「私」と紅葉の季節
あれから訓練も進み森の風景も変わった、深緑は紅葉へと変わって来た。
過ごしやすくなると共に寂しくもなる、それは両親と離れている時間が長くなっている証拠だから。
最近はフィル姉さんとの訓練はエル兄さんとの訓練に変わり森の中を駆けまわっている。
目的は食糧調達と資金調達、寒くなる前に色々と蓄えなければならないからだ。
森の動物を狩る、肉を得る、毛皮を売る
俺達魔法使いに掛かれば狩りなど何の問題も無いのだが、俺には一つ問題があった。
産まれてから街に住みこの世界でも『肉』しか見た事が無かった、鳥を〆る所は見た事はあったが哺乳類は違うんだ解体が…分かってるんだ大切な事なんだけどな
エル兄さんが丁寧に教えてくれるんで少しずつ慣れて来た、それでお礼を言ったら
「雑にされると値段が下がるからな」
だそうだ・・・そうなんだけどさぁ
フィル姉さんは別の仕事をしている。
フィル姉さんは服の仕立て直しと木材から食器を製造していた。
一度作業を見せて貰ったが魔法を使い木材が加工されていく光景に見とれてしまう程だった。
とても木製とは思えないお皿が次々と作られていく
近隣の街に売りに行けば完売する程人気が有るんだってエル兄さんが言ってた。
ミリル姉さんは家事全般、さらに料理の腕が上がり食事が楽しみで仕方ないですよ。
俺も色々教えて貰いながら一緒に作っている、少し上達した実感が出て来た、帰れたら両親に手料理を食べて貰いたい位にはね。
紅葉の季節と言えば山の恵みにあやかろうとエル兄さんと山中を駆けまわっていた。
獲物を探したり、木の実などを探したり、
『お前はキノコに触るな』
と言われたり…いいじゃん、持って帰ったのが9割毒キノコだったからって酷くないか?
そんな時だった・・・
俺は今木々の間を駆けている、後方からエル兄さんが必死に追いかけて来る。
「アハハハ」
「ウフフフ」
「私を捕まえてごらんなさいエヘヘ」
少し焦った声でエル兄さんが叫ぶ
「ファナ捕まったらどうなるのか分かっているか?」
「メチャクチャにされちゃう」
そう、捕まれば美味しく頂かれてしまう。
「だったらいい加減戻ってこいバカ!」
俺は涙と鼻水でクシャクシャになっていた、現実になど戻りたくなかった。
「いやぁぁぁだぁぁぁだってぇぇぇ」
『グルウァァァ』
ドシン!ドシン!俺の何倍もあるアイツが涎をまき散らし追いかけて来る。
そいつのつぶらな瞳がこういっている『美味しく食い散らかしてやるから待ちやがれ!』と
俺を追掛けているのは灰色熊そうグリズリーだ、追いつかれたら食べられる、俺がな!
森の中、山の恵みを探していたら"こいつ"と『こんにちは』してしまったのだ。
目の前で咆哮され余りの恐ろしさにチビリそう……ちょっとチビッた。
恐怖に俺は我を忘れ走り出してしまった。
当然後姿を見せたんだ
クマ追い掛けて来る
俺必死で逃げる
エル兄さんが追いかけて来る←今ここ
「障壁を張って迎え撃て、クマ位なんとでもなるはずだ」
ばっかゆーな何とかならなかったらどうするんだよ!
クマ位とかおかしな事言うな、クマだぞクマー
取り合えず身を守る為に後方に魔法障壁を張って…『バキン』
いきなり割られたー!
俺の後ろに現れた魔法障壁がグリズリーの一振りで砕かれた。
うそーうそー大事な事な…いやいい、違う
「エル兄割られたーーーー!嘘つきーーー!」
「集中しろ!本来の強度が出ていないだけだ、集中だ」
後ろを少し振り向き
「そうだ上空に逃げればーあっ…」
木の根に足を引っかけ転倒してしまった。
急いで起き上がり振り向くとすぐ目の前にクマが居た。
生臭い息が掛かるほど近く、俺を噛み砕こうとその口を広げ牙を剝いていた。
「あ…ダメ…あぁ…」
だがその牙は俺に届かなかった、エル兄さんにより首を落とされたからだ。
噴き出す血は障壁により遮られていたが血の臭いが周囲を覆い尽くす。
「死ぬ気か!ファナお前は魔女だぞ自分の力を信じろ」
物凄い剣幕で怒られた、自分の力を信じていればエル兄さんの様に戦えるのか…?
言い訳じゃ無いが今の俺はまだ子供だ。
クマに襲われて正気でいられる方がおかしいんだよ?
「でも…怖くて…ごめんなさい」
「はぁいいよ、帰ろう」
そう言ってエル兄さんが俺に近づいて来たが
「それ以上近づくなー!」
チビッとどころでは無く…漏らした
「あとから戻るから先に帰ってて…」
俯きお願いする
「何を…まぁ良いか先に戻ってるからな」
そう言うとクマを持ち上げると普通に駆け出した、100キロ超えてるだろ…
エル兄さんの姿が見えなくなったのを確認して立ち上がるが、太ももに張り付くスカートが気持ち悪い。
「はぁ…見られなかっただけマシか、何言われるか分かったもんじゃないしな」
障壁を使い上空から川を探すとすぐ近くに見つける事が出来た。
「さっさと服洗って乾かさなきゃ」
川の水は冷たくこのまま洗うには風邪をひきそうだ、
そうだ近辺に魔法で穴を掘り水を流し込んで溜まった水に魔法で熱を加えお湯にする。
「我ながらいい湯加減だ、こういうのなら上手く出来るんだけどなぁ」
周りを見渡し誰も居ないことを確認するって言っても俺達以外は東の森には居ないだけどな。
スカートと下着を脱ぎお湯につけてバシャバシャと洗い流す。
スースーして落ち着かないが何かこう…
いけない開放感が…
いやいやいや露出狂じゃ無いし!
何度か水を入れ替えながら沸かし濯いで綺麗にした。
「後は適当な岩に熱を…」
スカートを絞りながら適当に歩いていると、視線を感じたまたクマかと慌てて振り返るとエル兄さんが居た。
しかし見事に仁王立ちしながら見てるな、男だなエル兄さん
「エル兄さん少し恥ずかしいから~」
俺の声に我に返ったエル兄さんは
「す、すまん、戻って来るのが遅かったから…少しかよ!」
まぁ心配して来てくれたのなら怒れないなぁ
それに恥ずかしそうにしてるしな。
「うん少し、そこまで堂々と見られるとね」
「すまん、しかし何で、その…脱いでるんだよ」
少し顔を背け聞いてくる
「さっきもら…言えるかバカ」
「え、漏らしたのか…うははは、そうかチビッたのか!」
照れ隠しか、らしくなく大笑いを始めた
「笑うなー」
「ばか、穿け、羞恥心を持て!」
「知るかー!」
俺はエル兄さんを追い掛けた、が調子に乗って家まで追い掛けたら
洗濯物を干していたミリル姉さんが俺を見て倒れた。
俺何も穿いて無かったよ…ごめんさいミリルお姉ちゃん
そして俺は見事に風邪をひいた。




