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新章魔王勇者編 第8話

BGM 輪舞REVOLUTION

仲間に背を押されて勇者は魔王と対峙する。


「皆の者、この者達に手を出すなよ?」

恐らく魔王はそんなことを言ったのだろう。少年と少女に周囲の蜂たちは何もしない。

<よく来た『人の希望』よ、招いてもないのにご苦労なことだな。お前たちは知らぬだろうが

ここは舞踏会場だ。せっかくなんだ踊っていくがよい。>

「ふざけるな。」

<なに、踊るのが嫌なら、踊らせてやろう。――――無理やりにでもな。>


そういって魔王は氷針を彼らの足元に飛ばす。よけるのには十分な遅さだが、よけなければ足とはお別れになる。

<ははははは、いいぞ、なんだ踊れるではないか。次はタンゴのリズムだ>

より多くの、より早くなった氷針が飛んでくる。避けきれなくなった人魚の少女の脚に赤い筋が走る。


魔法で姿を変えた足を痛め、人魚の尾に変わる。それでもなお飛んでくる氷針はもはや足ではない箇所を狙っている。

「やめろっ」

勇者の振るう炎剣が死の針を阻む。

<なるほど、その『足』手纏いを殺しても面白いだろうが、こちらにも趣向があるのでな。

おい娘、下がっていていいぞ。>

「オンディーヌ、下がっててくれ。」

「…………、はい。」

「安心しててくれ、君の分も、僕が此奴を倒して見せる。」

「はいっ」

<我を倒すか、ふはは、ブラックジョークにも過ぎるぞ。よい、哂わせてくれた褒美だ。

一曲輪舞をお相手しよう。  曲名は、―――――『魔王』だ>




そういうと、魔王の姿が霞む。本当に姿が消えかかったわけではない。それはたなびく氷の霧だ。



~我が子よ、なぜ脅え顔を隠すのだ。父よあの魔王の姿が見えないのですか?冠をかぶり、裾を引く姿を。

我が子よそれは霧がたなびくだけだ~




咄嗟に彼我の距離感がわからなくなった勇者は、軽やかに舞う魔王の翅に体を刻まれる。

<おいおい、ステップが疎かだぞ?>


~可愛い子よ来るが良い。供に往こう。遊ぶのは愉しいぞ。色とりどりの花が岸辺に咲き我が母が黄衣を着せよう。~



次に綺麗な氷華が降ってきた。しかしよく言われる話だ。『綺麗な花にはトゲがある』

勇者に触れた氷華はその、極冷を持って紅い華を咲かせる。


~父よ聞こえないのですか?魔王の囁きを。落ち着くのだ我が子よ、あれは葉が風にそよぐ音だ。~

~可愛い子よ来るのだ。我が娘らが愉しくもてなそう。愉しむのだ、魔王の娘が踊り唄うのを。~



魔王が翅を震わせ唄う。しかし何も聞こえない。そう思った次の瞬間勇者の鼓膜が血を吹いた。


<なんだ、踊らせ概のない。もう良い、最後にしよう。閉幕だ。>



~父は馬を奔らせる。呻く子を腕に抱え。ようやく屋敷に辿り着いたとき、―――子は冷たくなっていた。~



勇者の上空から霜のリングが降りてくる。

アレはいけないものだ。アレは捕まったら死ぬ。そう思いながらも体は動かない。

「アーサー死なないで」

背後より愛しい少女の声がした。再び少年の心に熱がともり、熱が火種となり炎へ、炎が強まり劫火へと変わる。事象を伴って。

それは因子の覚醒。それは一方通行の『造られた勇者』の使い道。それは、古の火竜の咆哮。


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!」

悲しき勇者は咆哮する。この身が化け物へ変わることではない。火竜の力に少女への想いが塗りつぶされてしまうことに、だ。

「お”お”俺に”ぃ従え火”竜!!!!!!!!」

勇者を包んだ業火がひときわ高く天を焦がし、   霧散した。中にいる『少年』を残して。


造られた勇者が覚醒する。

「舞台の幕を降ろすにはまだ、早すぎるよ」

次回   冷たき魔王と熱き勇者

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