「私」と修行
翌朝、少し寝坊をし急いで身なりを整え食堂に向かうとフィル姉さんがいきなり頭を下げ謝ってきた
「ごめんね、ファナちゃん昨夜は酔ってて、その…のぼせるまで離さなくて」
「いえ、大丈夫です、ちゃんと言わなかった私が悪いんです」
二人でぺこぺこと頭を下げているとフィル姉さんが小声で
『ミリルさんめっちゃ怖くてさぁ…』
そういう事か…ミリルお姉ちゃんなにしてんですか…
ミリルお姉ちゃんは朝食の準備をしつつニコニコしてこっちを見てた。
フィル姉さんが俺を席に座らせる
「ファナちゃん髪の色元に戻ってるね~」
白くなった髪は元の色に戻っていた、一晩で魔力が回復したらしい、
「はい、良かったです」
その後エル兄さんが顔を出し朝食となった、蒸したお芋に野菜たっぷりのスープだ。
配膳されると各々が食べ始める、お姉ちゃんが自分の分と俺の分を運んで来て隣に座ると
「いただきましょうファナ」
「うん、いただきます」
食事も進み食べ終わる頃、フィル姉さんが一日の予定を発表した。
「んじゃ、エルゼルは荷物の回収よろしくね」
「はい、師匠」
「ファナちゃんは私と身体強化の練習ね」
「はい、フィル姉さん」
「ミリルさんは悪いんだけど家の清掃とか夕飯の準備よろしくです」
「はい、承りました」
今日の予定も決まり気合が入るがどうも落ち着かないスースーする…どうもさっきから気になるのだ。
エル兄さんにどう説明すれば貸してくれるか考えていると眼が合ったので
「エル兄さんお願いがあります、下着を一枚下さい」
説明が面倒なので直球で伝えるとエル兄さんが持っていた芋を握り潰した
「…お前何に使うつもりだ?」
「何に使うって穿くんですよ?別に変な意味じゃ無いですよ?」
「いやだよ!」
そんな嫌がらなくても借りるだけだし!
「ちゃんと洗って返しますからぁ~使い古しでもいいから~」
お姉ちゃん達に助け舟を求め視線を送るとフィル姉さんはお腹を抱えて笑い出すし、ミリルお姉ちゃんは額に手を当て天井を見てた。
「行ってきます、師匠」
結局エル兄さんは慌てて朝食を食べるとささっと出て行ってしまった、仕方ない今日は我慢するか。
朝食が終わり俺ははフィル姉さんと準備を始める。
「ファナ気を付けてね、フィルノールさんよろしくお願いします」
「まかせて~今日は説明位だから~」
ニコニコと笑顔の二人の間に稲妻が見えるバチバチと…
始まったばかりですよお二人ともぉ~
ハァと溜息を付きつつ
「フィル姉さん服どうしよう?これしか無いけど」
「そのままでいいよ~寝間着にしちゃったけど誰も見てないしね~」
フィル姉さんは細い肩紐の上着に柄の付き布を腰に巻き紺色のローブを羽織る
ローブ羽織ってなきゃエル兄さん困るんじゃ…色々と
「んじゃ行こうか?」
「はい、フィル姉さん」
外に出ると日差しを温かく感じた、建物の中が存外に涼しかったようだ。
道理でお腹が冷える訳だ。
「んじゃついて来てね、少し走るからね~」
フィル姉さんは後ろ手に手を組んでゆっくりと森ぬ向かい歩いて行く
「はい、フィル姉さん」
返事をするとフィル姉さんは少し地面から浮いたような姿で正に滑る様に進みだし森の中に消えて行った。
俺はその姿に驚き追いかけるのが遅れた、すぐに魔力を纏い身体強化を行う
「ちょっフィル姉さん待ってー!」
森の中を音も無く進んで行くフィル姉さんに必死に追いかけるが木々が邪魔して思う様に進めない。
魔法障壁を足場にして少し高い所を跳ねているが目測を誤ると木にぶつかりそうになって足が止まる。
「マンガじゃないんだから…どうしたらあんな…走ってないし…」
森を抜けると大きな湖がありすぐ側でフィル姉さんが手を振って俺を待ってくれていた。
息も切れ切れやっと追いついた俺に
「なるほどね~そう言えば最近だっけ?魔女になったの?」
「はい」
フィル姉さんはうんうん頷くと
「魔力を無駄に使い過ぎてるのと後、集中力が足りて無いかな~今度は魔法障壁禁止で私の後を追いかけて来てね」
直接走れって事ですね?身体強化して追いかけっこ?
フィル姉さんはまるで氷の上を滑っているように華麗に木々を除けていくが、俺は全速で走っても全く追いつけない所か、途中途中でフィル姉さんが待ってくれていた位だ。
「ハァハァ…フィル姉さん待って…」
「待ってたら意味ないんだけど?」
この後フィル姉さんを追いかけて森の中を駆けまわったが結局一度も追いつけなかった。
俺は森の中を走り回ったせいで小枝で所どころ服を破いてしまっていた。
「ごめんなさいフィル姉さん服が…」
「それ位大丈夫だよ直せるから~休憩しよっか」
走ると小枝に引っかかるし…ん~…
湖の側で休憩となってどうすれば追いつけるのか考えているとフィル姉さんは途中で拾っていた小枝を握り水面を睨んでいた。
「フィル姉さん何見てるんですか?」
「ん~ちょこっとお魚さんを…っと」
フィル姉さんが摘まむように持っていた小枝を水面に打ち込む、吸い込まれるように水の中に消えると魚が浮いて来た。
「まずは一匹、ファナちゃん火おこしといて~」
俺は木の枝を拾い集め日陰に即席のかまどを造り魔法で火をおこした。
そうしてる内にフィル姉さんが捕って来た数匹の魚の処理をして木の枝に刺し火の側並べていく。
しかし、お魚が宙に浮いたまま処理されている姿には驚いた。
「フィル姉さんは器用なんですね」
「ファナちゃんも魔力をちゃんと制御出来るようになったら出来るよ~」
お魚から油がでてパチパチと音を立てると良い香りが漂ってくる。
見てると勝手に焼き面が回転する、魔法って便利だなぁ
「はい、焼きあがったよ」
走り回ってお腹が空いていた俺は受け取るとしゃがみ込み齧り付いた。
「美味しいですフィル姉さん」
フィル姉さんを見ると困った顔で俺を見てた
「ファナちゃんちゃんと座って食べる、も~エルゼルが居なくてよかったよ…」
座り直しながら、あ~穿いてないからね~見えてた?
「エル兄さんには裸見られてるし今更ですよ?」
この一言に目を見開くフィル姉さん
「なん…だと…いつ…?」
一匹目の骨を焚火の中にほり込んで2匹目に手を伸ばす
「昨夜お湯を使う時に、まぁ見られたのはお互いさまなんですけど」
ハフハフと2匹目を美味しく頂く、食べ終わって一息つくと。
「エルゼルは返ってから追及するとして…んじゃ、再開しようか」
「はいフィル姉さん」
身体強化の訓練が再開された。
◇◇◇◇
エルゼルは木の枝から枝に飛び移りながら森を駆け抜け街道を目指していた。
昨日は半日程かかった道のりも2時間程で目的地近くまで来る事が出来た。
「さて、どうなるかな」
馬車の側にゆっくりと近づく昨日師匠が意識を刈り取った司祭長や神官の姿は無く、騎士達の姿も無かったが地面の一部に昨日は無かった血痕があった。
騎士が目を覚まし司祭長達を連れさったか、師匠が意識を刈り取ったのだまだ目を覚ます訳がない
聖女候補の行き先を喋らせる為に騎士達に連れて行かれたな、アレだけの人数は必要ないのだから…この血の跡は
エルゼルが帆馬車に近づくと茂みの中から2人の騎士が姿を現した。
「おいお前、命が惜しけりゃ黙って俺達に付いて来てもらおうか」
その装備は…昨日ファナに焼かれた騎士共かほんとに傷が治っているようだ…女神の奇跡か…
「嫌だね、僕は忙しいんだ」
騎士達が武器に手を掛けエルゼルに悪態をつく。
「まったく、あいつらは何しても目を覚ましやがらねえし…次はこの生意気な餓鬼だしよぉ」
「まったくだ糞暑いこんな所で糞生意気な餓鬼の相手かぁ」
子供相手と油断している騎士二人が不用意に近づいてくる。
「先に言っておくが僕は彼女みたいに甘くは無いよ」
・・・・
「さてと、ファナ達の荷物を回収するかな」
騎士達の姿は無く真新しい血痕がそこに有った。
帆馬車の中の衣類は籠から掘り出されて巻き散らかれていた。
「はぁ、どれが誰のか分からないぞこれは…全部持って行くしかないか」
籠に衣類を適当に詰め込んでいくと
「こ、これは…ミリルさんを連れて来るんだった…」
エルゼルは見ない様にそれを掴み籠に放り込む。
予想よりも多い籠の数に辟易しながら帰路に付くエルゼルであった。
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3,4月中は不定期投稿になりますが
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