「私」と夜の街
7の月も半ばを過ぎる頃
アルドーさんが女性と一緒に来た、仲間の人かな
「ういっ~すファナちゃん元気か?」
「まぁ元気?っていつもそれしか聞かないね?」
今日は神殿の中庭みたいな所に居る、かなりお願いしてやっと外出の許可が出た。
部屋の中ばかり居ると少し滅入るからね。
正式に私の警護兼話し相手に就いたミリルさんは少し離れた所に待機してくれてる。
「初めましてファナちゃん、私はルカってのよろしくね」
「初めましてファナです、よろしくお願いします」
何故かほっぺをフニフニされた、すごく嬉しそう。
「前話した、俺の嫁さん」
「え!」
思わずまじまじと見つめてしまう、ルカさんは見るからに姉御!日焼けした肌に鋭い目つき、かっこいい。
「ほんとはもっと早くに会いに来たかったんだけど、色々忙しくてね」
「アルドーさんに奥さんが居るって聞いてたけど冗談だと思ってました」
「な…俺はそんな嘘は言わねぇよ・・・」
木製のベンチに座り一息つくとルカさんが籠で持って来た果物を渡してくれた
「これ美味しいんだ、食べてみなよ」
「はい、ありがとうございます」
一口大の桃だった、こんな小さな桃ってあったっけ?食べてみると、とっても甘かった。
「ん~美味しいです!」
「そうだろ!、まだあるから沢山食べな」
ルカさんは籠ごと渡してくれたが沢山あるので、一つ摘まんでルカさんの口元に持っていくと
赤くなったルカさんがテレながら食べてくれた。
「これは、すっごく美味しいな、ハハ」
「ファナちゃん俺には?」
アルドーさんが羨ましげに見て来たのでそっと手渡した。
そうこうしながら食べているとアルドーさんがそっと俺の頭を撫でてきた、
「俺達10日後にこの街から離れる事になる、雇われてる商隊の出立が決まったんだ」
アルドーさんを見上げると何時もの様に笑顔だった、
「そうなんだ・・・」
視界がにじむ俺は悲しくなった、アルドーさん達とは当分どころか何年かは会えないだろう
「まぁ予定通りなんだが、この街に長く居たもんでちょいと寂しいよな?」
っとアルドーさんはルカさんの方を見る
「そりゃあんたは遊んでたんだからそうかもね、こっちは雇い主と話しつけたりして忙しかったんだ」
ちょっと頬を膨らせてアルドーさんを睨んでる、仲いいんだなぁ
「って事でここに来れるのも今日が最後なんだ」
そう言うとアルドーさんは俺の前に膝を付き俺の手を握ってきた
「ファナにはこれから色々あるだろうけど、がんばれよ決して諦めんな」
「うん、ありがとうアルドーさん」
俺は笑顔で答えた、アルドーさんは気付いてる、そして励ましてくれているって
「あ~こんな娘が欲しい・・・」
ルカさんがなんかぼそっと呟いた、聞こえてますよ。
アルドーさん達は出立前の準備とかで忙しくなるそうだ、長期間の移動に必要な物資の確認とか、他の仲間と移動経路の相談とかとか。
この後お店の両親に挨拶に行くと言ってた。
日が少し高くなってきた頃、2人は帰って行った、いつものように
「またな~ファナちゃん」
「またね、ファナちゃん」
と、大袈裟に手を振って。
10日後かぁ見送りに行きたいけどダメだよねぇ
そっとミリルさんを見たが眼が駄目です、と言っている…
俺の魔法の事があってからミリルさんとはよく話すようになった、でもやっぱり外に出たりするのを良く思っていないようだった。
室内に居ると身体強化しかする事が無くて…まぁいいんだけど、お陰でメキメキと能力が上がってきたのが分かるんだけど試すチャンスが無いのがねぇ、試したいんだよねぇ。
強化したままジャンプしたら予想外に飛び上がり頭頂を天井にぶつけた、あの時は首が嫌な音がして折れたかと思った。
日差しも強くなり部屋に戻ろうとしてるとロントに出会った、今日も来たのか暇か?
でもちょっと嬉しい、
「おいっすロント」と片手を上げる
「おーファナういっす」思わずハイタッチ
「ファナお嬢様…」
部屋につくとアルドーさん達から頂いた果物がまだ有ったので二人におすそ分けした、
「アルドーさん10日後に出立だって、聞いた?」
「あ~見送りに行くよ、遊んでもらってたし」
そっか見送りに行くのか、いいなぁ、そっとミリルさんを見る。
視線に気づいたのか
「ダメなんです、外出は色々と問題がありまして」
もぐもぐと食べながら言われても、しっかり残念美人さんになっちゃったなぁ、でもそう言われてるけど何が危険なんだろ?
「何が問題なんです?リガールは治安がいいし危険は無いような気がするんだけど」
ミリルさんが胸元を叩き急いで飲み込むと
「ここだけの話にして下さい、ファナお嬢様に有力者から面会の希望が多数有るのです、現在は体調不良を理由に断ってますので、その余り外には」
俺みたいな子供となんでだ?
「面会?」
「はい、聖女と噂されるファナお嬢様と親交を結びたいのでしょう」
「そうだぜ、俺もここには掃除のお手伝いをって理由でここに来てるんだ」
ロントお前…掃除してくか?
そっかまだ倒れてる事になってるのか、それに面会希望とか嫌だしなぁあんまり無理は言えないかぁ
面会に来てくれてるアルドーさん達にも口外しないように言っているとか。
仕方ない、計画を実行しよう。
昼間はじっとしてよう昼間は…夜はミリルさんも本来の仕事に戻る、夜の警護は神官戦士の方々の仕事だ、なので騒がない限り部屋には入ってこない。
何故夜かって?俺は内緒で外に出る方法を見つけたのだ、それを見つけるのに多大な代償を支払った。
主に頭突き?そう天井裏に繋がる穴だ、天井の一部が外れるのに気が付いたのだ、そして経路の確認をしながら清掃し(服が汚れるとばれるからね)とうとう外に繋がる換気口を見つけた。
後は夜になれば換気口から外に出てヒャハッーだ存分に身体強化を試そうと思う。
服はなるべく色の濃いのを選んでっと問題はこの髪だ、魔力を使うと輝きだすので夜だと目立つ間違いなく、まぁ見られなきゃいいか、うん。
ついでに当日こっそり見送りに行く為に、下見をしとこうという魂胆だ。
夕食後、早く寝ると伝え部屋に戻る、お父さんが少し寂しそうだったがごめんね。
早速屋根裏から換気口に向かい鉄枠を外す。
夜になると昼間の暑さとうって変わり少し涼しい風が吹いてる、周囲の確認ヨシ
「はぁ気持ちいなぁ、さってっと」
俺は両腕を広げ全身に魔力を通す、髪が緋色に輝きだすのを確認するがこれならそんなに目立たないかな。
地面まで4メートル程、身体強化はしている意を決して飛び降りると脚には何の衝撃も感じ無かった、
(おぉこれとんでもなく凄いんじゃ…)
今度はジャンプすると飛び降りた換気口を飛び越え屋根に飛び乗った。
(これは…忍者にでもなった気分だ…すげぇー)
忍者とか思う時点で日本人だなぁ等と思いながら暗闇の中、人目につかない様に街中に向かった。
夜の街はそんなに明るくない、宿屋や飲食店の多い入口門付近はともかく、居住区などはもう暗くなってる
久しぶりに俺は人が居ない居住区を走った、自分でも驚くぐらいの速度が出て気分か高まるのが分かる。
服はバタバタとはためき、風を切る音が聞こえる。
ジャンプし屋根の上も疾走する、屋根から屋根へまるでヒーロー系アクション映画の主人公のように
つい調子に乗り思いっきりジャンプしたのはいいが予想以上に高く飛び上がった…
「あ・・・やばいかも」
体がきりもみ状態になり天地が判らなくなる、満点の夜空と暗い街並みが交差する。
「このまま落ちたらいくら強化してるっても怪我じゃすまないようなぁーーーあぁぁ」
そして体が落下する感覚が分かる
「やばいやばい、落ちるぅぅーあ、足場、足場ぁーー」
必死に足場が欲しいと念じると半透明の赤い板が現れた、ドン!とそれに尻もちを付き、なんとか落下しないで済んだ。
「いたた・・これってこの前ミリルさんのメイスを止めたあの・・・何て名前だ・・・シールドでいいか」
よく見ると俺は空中に居た、眼下には少し小さく見える街並みが在る、シールドの上に立ち周囲を見渡す、
「はぁ~すげぇ~街があんなに小さく見える、すげぇ~」
街中に光る灯りがとても綺麗だ、少し前世を思い出す光景だった。
「しかし、俺の知ってる魔法使いとだいぶ違う、走り回ったり飛んだり」
足で足場をガンガン踏締めても消える様子は無い、ここで俺はひらめいた
足場を作りながら空中を走れるんじゃないかって、やってみよう!
俺は助走をつけ前に飛ぶようにし、落下を始める頃に足元に足場を作った、ダン!とさらに飛ぶ成功だ!
ピョンピョン飛ぶように足場を作り空中を駆けていく、まるで空を飛んでいるような気分だ
思わず笑い声が漏れる
「アハハハすげーアハハハハー」
「おい、待てそこの女」
え、声が聞こえた?誰だ、俺は後ろを振り向くとそこには一人の少年が居た。
思わず見入ってしまう、おーカッコいいなぁ、絵に描いたような王子様だ、青い瞳に少し長めの金髪、薄手の服装はありふれた物なのだがソレすら違って見える、俺より少し年上かな、普通の女の子なら一目惚れするかもな。
「お前バカか、こんな目立つ事して自分が魔法使いだとふれて回っているのか?」
少年は俺を見つめたまま聞いてきたが、いきなりバカとか酷くないか?
「夜遅いし見られて無い、大体お前誰だよ!」
少年は見るからに残念な顔をして
「見られていないと思っているのか?まぁいい、俺は"エルゼル"魔法使いだ、とっとと住処に戻れバカが」
あーこいつ口悪ィーちょっと顔が良いからって調子に乗るなよ…え、魔法使い?
「お前、いや、エルゼルって魔法使いなのか?」
「魔法使いじゃなきゃこんな所で話せると思うか?」
街の上空に二人…だよな
「今日会う気は無かったが、お前が余りにもバカな事をしていたので思わず顔を見せてしまった」
すごく悔しそうな表情だが、お前お前と...
「う~お前じゃない、同じ魔法使い、ファナだ覚えとけ!」
「同じ?違うぞファナは魔女だ、よく考えるんだな自分の立場を」
そう言うとアルゼルは何処かへ空を駆けて行った。
「なんなんだよアイツは、でも初めて自分以外の魔法使いに会ったんだ...が、最悪だ
そうしていると髪の輝きが小さくなってきたので部屋に戻ることにしが時間にすれば1時間も無かったが、
このところ外で遊べなかった俺にはいい気分転換になったのに、あいつにさえ合わなければ
建物から離れた所でシールドを螺旋状に並べ階段を下る様に降りてきた、そして身を隠しながら換気口へ飛び込み部屋に戻る、しかし警備ザルじゃないか、警備の人誰も見なかったぞ…まぁいいか
身体強化の効果に興奮した心を落ち着かせるように深呼吸しベットに潜り込んだ。
エルゼルの言葉を思い出す、
「俺の立場?魔女、わかんないよ、寝よ寝よ」
ベッドの中で夜の散歩を思い出すと自然に笑みがこぼれ、ドキドキ、ニヤニヤしてしまう。
今度は何を試そうか、そんな事を考えながら眠りについた。
朝、少し寝不足になりフラフラしながら朝食に向かう、今日は女神への祈りは中止だ、
『来なくていいです』
(遠慮しなくていいんだよ?)
朝食を済ませ両親を見送り部屋に戻ってウトウトしているとミリルさんが心配そうに部屋を訪れた、
「大丈夫ですか?ファナお嬢様、体調が悪いのでしたら薬を用意しますが」
う、心配させてしまった、夜遊びしてたとか言えないし
「大丈夫です、少し寝不足なだけで、ありがとう」
ミリルさんと他愛の無い会話をしていると、ドアをノックする音がし奴が現れた
「ういっーすファナ居る?」ロントだ
ミリルさんが立ち上がりロントを連れて来てくれた。
ロントは開口一番、今朝街中に広がってる噂話を話し始めた、
「昨日の晩、お化けが出たんだって、結構沢山の人が見てるから本物だぜ絶対!」
「お化け?」
また何言ってんだ?絶対!お化けとか、魔物だけで十分だよ、胡散臭げに聞いていると
「うん、街の空を生首が飛んでたんだって、すげーよな、俺も見たかった~」
「・・・生首」
「しかも、変な笑い声まで出して飛んでたって言ってたぞ」
俺思わず窓の外を見る。
ぶふぅ・・・そんなに見られてたのか、あいつの言う通りか…多分じゃなくて俺だよね高さが有ったのと髪の輝きで首から上だけ…確かに笑ったけど変とか…変かな
そっとミリルさんを見るとまさかッて顔でこっち見てた
思わず首を思いっきり左右に振り誤魔化したが間違いなく疑われた。
うぅ楽しみが消えた…ロントめ…
エルゼルの言った通り目立ってたみたいだし身体強化は大体分かったから、今度は魔法の練習かな。
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司祭長の執務室
そこには椅子に腰掛ける司祭長グラルトと一人の神官が居た
司祭長は長い髪を後ろに束ね、まだ若く精鍛な顔立ちをしていた。
神官が司祭長に本日の報告と間者からの伝書鳩による簡単な報告がなされていた。
「昨日聖女候補に接触した者は、冒険者2名と友人の少年です、その他には、夜間に部屋より外に出かけられたようです」
司祭長は神官長に聞き返す
「夜間に外出か?」
「はい、街中に向かったようです」
「そうか、確認できたのだな」
「"身体強化"の使用を確認しました、間違いありません、聖女候補は"魔女"です」
「ふふ、そうか、さらに監視を続けろ、貴族共には健康状態が悪いとでも言って決して面会はさせるな」
「それと間者からの報告ですが、一部貴族が聖女候補に接触または捕獲に動き出しているようです」
「ふむ、では計画を早めるとしよう、明日聖女候補に会う事とする」
「そのように準備致します、では、失礼いたします」
神官が部屋を退出し気配が消えた、司祭長が我慢しきれないように笑いだす
「フハハハ、そうかそうか、魔女か、後はあの娘を懐柔し王族に献上すれば、私をこんな僻地に追いやった老人共に・・・」
その顔が醜く歪む。




