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新章魔王勇者編 第1話

連合国歴1271年 各地の魔王の暴虐にに苦しめられた人型の種族たちは対抗するために団結して千年以上が過ぎ、その時々の巫女の神託の元

幾たびの敗戦の中一向に戦果が上がらないものの、領地と誇りを取り戻すためヒト族の王族にして勇者アーサーを中心に第9代魔王討伐隊が編成された。

今回の討伐対象は流氷雀蜂の女王コキュートスヴェスパ。極北の海で生活しているものなら屈強な男でも震え上がる最強の魔王である。



焉神の月 24日   氷結地獄付近海上

「ま~ったく、さ~っきから船に飛び込んできやがるセイバーフィッシュの相手ば~っかりだぁ。まぁ~ったく。なんだったけぇ、

魔王ってでっかい魚かなんかだったっけ?」

そう毛深く大柄な100人が100人男らしいというだろう容貌の獣人の男が酒瓶を片手に酔いながらも海面から飛び出してきたセイバーフィッシュを

手斧で違えることなく両断していく。


「やれやれ教養が足りませんね。まったくはどっちですか。南方に住んでるとはいえ、これだから脳筋は。星書には氷結地獄を統べるは

傲慢なる厄災。其の者は氷の体と12の翼を持った蜂の姿であると書かれているのですが、読んだことはおありではないようですね。」

答えるは、100人が100人美しいというだろう鳥人の美男子。彼もまた後ろから飛び掛かってきたセイバーフィッシュを振り向くことなく、

魔力を纏わせた剣で切り捨てる。この船に乗っているのはほぼ全員が名の知れ渡ったギルド認定Sランクの猛者たちである。


「なんだとぉ、このぉ女みてぇな顔しやがって。」

「やるんですか、いいでしょう受けて立ちますよ?」


「やめないか ガウェイン ランスロット。」

いきり立つ2人をそう言って中性的で優しそうな青年が止める。


「わ~ったよぉ、でもよぉ、アーサーも女侍らせながらいわれてもなぁ。」

「えぇ、美しいレディに罪はありませんが見せつけられるのも少し腹正しいですね。」


「…侍ら…見せつ………(赤面)」

「お前ら本当は凄ぇ仲いいだろ」

「何を今更、コイツとはガキの頃からの腐れ縁だ。」

「えぇ、残念なことに幼馴染だってのはアーサーにも以前話したでしょう?」

下から順にランスロット、ガウェイン、そして勇者アーサー。いずれも名高い英傑である。そして一番上にいるのが今討伐隊の数少ない非戦闘員、

この付近に住んでたという案内役の人魚のオンディーヌ。


「そういやぁ、話ぁもどるんだけどよぉ、その蜂の親玉ってえのはそんなにつぇえもんなのかよ?前に俺たちデザートアーピスの巣も、

海のなんだっけえぇとらぐ~る?らぐ~?」

「ラグーンヴェスパだったでしょう。」

「おうそれだそれ、そのらぐー何とかの巣も攻略したんだぜ?」

「あなたは解かっていないんです。魔王の恐ろしさを」

「うるせぇ、この魚女っ。戦ったこともないような御嬢さんが口出してんじゃねぇっ!!どうせその話も他人から聞いた話だろうよ」

「ガウェインッッ!!!」「ガウェイン?レディに言いすぎでしょう。」

「わーったよわーった。わりぃわりぃ。でもまぁお前ら二人ともホント女には優しいなぁ。」

「そうかな」

「それは当然でしょう。あなたのいうことも一理ありますが、レディには優しくしないと。」

「まぁ~いい。伝聞だろうと参考くらいにゃならぁ。おい、話してみろよ。」

「あっはい。」

「っっっ!!!!!」

「どうしたよランス?」

「まさかあなたから、そんな参考だなんて言葉が聞けるだなんて…、いつから頭が使えるようになってたんですか?」

「…おい、ぶっとばすぞ。」

「まぁ、落ち着いてください。ところで御嬢さんお話を聞かせてもらっていただけませんか?」

「露骨に話逸らしやがったな、この鳥野郎。」


「それは、遥か昔。凍れる神樹が成る前のことといわれています。「おいおい、そんなに昔かよ。もう神話じゃねぇか。」「ガウェイン、レディの話には口を挟まないものですよ」

あの、質問とかあったらその場で言ってもらっていいですよ?「あっ、うん」「じゃあそん時は遠慮なく」「お気遣いありがとうございます」

かつて、人魚の祖先たちは暖かい海から生まれたと聞いています。とても深い海の裂け目の近くのまだ浅いところに古代の王国があったそうです。

しかし、その王国はたびたび恐ろしい魔物に脅かされていました。それは「…シーヴェスパか」ええそうです。「おい、たしかそれってラグーンヴェスパの亜種だろ?」

「厳密にはラグーンヴェスパの方が亜種らしいですけどね」あっ、私もそうだと思います。

それでですね、あるとき苦しむ民衆の声に見かねた王様がシーヴェスパの巣に襲撃をかけたんです。本家の巣に。「本家っ!?」「おいそりゃあやべぇってもんじゃないだろう。」

「近くにあった巣が本家の巣であったのが王国最大の不幸、というわけですね。」えぇ。当時ご先祖様たちには守護を司る一組の番の水龍がいたといいます。

「水龍が守護たぁ、ますます神話だなぁ」その水龍の力を得て甚大な被害を受けたもののシーヴェスパ本家の巣も壊滅にまで追い込んだらしいです。

しかし、女王蜂が死した後もその巣には最大の切り札がまだ残されておりました。「話の流れからすると、そいつが例の魔王ってかい?」

「ガウェインッ、いつからあなたはそんなに頭の使える子に…」「おい、マジで船から突き落とすぞ」「二人ともいい加減やめろよ」

ガウェイン様のいうとおりです。本家の巣に永きに渡り封印されていた大女王。魔王コキュートスヴェスパ。伝承によるとそのころはまだ、シーヴェスパであったようです。

巣の危機に呼応したのか大女王は目覚めました。それからしばらくして、再興した古代の王国は一夜にして崩壊しました。「おいおい、水龍は何してたんだよ。」

「たまたま寝てたんじゃないですか?」「流石に水龍が2匹もいて…」水龍の1匹は一撃のもと斃れ、もう1匹は悪しき力により悍ましい怪物に変えられてしまったという話です。

「ヤバすぎだろうがよ、おいっ。」「洒落になりませんね」「……『竜』の力が通用しない?」」しかし、それでも王族を中心とした一部の者は隠されて助かり、

再び今度は北の方で王国を作ったそうです。それからも何度か王国の位置も変わります。それは人の業とも言えますがその話はさておき、

それから更に再び長い年月が経った時、王族の血を継ぐ女性が、婚約者と結婚式を挙げる前に一人の男と駆け落ちしようとしました。「略奪愛というやつですか。」

「お前が言うとなんだか洒落にならん気がする。あまり口にすんな。」……あはは、その、それでですね?途中まではよかったんです。今でいう国や村などをモンスターから

守る結界の元になったともいわれる宝珠と神槍を二人は持っていましたから。しかしその便利さを自身の力と履き違え奢っていくようになった男は、姿を隠さず泳ぐことを

するようになり、ついには氷身十二翼の蜂の魔王に見つかってしまったのです。その魔王の姿に見惚れた男は頭から貪られ、女性は無事帰ったものの精神を病んだそうです。

その女性が私の遠い先祖ということが昔、家の図書室にて読んだ話です。そして、別の書物にはその続きが書いてあって、っといっても翻訳書なんですが。

原本、って言ってもそれすらも写本らしいですが、解読は非常に難しくて、しかも読んだ人が発狂したり変死したりしているので厳重に保管されて読ませてはもらえないんです。

「ってそれ魔導書じゃねーか。」「禁忌クラス…」「………読もうとするなよ。」続きとしては、どうやら神樹は魔王が凍らせたものらしいということも書いてあったんです。

以上で私の話は終わりです。

そういえばどうして、わざわざいきなり最強の魔王が此度の最初の討伐対象なんでしょう?」

「…………」

「がはははは、それはまぁアレだアレ。なんというか……俺様にもさっぱりわからんっ!!」


「なんだよそれ。ははははは。」

「やっぱり脳筋は脳筋ですね。(その理由は、あなた(ゆうしゃ)が使い捨てだから、なんて言えるわけないじゃないですか。)」

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