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新章魔王勇者編 第9話

つ・い・に主役参上。

勇者が腰だめから剣を振るうと、地を這う炎が魔王を襲った。魔王の真下に来たとき業火は天を焦がす。

<見かけ倒しか>

「見かけだけかどうかは上を見ていうんだね。」

そういって上を見ると、触角が1本溶けていた。

<貴様ぁっ>

そういって氷の散弾を飛ばすが、先ほどまで全く反応しなかった胸飾りの青い宝玉が淡く輝き氷がアーサーに当たる前にはじけ飛ぶ。

魔王は何度も散弾を撃つが、  ただの一つも当たらない。それどころか反射した氷が彼女のもう1本の触角も割った。

「戦っているのは僕だけじゃない。僕の後ろにオンディーヌが、姉さんが、ランスロットが、ガウェインが、

王国の皆が、悪い人たちだけど研究所の人たちもいる。」

<調子に乗るなよ。力の差をはき違えるな。>

「解かってる。人は弱いよ。でもだからこそ強くなれるんだ。火竜だって僕を認めてくれた。」

<火竜?ふははは、それは火竜の力か。     火竜なら、遥か昔に我が母が倒した程度の者だ>

「母が倒した、ね。  で?あんたはどうなんだ?僕を倒せるのかい?」


それは心理学者が見ればコンプレックスだったのかもしれない。

彼女は母に似ていた。それ故に母と比べることも比べられることも多々あった。

それは誇りだった。それは祝福だった。――――それは、ある意味で呪いだった。


魔王はぞっとした。敬愛する母を呪う自分に。あまりの苦しさに憤死しそうになる。しかし、


しかしそれは、目の前の『人造勇者』を倒してからだ。倒してから、母に頸を奉げよう。

魔王は激昂する。しかし勇者は流水のように静かな顔をしている。

勇者の周りを再び劫火が発生した。雲にまで届く炎は文字通り天を焦がしている。

明らかにその力は火竜を凌駕している。


勇者の体に淡い光が重なる。

空から星の光が魔王を撃ち抜いた。


勇者の体が淡い光が重なる。

勇者は魔王を殴り飛ばした。


勇者の背に炎の翼が顕現した。勇者はその背の翼で高みに舞い、剣を眼下の魔王に向ける。

魔王にはその姿が火竜そのものに見えた。

しかし私だってヴェスパ。名高き神祖デュカリス=スペルヴィアの娘だ。

お母様がなせたことだ。ずっとその後ろを歩んできた自分に踏破できぬ道ではない。


~我が母が黄衣を着せよう。~


魔王の色が黄色く染まる。それは王族種には知られている戦闘形態。

しかし、まだだ、まださらなる高みへ


かつてお母様は話してくれた。多くの獲物を狩りその血を浴びてきた我らには、その血の色に相応しい力があると。

その身体は更に紅く染まる。そして赤黒く染まった。その姿は周りの蜂たちの誰も見たこともない伝説の戦闘形態。

蜂たちは驚愕する。魔王の大いなる力に。

蜂たちは歓喜する。為るであろう魔王の勝利に。

蜂たちは狂喜する。おこるであろう勇者の無残な死に。


天の勇者が、地の魔王が、両者が激突する。――――突如その間に現れた巨大な氷壁に。






「決着をつけようとする両者を止めるのは、確かお前の姉の結婚式以来だな。」



「お、お母様。もう目覚められていたのですね。」

「もうもなにも、そもそもそのためのお祭りでしょう?」

「はい。    その前に詫びせねばならぬことが。私はお母様のことを――」

「よい。不問とする。」

「しかしっ、」

「かつてお前はメリッサの血を継ぐ者の無礼を赦しただろう。それと同じだ」

「それを、どこで」

「私もただ眠って何もしていないというわけじゃないんですよ。」

「お母様。」

「おはよう、私の可愛いアリス。」




アレはなんだ。なんなんだ一体。先程まで魔王と雌雄を決してたはずだ。だがあれはなんだ?

ただの魔王なら倒せたかもしれない。しかしアレは存在そのものが倒せるとかそういう次元ではない。

今までいたのが魔王なら、アレは、アレは アレは魔王の中の魔王   ―――――大魔王


足が竦む。体が凍える。気持ちは逃げたい逃げたいと連呼するが、身体が動かない。

そんな中、その悍ましい存在から僕に呼びかける声が聞こえた。



<逃げようだなんて思うなよ、古来から言うだろう。知っているか?『大魔王からは逃げられない。』>

無償の愛と愛故の盲目は境界が難しい。

結論 デュカリスは親馬鹿

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