「私」と決断
俺は師匠とエルゼルの後をミリルさんに支えられついて行った。
司祭長に貴族達まで?魔女がこうも狙われる理由ってなんだ?
魔法使い自体が少なく珍しいからか?
女神が言っていたように戦力としてか?
使いようによっては便利だからか(青い狸猫みたいに)色々出来そうだからか?
でも普通に撃退されるってわかるだろう、俺みたいなのだって騎士を行動不能に出来るんだおかしいじゃないか。
他にも魔法使いは居るらしいしエルゼルが言ってたもう一人の魔女って師匠の事だろうし…
前を見ると俺達は森の中に出来たちょこっと広さの在る静かな草原についていた。
ここで休憩に入るらしい俺とミリルさんは小さめの倒木に腰を下ろし一息つく。
慣れない森の中の移動に魔力切れで動きの鈍い体では付いて行くだけで精一杯だ疲れた。
師匠とエルゼルは余裕そうだからゆっくりと進み俺達に気を使ってくれてたんだろう。
師匠とエルゼルも適当な倒木に腰を下ろしこっちに水の入った革袋を渡してくれた。
ミリルさんと二人のどを潤していると師匠が手を挙げた
「ちゅ~も~く、さて、もう少し進むと私の住処に着くんだけど、ここで話しとこうか」
「話ですか?」
ここまで付いて来たが何を話そうとしているのか。
師匠は少し空を見上げ小さく息を吐くと俺を指差しながら向き直った、
「あんたが狙われてる理由ともう一度考える時間をあげる」
狙われる理由なんて魔法使いだからだろ?
「私が狙われてるのは魔法使いだから?」
「ん~魔法使いと魔女とじゃかなり違うんだよね」
そう言えばエルゼルも魔女なのを自覚しろって言ってたような。
師匠は腕を組み体を左右に振り出した、落ち着きないなぁ
「魔法使いと魔女の違いってなんだと思う?」
「男性か女性か?じゃないんですか、呼び方の違いだけ?」
これ位しか思いつかないんだけど
「おし~い、はい、エルゼル君説明して頂戴」
「はい、師匠」
こいつ師匠の命令には従順だな…ハイしか言わないぞ
エルゼルは一呼吸置き
「この国の聖女という存在は今は名ばかりなんだ、長年魔法使いを輩出していない中央教会は君の…魔法使いの可能性の在る子供を増やし、王都内での女神信仰の権威を取り戻す為に聖女にして王族共に献上するつもりなんだよ、君は聖女になっても、なれなくても帰る事は出来ないだろう」
驚きの表情でミリルさんがエルゼルに問いかけた
「元から司祭長はファナお嬢様を王家に献上する為に聖女にしようとしたと?」
「そうです、彼はファナを王族に献上する気でいたのでしょう、連れて行けばどうなるかなど判り切った事ですから、今では聖女は人では無く物なんです」
俺は思わず叫びそうになる、
「危なくなれば逃げればいいだろ!魔法使いなんだしその気になれば手段はいくらでも」
「魔法使いだから逃げられるって訳でも無敵って訳でもないんだ、意識を混濁させれば魔法は使えないからね、そうなると判って居なければ出された物に口を付けるだろ?そうなったら後は…」
エルゼルが厳しい表情になり口を噤んだ。
「そう言う事だね~魔法使いを増やすにはね魔法使いと普通の女性より、魔女と魔法使いか普通の男性の方が魔力持ちが産まれ易いらしいのよね~王族の血族に魔法使いの血を得る為に死ぬまで玩具にされちゃうよ」
思わず爺共に組み伏せられる自分の姿を想像してしまった、吐き気に襲われ口元を抑えたまま身を縮める。
「ウゥ…ウェ…」
「お嬢様大丈夫ですか、ファナお嬢様はまだ…そのような話をしなくても他の言いようがあったのでは…」
リミルさんが悲しそうな顔で呟くと師匠が諭すように語る
「知っとく事が必要なのさ、ファナちゃんは普通の娘じゃ無いんだよ、魔女だと知られたら周り全てを疑わなくちゃいけなくなるんだからさ」
俺はどうしてそうなるのか分からなかった、悪寒に耐えつつ顔を上げ疑問をぶつけた。
「私が王都に行くとどうしてそうなると判るんですか?違うかもしれないし」
師匠は立ち上がり俺を見た
「私が昔にさ~聖女候補で魔女だったからかな、おだてられてホイホイついて行っちゃってさぁ大変だったのよ」
お面に隠れて表情が分からないが声に感情が無かった。
「助けてくれた人が居てさぁ正気に戻った時に逃げだしてこの森に住み着いてんの」
師匠は俺の手を取りお面の黒い眼の中からじっと見ている。
「私の所に来なさい一人でも生きて行けるようにしてあげる、決めるのはあんたよ」
そう言う事か師匠は…知ってたから俺を…でもどうやって俺の事を知ったんだろう?
「師匠はどうして私の事を知ったんですか?」
やれやれと言った感じに肩を竦めた後、俺の肩に手を置いた。
「商人達の噂話、街に行った時に小耳に挟んだの、"リガール"に"聖女"が居るってね、派手にやり過ぎ」
師匠がニヤリと笑う。
俺のせいじゃ無いんだけど説明のしようが無いし思わず頭を下げた。
「で、どうする?一緒に来る?帰る?」
「私に魔法を教えてください、お願いします」
俺は師匠を信じる事にしたそして師匠達に付いて行く。
魔女として生きて行けるようにならないといけないし何よりも両親には行方不明として心配かけるけどこのままじゃ二度と会えなくなっちゃう。
「ファナお嬢様が行くのなら私もご一緒させて下さい」
二人して頭を下げ師匠の返事を待った。
「はいはい、じゃあ決定でいいね、住処に行こうか」
また森の中を進んで行くと急に空気が変わったような感じがした。
「今変な感じしたでしょ、さっきのが結界みたいな物で私が認めた人しか入れないんだよ~便利でしょ」
師匠はそういってお道化た感じで腕を広げた、なんだか雰囲気がアルドーさんと似てるよな…大袈裟なとことかお陰で余り緊張しないで済んでるけど。
森の中道無き道を進んで行くと人の踏締めたような小道が現れた。
歩き易くなり周囲を見る余裕が出来キョロキョロしていると
「この辺りは人が立ち入らないから自然そのままさ、食べられる木の実も多いし動物も沢山居るよ~」
師匠の言葉に頷きながら思わず
「はい、師匠」
と返事をするとエルゼルに咳払いされた。
「ふふふ、いいねぇいいねぇ、かわいい子に師匠とか呼ばれるのはさぁ~」
日も傾き少しすれば夕暮れになる頃に師匠達の住処に着いた。
大きな樹の下に建てられた平屋だが何ともメルヘンチックな建物だった。
「御伽噺に出てくるような家だ…かわいい」
「遅くなったしさササッと入って頂戴」
お邪魔しますと中に入ると玄関からすぐ食堂、右手に炊事場で左奥に通路があり扉が並んでるから小部屋かな。
師匠は炊事場にエルゼルは俺達を部屋に案内してくれた、
「奥の部屋はミリルさん、その手前がファナだ、荷物は早朝に僕が回収してくるよ」
そう言うとエルゼルも炊事場に向かった、ミリルさんと二人部屋の確認に中に入ると、ベットに机、着替えを入れとく篭が幾つかあった、一人には十分な広さがある。
確認を終え食堂に向かうと夕食の材料を準備している師匠に
「二人とも少し匂うからお湯に浸かって来てねぇ~」
俺たち二人は馬車で缶詰だったからか匂う?汗臭い?少し赤くなるのは仕方ない女の子だしね!
クンクンと腕とか嗅いでみるが少し甘い匂いがするだけだが…
「わ、私でしょうか…」
ミリルさんが小さな声で恥ずかしそうに呟いた。




