「私」と司祭長
アルドーさんをこっそり見送ろうとした作戦は見事にロントにより打ち砕かれた。
いや、自爆か今回は…さてどうしたモノかと悩んでみても名案が浮かぶ訳も無く、ボーとしていると
「どうしたのファナちゃん、何か悩み事かしら」
夕食中だった、思わず手が止まっていたようだ、お母さんが俺を見ていた
「うん」
「恋の悩みかしら」
とお母さんがほほ笑むと
「な、まだ早いよ、だ、だれだいそいつは!」
とお父さんが慌てだす、いつもの夕食風景だ
「う~ん、アルドーさんの見送りに行きたいなーと」
「「残念だと思うけどダメかな」だね」
お父さんもダメなようだ、味方が居なくなったか
「アルドー兄さんも心配してしまうわ、ファナちゃんも心配掛けたくないでしょ?」
「うん」
そう言われてしまうと何も言えなくなる。
俺が外をウロウロするのは両親にも親切にして貰っている司祭長さん達にも迷惑が掛かる、俺の負担にならないように色々してくれているらしいので静かにしていようかな、それと、魔法使いエルゼルあいつもまた現れるかもしれないし。
「アルドーにはちゃんと伝えておくよ、ファナが見送りに来たがってたって」
「うん、ありがとうお父さん」
これが今生の別れでもあるまいし、うん、我慢しよう。
夕食後、片付けを手伝い両親と話をしていると、ブロルさんとミリルさんが部屋にやって来た
「夜分遅くに申し訳ありません、少しよろしいでしょうか」
両親は2人を部屋に迎え入れお茶の準備を始めると
「すぐに戻りますので、明日朝食後なのですが、司祭長がお話があるそうで頃合いを見てお迎えに上がります」
何故かミリルさんは険しい表情だった。
「分かりました、準備しておきます」
二人は用件を済ますと俺に視線を向けた
「おやすみなさい、ブロルさん、ミリルお姉さん」
二人は無言で軽く頭を下げると部屋を出た。
はて何だろ、ブロルさんはともかくミリルさんまで、身に覚えがありすぎて困る
まぁ明日になれば分かるか、だが両親の表情も少し怖い、お母さんが俺の視線に気づいたのかいつものにこやかなお母さんになった。
ちょっと気になったがお店の話や噂話なんか笑い話にして夜が更けていく。
部屋に戻り換気口に向かう、周囲を確認し外に出て、身体強化を使用し思いっきり真上にジャンプする。
足場を創りながら2度ほどジャンプし足場に座り込む、程よい風が吹き季節の暑さを忘れさせてくれる。
一人で考え込むのにはいいなぁここ
アルゼルの「立場を考えろ」と言う言葉に立場ってなんだよ?魔法使いって事か?
数日前まで俺は普通の女の子だった、友達と街中を走り回りたまに悪戯して怒られたりちょいと男の子ぽかったけどさ、今はどうだ、空高くから夜の街並みを見下ろしてる。
普通じゃないよなぁ、憧れが現実を目の前にして音を立てて崩れ出したように感じる。
「ん~嫌な予感がする、どうしよう」
『ファナさんが悩むなんて珍しいですね』
「おぅ…俺だって悩むさ色々とさぁ女神は何か知らないか?」
この後久しぶりに女神と話し込んだエルゼルの事は教えてくれなかったけど。
「え~マジで…」
はぁ俺は色々聞かなきゃ良かったと後悔した。
翌朝何時もの様に起床した、司祭長と会うので早めに朝食を取り準備を始めた。
特に気にする事も無いかと思うんだけど髪くらい梳いとくかな、長くなった髪を櫛で梳いていくが上手く出来ないでアタフタしてると、それを見ていたお母さん手伝ってくれた
「ファナちゃん髪整えてあげるわ」
慣れた手つきで櫛を使い梳き始めた。
お母さんは小さく口ずさんでいた、いつものお母さん、俺はずっと気になっていたことを聞いた。
「ねぇお母さん」
「どうしたの」
「お母さんは私の髪の事気にしないの?」
"俺は魔法使い"
ある日突然伸びた髪、色も少し赤くなり普通じゃあり得ない事だから、聞かれなかったから言わなかった。
いや、怖くて聞けなかった言えなかったんだ。
でも、お母さんは気にした様子も無く櫛を通していく、
「そうねぇこれくらいまで伸ばして欲しかったから嬉しいわ」
「そうなんだ・・・」
「ファナちゃんはもう少し女の子らしくして欲しいかな、可愛いんだから」
「うぅごめんなさい」
「ファナちゃんが何を悩んでいるか分からないけど、私達のかけがえのない娘なの」
お母さんは髪の束を幾つかつくり丁寧に編み込んでいく、俺はずっと黙ったままだった。
髪は綺麗に編み込まれて纏まっていた。
俺は知らないうちに涙が溢れていた、そして両親に魔法の事を話す決心をした。
お父さんとお母さんは俺の話を真剣に聞いてくれた、魔物に襲われてからの事、俺が大怪我をしていたという所だけ両親の表情が変わったが静かに聞いてくれた、女神の事はなぜか話せなかった、話そうとすると言葉が詰まり話せなくなったので女神の部分だけ除いた。
そして両親は俺が話し終えるまで何も言わなかった、俺が話し終わるとそっと抱きしめてくれた
「ファナが気にしていないのなら聞かないでおこうと相談していたんだが、話してくれてありがとうファナ」
「ごめんなさい、ファナちゃんがこんなに悩んでいたなんて」
俺は両親に抱きしめられながら聞いた、
「信じてくれるの?魔法使いになったって」
「ファナちゃんが魔法使いであろうと関係ないよ、二人の自慢の娘なんだから」
「そうだよファナ」
「ありがとう、お父さん、お母さん」
両親は驚いた様子も無かった、魔法が使えるとかなんて関係なかったんだね。
両親は俺が大怪我して治ったという噂を信じなかったようだ、そりゃふつう嘘だと思うだろうけど沢山の人が見てたんだ、でも、俺が何も言わないから信じようとしなかったんだろう。
話して良かった、俺の心の中にあった棘が刺さったような痛みが消えていく。
後は、司祭長との面会か~やだな~せっかく問題が解決したのに~やだなぁ~
少しすると扉をノックする音と共にミリルさんが迎えに来た、
「おはようございます、お迎えに上がりました、宜しいでしょうか」
両親がミリルさんに挨拶しやっぱり俺も一緒に面会する事になった。
司祭長の事は女神から聞いている会いたくない。
ミリルさんに案内されて向かった先は談話室だった。
扉の前にブロルさんが待ってた、その後ろに見た事の無い神官さんも居る、だれだろ
二人に挨拶し部屋の中に案内されたが、見知らぬ神官さんの視線を感じる嫌だなぁこれ
部屋の中は何時もと違い、部屋の中心に大きめのテーブルにそれを挟むようにソファがあり、上座に司祭長が座っていた、俺達が部屋に入ると立ち上がり挨拶をしてきた、
「おはようございます、ルブルさん、リナリさん、ファナお嬢さん」
ニッコリと笑顔で会釈した。
「おはようございます、本日はいったいどのようなご用件でしょうか?」
お父さんが挨拶し用件を聞こうとするとソファへと促された、
「話が長くなるかもしれませんのでどうぞお座りください」
両親と俺は司祭長の向かいのソファに座り話を聞くことになった。
ブロルさんと神官さんは司祭長の後ろに控え、ミリルさんは飲み物の用意をしていた。
「朝早くから申し訳ありませんでした、本日来て頂いたのはファナお嬢さんの事です」
きたーやっぱり俺かうぅ…
「ファナに何か?」
両親が怪訝そうな顔になる
「そうですね、何処から話せばよいか、丁度お茶の準備も出来ましたしどうぞ」
皆の前にカップが置かれていく、俺の前だけ焼き菓子があった。
「ファナお嬢さんは甘いものがお好きだとか、どうぞ美味しいですよ」
「ありがとうございます…」
俺は焼き菓子を一口かじりし皿に戻した
「お口に合いませんでしたか?」
「いえ、朝食後でその...」
「そうでしたね、ははは」
お前の考えは分ってんだよ、お菓子ぐらいでだまされないぞ!
司祭長は笑顔で俺を見ていたが眼だけは笑ってなかった。
両親の方に向き直すと、
「実はご両親にファナお嬢さんの今後の事についてご相談があります」
俺をどうするつもりだ...
「今後ですか?ファナに何かあるのですか?」
司祭長はフゥと溜息を付くと
「実はファナお嬢さんを狙う者共が現れました、このままではココに居ても守り切れるかどうか」
両親が俺を見る、俺が狙われてるだとアルゼルの事か?。
「一体誰が、どうしてファナが…」
「ファナお嬢さんが"聖女候補"であり"魔法使い"だからです」
俺は思わず司祭長を見つめてしまった
何で知ってるんだ、かも知れないじゃなくて言い切りやがった
まさかミリルさんが喋った?
そっとミリルさんを見る、ミリルさんは俯いていたが俺の視線を感じたのか顔を上げて小さく左右に顔を振った
ミリルさんじゃ無い?、じゃあ誰だ…ロントが喋る訳無いし…あー誤魔化すの苦手そうだからなぁ
「ファナが魔法使いだだなんて、誰がそんな事を」
両親にはさっき話したばかりだ、この話はショックだろうタイミング悪すぎだ
「申し訳ないと思いましたがファナお嬢さんを監視していました、色々な噂も有りましたから真偽を確かめないといけませんので」
すると後ろに控えていた神官が話し出した
「私が監視しておりました、ファナお嬢様の魔法"身体強化"の使用を確認しております」
こいつか!迂闊だったまさか監視が付いてたなんて、敷地内で使用したんだ何処からか見られててもおかしくないか。
「まさか、それを確認するためにファナをここに滞在させて居たのですか?」
お父さんが怒気をはらんだ声になる
司祭長は表情を変えない
「それは違います、純粋にファナお嬢さんの為です」
嫌~~お前に言われたくない、お前の為とか嫌~
「しかし、魔法使いであると判った以上ここでは守り切れません、そこでご両親に提案が在るのです」
司祭長は顔の前で両手を合わせ呟くようにしゃべり出した、
「ファナお嬢さんを王都"ガルドリア"にある中央教会にお連れして聖女であると認めさせるのです、そうすれば誰もファナお嬢さんに手を出せません」
中央教会、女神信仰の総本山かーでも首都とか向かうのにどれだけ掛かるんだ、40日60日?
確かめっちゃ遠いんだよ、
「私も同行いたします、護衛もこちらで準備しましょう」
え…司祭長と一緒……嫌ぁぁぁ!
両親は思慮している、だめ断ってぇぇぇ
「司祭長には申し訳ありませんが、少し考える時間を頂きたいのです、娘とも良く話てどうするか決めたいと」
司祭長はにこやかに
「それは当然でしょう、判りました明日の朝返答をお願いします」
そう言うと司祭長は立ち上がり部屋から出ていった、それを追う様に神官とブロルさんが出て行く。
ミリルさんだけが残り申し訳なさそうな顔をしていた
「ミリルさん大丈夫です、気にしないで下さい」
「監視が付いていたなんて…申し訳ありません」
ミリルさんは泣きそうな顔をしていた、俺との約束を気にしてるんだと判る。
「ファナが狙われるなんて…」
お父さんとお母さんが手を取り合っていた。
しかし、エルゼルまで?狙っていたのならこの前会った時に…違うのかな
女神から俺を狙っているのはロリコン司祭長だけと聞いていたがここまで強引に俺を旅に連れ出そうなんて、俺の貞操がやばい、どうすれば…
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天界
『ファナさんに陰謀を説明するのか面倒で司祭長をロリコンだと言っときましたが大丈夫でしょうか、これで司祭長を警戒してくれるはずなんですが』
地球から取り寄せたドラマを見ながら呟く
『ファナさん繋がりで地球の女神と親交を持ちましたが地球の技術は素晴らしいですね』
スナック菓子を片手にのんびり寛ぐ女神であった。




