「私」と兄さん
半身丸出しで森を駆けまわった結果
風邪をひきましたとも風邪など数年振りか、翌朝目を覚まし食堂に向かうとミリルお姉ちゃんが俺の顔を見て駆け寄って来た。
「ファナ大丈夫?真っ赤よ」
額に手を当てら熱を測っている様だがすぐにベットに戻された。
お姉ちゃんは凄く慌ててた、その姿に前に風邪をひいた時の両親を思い出す二人の狼狽ぶりは凄かった、病人の俺が心配する程だった。
思い出して少し笑ってしまう、誰も居ない部屋の中ベットに横たわりケホケホと咳をしてじっと天井を見ていた。
なんとなく昨日の事を思い出していた。
家に到着した時ミリルお姉ちゃんが卒倒したんだが、意識を取り戻すと怒涛の説教を頂いたんだ。
凄く怒ってた…
「ファナあなたって子は少しは恥じらいを、羞恥心を持ちなさい!」
もうそれは身振り手振りを交えたまに涙し、延々と女の子はどう在るべきかとか日頃の行動の雑さ?仕草が男の子ぽいっとかを日暮れ近くまで聞く事となった。
確かにエル兄さんに見られても男としての心が有るのでそう恥ずかしくない、最近慣れたがお姉ちゃん達に見られる方が恥ずかしかった位だ。
俺はエル兄さんを異性として見ていないんだろう、そう兄弟かな今の俺は女の子だが弟的なポジション感じがしてさ。
恥ずかしく感じたのはエル兄さんが恥ずかしそうな顔をしていたから。
そうじゃ無ければ気にせず一緒に入浴できる自信がある、エル兄さんのぷらんぷらんは一度見てるし特に気にならなかったから大丈夫だろう…今度ヒッハーと突入してみるか?
止めとこう、間違いなくミリルお姉ちゃんに怒られる。
そんな事を考えていると頭がポーとしてきた。
扉がノックされミリルお姉ちゃんが食事を持って来てくれた、少し甘い良い香りがする。
「ファナ、お腹はすきませんか?」
「少し食べる、ありがとうお姉ちゃん」
色々な野菜をすりつぶしスープにした病気をした時のに食べる病人食だ。
ミリルお姉ちゃんはベットに腰掛けスプーンですくいあげると、フーと息を吹くかけ俺の口元に運んでくる。
これはどうしろと?少しボーとするような感覚はあるが自分で食べられるよー食べさせて貰うなんて恥かしいから。
「自分で食べられるから、大丈夫だから」
赤くなってるのが分かり俯いてしまう。
「ダメです、はい、お口を開けて」
「あの…お姉ちゃん…」
「ダメです、はい、ア~ンして」
ニコニコしながらも決して譲らない、そんな気迫さえ感じるこの状況に俺が折れた。
ゆっくりと口を開けるが恥ずかしさに口元が震えスプーンが近づいて来ると自然に目を瞑ってしまう。
少し温かいスープが口の中に注がれる、喉を通り胃に流れ込むとじんわりとお腹の中から暖かくなる。
とても美味しくてとても懐かしい味がした。
(美味しい・・・)
口の中でスプーンを舐め摂る様にしているとゆっくりと引き抜かれる。
「あっ…はぁ…」
眼を開けると蕩ける様な表情のミリルお姉ちゃんがスプーンをプルプルさせていた。
「まだ沢山ありますから…」
お皿からそっとすくい上げると口元に運んでくれる、一度してしまえば恥ずかしさなど無いに等しい。
「はい、ア~ンして」
「ア~ン」
ミリルお姉ちゃんの優しい声が何故かお母さんの声に聞こえた。
少し時間をかけ食べ終えると最後に蜂蜜漬けの果物が出て来た。
小さ目に切り分けられた果物が一つずつ口に運ばれる。
「美味しい~甘~い」
リンゴだ~病気万歳だ、久しぶりの甘味にこれ以上ない笑顔になる、病人のする顔じゃないね
「お湯を持ってきます、体を拭きましょう」
「うん」
汗をかいた体を綺麗にして着替えさせてくれた、ミリルお姉ちゃんの顔は赤く息が少し荒かった風邪がうつったのだろうか?それとも…なのか
「お姉ちゃん後でうがいして手を洗ってね、お顔赤いよ?うつってたら困るから」
「大丈夫ですよこれは・・大丈夫です」
口元を押えながら視線を逸らすお姉ちゃん
俺をベットに寝かせるとおやすみなさいと名残惜しそうに部屋から出て行った。
少し熱がぶり返し、うつらうつらし始めた頃誰かがノックして入ってきた様だが俺は眠ってしまった。
これは夢…俺は夢を見ている?
何気ない日常、両親と一緒に店番をしていたあの頃を
温かいお店の中で椅子に座りぼんやりしている
商品を並べているお父さんに編み物をしているお母さん
両親が楽しそうに話している
何か話さなきゃお父さんお母さん…
俺も会話に混ざろうとしたその時…目が覚めた。
ゆっくりと瞼を開くと頬を伝う涙に気が付いた泣いていたのか俺・・
ぼんやりとした意識がはっきりしてくると何かを握っているに気が付いた。
見てみるとベットに上半身を預けるようにエル兄さんが眠っている、どうやら俺がエル兄さんの手を握っていたようだ。
部屋は薄暗く日が暮れかけているのだろう、少し寒い位の室内にエル兄さんの手がとても暖かく感じた。
お見舞いに来てくれたのかな、手まで繋いでくれて…手ぇ…恥ずかしくなって慌てて手を離す。
ん~と唸って見ても仕方ない忘れよう。
じーとエル兄さんの顔を見ている寝顔も隙が無いとかどうよ?イケメン王子もげろ…意味のない八つ当たりだがな。
そんなこんなで頭がはっきりしてくると尿意が来た、なんで熱出ると近くなるのか…
俺は用を足しにベットから立ち上がるとエル兄さんに毛布を掛け部屋から出る。
「ありがとうエル兄さん」
眠りすぎたかフワフワするが熱も下がり足取りも結構しっかりしていたもう大丈夫だ。
食堂に出ると椀に積まれた豆のへたを取っているフィル姉さんが居た
「ファナちゃん寝てないで大丈夫?」
「はい、熱も下がったようだし大丈夫です」
「魔法は使える?」
「上手く集中できなくて使えないみたいです…」
「魔法使いは体調管理も必要なの無理しちゃだめだよ、今日は寝てなさい」
気を使ってくれているのは分るが寝てばっかりも逆に落ち着かない、しかも今部屋にはエル兄さんが眠りこけているしな。
「ベットはエル兄さんが寝てるし起こすのも悪いので…」
フィル姉さんが目を見開き固まる・・・あれ?
「エルゼルが夜這い・・・いや寝込みを襲って・・・」
いや違うだろ見舞いだろ?本人が聞いたら怒るぞきっと…
「エル兄さんはそんな事しないよ」
「ファナちゃんは優しいなぁ」
フィル姉さんが考えすぎなんじゃないかな?
◇◇◇◇
ファナが熱を出した、自業自得だろ。
あんな格好で森の中を追いかけて来たんだ、もう収穫の時期も終わり11の月も近いこの寒空でだ。
ミリルさんが食事を運び食べ終わったのを見て嫌味の一つでも言ってやろうとファナの部屋を訪れた、が
「おい…寝てるのか…?」
どうやら眠っているらしい、ベットの横にあった椅子に座りファナの寝顔を見ている。
いつもの騒がしい姿からは想像もできない寝顔だ。
「静かにしてればそれなりに可愛い顔なのにな…」
初めて会った時を思い出す、これ見よがしに魔法を使い空を駆けていた。
自分が魔法使いである事を少しも隠そうとしないその行動に俺は頭を抱えた。
「何してんだアイツは!」
ファナの噂は遠く離れた街にまで届いていた、たまたま師匠と街の酒場で食事をしていた時に噂を聞いたんだが
「リガールに聖女が現れたってよ」
「大勢の前で生き返ったらしい」
「胸のデカいイイ女らしい」
「何もない所に花を咲かせた」
「魔物を倒したらしい」
噂話は色々だった、それを聞いた師匠が
「エルゼル確認して来て」
この一言でそのままリガールに向かった昼夜を問わず走り続け到着するとそのまま聞き込みをする、噂は一部本当の様だった。
神殿に囲われているのが分かった時は焦ったがファナがまだ子供であり師匠の話のような事にはまだならないだろうと安心していた、だが本人が自重せずひけらかしているとは思わなかった。
噂が何処まで広がっているかわ分からないが間諜は間違いなく居るだろうそれなのに…馬鹿め
見た目は噂とは違ったが、まぁ可愛い女の子だ…が中身は悪ガキそのものだった。
一度迎えに行ったが失敗した手合わせでファナの実力は分った全然ダメだ。
俺は師匠の所に報告に戻る事にした、司祭長がファナを中央教会に連れて行くと言っていた時間がない。
師匠と相談の結果こちらで確保し修行させる!で決まった。
俺は西の街道に盗賊を集めるように追い立ててファナ達を東の森に誘い込むように仕向けた。
盗賊共は半死半生にして街道の近くに転がしておいた、目撃さえされればいいのだから。
東の森で貴族共の下っ端に足止めされたがその後が問題だった。
ファナは人を傷つける事を禁忌している、魔法使いとしては問題だったいや死活問題だと言っても良い位だ。
自ら傷つけた下っ端共をファナが奇跡で助ける姿は俺でも信じられるものでは無かった、しかし伝説の"光の聖女"でも傷を癒す事は出来なかったのになぜファナは使えるんだ?
師匠がファナを受け入れると言った時、師匠と二人っきりは少しきつかったので妹弟子が出来るとか楽しみだったが…アイツは恥じらいが無さすぎる!見せてるんじゃないかと思う位見えるんだよ!
ファナは仕草や行動が雑だ男と言っても通用するだろう、裸を見らられた時は…こっちも見たけどさ…少しは恥ずかしがるとか隠すとかあるだろ!
師匠はそれなりに隠してる、ミリルさんは…見習え鉄壁だ鉄壁!
少しするとファナが眠りながら泣きだした両親の名を呼びながら。
小さな手を握り締めて小さな声で泣いてた、そっと手に触れるとしっかりと握り返してきた。
泣き顔が落ち着きを取り戻したように穏やかになったので少しそのままにしていた。
「寝顔も可愛いのにな…」
ファナの前だと"僕"から"俺"になれる、妹が居ればこんななのかと…違うよな…
・・・・・
・・・・
「眠ってたのか…どこ行ったファナ?」
気が付くと眠っていたのか毛布が掛けられていた。
ドアに近づくと師匠とファナの声が聞こえた
「エルゼルが夜這い・・・いや寝込みを襲って・・・」
師匠のその一言に俺って意外に信用ないのかと項垂れる事になった。
「エル兄さんはそんな事しないよ」
ファナは俺を兄の様に思ってくれていると分かり少し嬉しかったんだが
何だこの小さな痛みは…?




