魔物の悲鳴のような呻き声が爆音のように響き地面が地震のように揺れはじめた。
効いてる!効いてる!
これで魔物達は当分何も見えないはずだ、魔力の供給を止めてエル兄さんに声を掛けた。
一瞬魔力を高めただけで済んだので魔力の消費はそこまで酷くなかったのは助かった、すぐに障壁を張り直し魔力の明かりを上空に打ち上げる。
明りに照らされた周囲の魔物達は頭を抱える様に地面に倒れ込み苦しそうに掻き毟っていた。
瞼無いから直視した筈だ焼けたろ?ざまぁみろ!
「これは・・何をしたんだファナ?」
「説明は後!エル兄さん見える?動ける?」
少しすると魔物が次々に落ちて来た、天井に張り付いていた魔物達が光で視力を失いパニックになり張り付いて居られなくなったのだろう、それを障壁で弾いていると天井の一部から光が差してきた、天井を見上げるとそれなりの大きさの穴が開いているのが見えた、魔物が隠していたのか?
「エル兄さんあそこ、光が入って来る!」
「ほんとだ、外と繋がっているのか脱出するぞ」
その時魔物達の呻き声よりもさらに大きな叫び声が響く。
『ギシャヤァァァアア』
魔物の女王の怒りの叫びだった自分の上に苦しみ落ちてくる魔物を細い腕で弾き飛ばす。
その大半の瞳は閉じられていたが眼を閉じていた目があったのだろう、目と目の間に血管を浮かべ俺達を血走った瞳で睨んでいた。
「ファナ魔力はまだあるか?」
「うん、まだまだあるよ」
そう返事をするとエル兄さんは俺をすくい上げる様に抱きかかえた。またかよー
「自分で飛べるから!」
「いいから、外に出れたらありったけの魔力を使ってこの大空洞を炎で焼き払ってくれ」
魔力をありったけか俺は動けなくなるそれを見越しての・・・仕方ない我慢する!
「分かったよ、急いで」
エル兄さんは障壁を張りながら光に向かって飛び上がって行く、俺は魔物の女王を見ていた、すると魔物の女王は地面から下半身を引きずり出した、その姿は泥だらけの芋虫のような下半身に無数の人の足が生え百足が走る様に動かし洞窟の奥に逃げて見えなくなる。
(気持ちわるー見るんじゃ無かった・・・あの足の動き・・ワサワサと・・)
上空に眼を向けると俺達が余裕で通り抜けれる位の穴が開いていた、それを潜ると冷たい空気が肺を満たし冬の青空が眩しくて目を細める。
「ファナすぐに焼き払ってくれ!」
エル兄さんはそう叫びながら更に上空に昇る。
「分った!」
爆発するような天にも届くような大噴火をイメージする、全てを燃やし尽くせ!焼き払え!
俺の目の前に光の玉が現れる、魔力を吸い続ける光の球は大きさを増し俺が意識を失わない所で魔力の供給を止めるとバスケットボー大になったソレを大空洞に向かって飛ばす、かなりの高さがあるから地面に落ちるまで少しかかるかな?
「エル兄さん言われたとうりしたよ」
「あれは?なんだ?」
「地面に着いたら爆発すると思う」
光の玉がゆっくりと落ち穴の中に消えた、疲労困憊の俺を見てエル兄さんはものすごいスピードで空を走り出した。
(そこまで慌てなくても・・・)
周囲を見ると北の山の峰付近だった少し離れた所に湖が見える、太陽が昇り出した所か朝焼けに輝く雪原が美しく輝いている、抱えられたままその風景を見ているとさっきまでの事が夢じゃ無きとおもえるほどだ。
俺達が彷徨った北の山はそれほど高くは無いせいぜい標高1000メートル位だろう、ホントに魔物の巣が在り山を巣にしてこんなにも広がっているとは思わなかった。
エル兄さんがかなりな距離を走った時、後方から爆音が響いた。
ドゴォンドガァアンゴゴゴゴゴォ!!
上空で立ち止まり振り向くとそこには真っ赤な炎を噴き上げ火山の噴火と見間違えるような光景だった。
あれ?確かに魔力をありったけ注いだけどこんなに威力出るの??
ビリビリと響く衝撃波を受けエル兄さんの顔が引き攣っている、
「確かにありったけってとは言ったがこれ程とは思わなかった・・」
「俺も思わなかった・・・」
そんな会話をしていると俺の心臓が飛び跳ねる、俺の中の何かが膨らむ苦しさから胸元を押え呻き声を上げた。
「はぁ・・あ・・あぁ・・・」
(なんだこれ?何かが入って来る熱い、気持ち悪い)
「ファナどうした?ファナ?」
エル兄さんは俺に声を掛けながら急いで家に向かっていたが、途中で俺は意識を失った。




