「私」と温泉
しかし、お湯に浸かるだと……?
「エルゼル案内して」
「はい、師匠」
エルゼルが案内してくれた、食堂の奥の扉を潜ると少し長めの通路の奥に脱衣所があり服を入れる篭と体を拭く布が畳んで置いてある、脱衣所の広さはそこそこ広いが銭湯のような雰囲気は無いな。
「ここで服を脱いで篭に、着替えは取り敢えずこれで、扉から出て少し行くとお湯の溜まった池の様な物が有るからそこに浸かってくれればいい、少し熱いかもしれなから注意してくれ、それから…」
池の様な浸かれるお湯が在るだと…それだけで十分だ…エルゼルの説明途中から急いで服を脱いだ
「馬鹿か、僕がまだ居るだろうが!」
そう叫ぶとエルゼルが真っ赤になり逃げるように走って行った、お尻を見られたかもしれないがまぁ良い
今はそれどころでは無いのだ!
「ファナお嬢様、殿方の前で・・その・・」
ミリルさんを放置し俺は素早くで服をたたみ篭にほり込んだ。
布を掴んで外に出ると湯気が見える、間違いない温泉だ!
ペタペタと湯気に向かい走ると、
「あぁぁ温泉だぁ温泉がある!」
この世界で庶民がお風呂に浸かるとかは無い、まぁ当然だが大量の水を用意するのも井戸からだと一苦労だし沸かす為の薪とかコストが馬鹿にならないのだ、そうすると必然的に風呂など必要とされない、わずかなお湯なら夕食時の釜の余熱で沸かせるから拭くだけになる、貴族共は知らん。
思考が逸れたがまぁ良い。
岩造りの湯船の周りには石材が敷き詰められていて温泉の周囲を2メートル程の木の柵で覆っている。
洗い場のような場所に小さな桶が置いて在った、お湯を少しすくい温度を確かめると少しぬるめだが温泉に間違い無い。
プルプルと震えながら掛湯を行い、髪を布で束ねてゆっくりと足先から体を湯に沈めていく、肌がピリピリするこの感覚これだよこれ。
「あ゛あ゛あぁ…はぁぁ…気持ちいい…お湯だぁ~~温泉だぁ~~」
首元まで浸かると全身の力が抜け幸せを感じる。
湯船の中を体を浮かせながら手で底をかいて移動していく、広さも申し分ないな。
「ここから川の水を取り込んで温度調整してるのか?向こう側が排水かな」
「これがお湯を溜めた池ですか…すごいですね」
え、ミリルさん、何で一緒…ってそりゃそうか…置いてきちゃったよ
ミリルさんをできるだけ見ない様に体を流して髪を束ねてから浸かる様に説明した。
(やばい、見ちゃった、やばい、綺麗、やばい、おっきい)
鍛え上げられた体には余分な脂肪など無く出るとこは出て引っ込む所は引っ込んでるこう在りたいものですねぇ。
「ふぅ、こんな沢山のお湯に浸かるのは初めてです、気持ちいいですね」
白い肌が徐々に朱色に染まる、とても色っぽいです。
「う、うん気持ちいいよね」
お湯をすくい肩に掛ける姿が妙に色っぽい。
(うなじが…ハワワァ)
体を拭くだけだったから、小さい頃に見られた事は有っても見た事は無い
緊張の余りもじもじしているとミリルさんが寄って来て俺を抱え込んだ、
「髪の色が少し戻りましたね、良かった」
色々当たってます、胸柔らかいです、俺のは小さいんです……嘘言いました無いです。
ミリルさんの顔を見ながらアワアワと小刻みに震えると
「大丈夫ですか?」
とさらに強く抱きしめられた、あぁ幸せ過ぎる。
ミリルさんは、お湯をすくっては戻しすくっては戻しと楽しんでいる。
いつもの笑顔だこんな状況なのに…不安じゃないのかな…
「ごめんなさいミリルさん巻き混んじゃって、襲われるしいつ帰れるかも分からないし」
「そんな事は良いんです、私には家族が居ませんし心配する人は居ませんから、お嬢様の方が…」
そうだった、俺は当分両親には会えないどころか俺が生死不明で…また…
不安が無い訳じゃない。
寂しいく無い訳がない。
笑顔で送り出してくれたみんなの顔が浮かぶと涙が…ミリルさんが抱きしめながら俺の頭を撫でてくれた
溢れだした涙が嗚咽が止まらない、寂しくて悲しくて申し訳なくて泣き続けた。
どれ位泣いてたのか、いつの間にか湯船の縁にミリルさんに抱えられて座って居た。
しっかりとミリルさんに抱き着いていたらしいくミリルさんの胸に顔を埋めているのに気が付き慌てて離れた。
「ごめんなさい、ミリルさん湯冷めしちゃう…」
うあぁぁ冷静になると恥ずかしすぎる、でも抱きしめられると安心するんだよね
「大丈夫です、ファナお嬢様は抱きしめてると温かいですから」
最近泣いてばかりだミリルさんには迷惑かけてるし、でもなんでこんなに優しくしてくれるんだろ。
「ミリルさんは私と居て迷惑じゃない?私聖女でも…もうならないし」
ミリルさんは困った顔をしていた。
「迷惑なんてそんな、聖女様があんな事になってるなんて思いませんでした、私はファナお嬢様を不幸にするところでしたし…こんな事を言うといけないのでしょうが、今は妹みたいに思っています」
「妹?」
「はい、少し年の離れたかわいい妹です、すみませんこんな事失礼ですよね」
「うぅん、うれしい、妹、うん妹、ミリルお姉ちゃんありがとう」
家族と離れ離れになった俺に家族だと言ってくれるミリルさんの言葉が熱く胸に響く。
「じゃあ今から、お嬢様って呼ばないでファナって呼んでね」
ミリルさんの腕に抱き着くとミリルさんの顔がパッと笑顔になりながら真っ赤になる、
「え…あ…ファ、ファナ…」
「はい、お姉ちゃん」
満面の笑みでミリルさんを見上げると思いっきり抱き締められバシャンと湯船に倒れ込む。
頬をスリスリされ、俺の心の中の寂しさが消えていった。
「あんた達ってそういう関係なの?」
師匠がニヤニヤした口元で俺達を見ていた、ひゃぁぁ何時から見てたの?
「良いけどさぁお湯汚さないでよ?」
「汚す?え?そんなんじゃ無いです!」
両手を左右に振りミリルさんが狼狽する姿はレアだな・・・あぁプルプル眼福
「そなの?見てるからって遠慮しなくて良いんだけど、まぁ続きは夜にでも…声は抑えてね?ほらお年頃のが一人いるからさぁ」
「違うんです、勘違いなんです」
ミリルさんが泣きそうになってる可愛い…
「そなの?まぁ良いか夕飯の準備出来たからそろそろ上がってね?」
周りを見ると夕暮れよりも暗くなり始め、お月様が輝き始めていた。
軽く湯に浸かり直した俺達は建物に戻りささっと体を拭き着替えようと篭の中に着替えが入っていたが…
俺には下着が無いんですね、裾長のワンピースだけか…ミリルさんには下着があるんだが何故だ?
さっき脱いだ下着をじっと見る、一度脱いだ物をもう一度履くのもな…移動で汗かいたし…
着替えを見ていた師匠に何故下着が無いのか聞くと
「ミリルさんのは私の新品だけど、さすがに子供用は持って無いしエルゼルに下着寄こせって言ったら睨まれちゃってさ…」
カクンと肩を落とし
「服は明日にでも洗えば良いし、荷物は早朝回収させるから我慢してね」
スースーするが仕方ない我儘は言えないので一晩我慢しよう
司祭長は居ないしノーパン少女などご褒美にもなりゃしないしな。




