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氷化

わたし、木になります

かつて、北の海は氷に閉ざされておらず暖かな海に囲まれた島があった。

その島のほかには島といえる島は存在せず、宇宙から見ればその島だけが緑色であった。

その島は海浜植物。特にハマヒルガオが豊富であった。兄弟星バグズの介入による拒絶反応による多くの生物のモンスター化の後も

その島の植物の中でもっとも繁栄していたのはヒルガオ系モンスターであった。ただしあくまで植物の中ではという但し書きが付くが。


植物系モンスターは成長速度が衰えにくく長い年月をかけると強大になる。最悪獲物が無くても育つ。繁殖力が高い。生命力が高い、等の利点を持つが、

如何せん生まれたばかりの個体は  弱い  非常に弱いことが多く。多くの食物連鎖の下位にいる。

そのうえ、成長した個体であっても厄介なことに蝶など昆虫系モンスターは対植物に非常に優位なものが多い。

むしゃむしゃとエサとして食われ続け毒を作り出した植物にもしっかり耐性を作り食べにくる。まさに昆虫は恐怖そのものであった。


そんな島で、1つのヒルガオ系モンスターが芽生えた。



ダチュランチュラ Lv1  RANK E+

安住の地を求め根を使い蜘蛛のようにはい回る植物族モンスター。低位モンスターにもかかわらず

致死性こそないが非常に強力な幻覚作用をもたらす毒が充満している。喰らったものは耐性がなければ、

少量で3日3晩頭パーになっているのでそのうちに逃げる。


森熊のモンスターの幼体が襲ってきた。それなりに逃げようと思えばできるが敢えて少し齧らせる。すると、

「わぉぉーんいぉーーん  くんん  GRRUOOOON!!!」

(意訳はぁ~ちみ~つお~いしぃ~なぁ~、うんエチケット的に植物で口拭こうかな。………おいそこのザコ豚ぁてめぇの蜂蜜もよこせやぁ、オラァッ エェコラァッッ!!!!」)


蝶系モンスターの幼虫に襲われそうになった。もう、ダッシュ。ていうか猛ダッシュ。喰われる。喰われる。まだ、サラダにはなりたくなぃぃっ!!!

シャカシャカ無数の脚を這わせて全力で逃げる。逃げるったら逃げる。プライド?そんなもので養分は食えません。THE RUN AWAY

虫いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。



まぁ、これくらいには植物は虫が、大、大、大、大嫌いなのである。

虫から逃げて3千里って程も逃げてはないがそれなりに逃げていると、丘の上で小さな爬虫類が眠っているのを発見した。スゥ~と近づいて一気に飛び掛かる。

その根を一斉に絡めて身動きを取れなくした時、目を覚ました爬虫類は必死の抵抗を始めるがもう遅い。目に根を突っ込み痛みで口をあけたとき、

何本かの根を口の中に潜り込ませ、無理やり消化させる。毒でキチガイ状態になった爬虫類は暴れるが更に長く多く根を生成し絡みつかせ、多く毒も生成する。

動きを封じた上で皮膚に根を差し込んで毒を注入したり、絡みついた根そのもので締め付けたりしていると、半日の後爬虫類は動かなくなった。


その爬虫類を養分とし、ダチュランチュラは育った。今迄にも何匹が獲物を食したせいか、遂に進化の時を迎えた。

 進化先の条件を満たしたものに以下のものがあります。

  →コオニヒルガオ

  →プチデビルズトランペット

  →マンドラゴラ

  →マッドナスビ

  →ビッグダチュランチュラ

  →???

  →???

  →???

  →???


???に若干の魅力を感じなくもないがどんなものかわからない以上、ここはこの島で勢力に定評のある

『コオニヒルガオ』

にダチュランチュラは進化することにした。右に倣えの精神である。まぁ実際、この島が、基本砂浜で構成されているという点からすると、

海浜植物の方向に進化したことはあながち間違っているともいえない。


 たまたまこの島の一番高いところで根を張って陣取ったため日の光を最大限に受けられる。また、目立ちすぎて捕食者に狙われるためか、

草食のモンスターはなぜかそうこない。そんなわけでダチュランチュラ改めコオニヒルガオはまだ消化されきっていない。例の爬虫類を苗床にしつつ、

すくすくと成長していった。成長する中で、いくつか他のモンスターと遭遇することがあったがうまく毒の花粉などを使い倒し養分とした。

途中見たことのない種のイモムシに齧られたがうまく追い払えた。どうやらイモムシ型のくせに『対植物大』等の優位スキルを持っていなかったようで

戦えば勝てたのにと後で後悔した。往々にしてやらなかったことへの後悔は根を引くことになる。

コオニヒルガオからオニヒルガオに進化したとき、新たな天敵が現れた。

ヴェスパである。


オニヒルガオから更にオオオニヒルガオに進化し、周囲に地下茎でつながった眷属のオニヒルガオを増やし群集地帯を生成するまでに至った頃、

ヴェスパは通常オニヒルガオを食べる種ではないものの急にオニヒルガオを食べ始めるようになった。植物系モンスターに対する優位こそ持っていないが、

その戦闘性能は破格。非常に厄介な敵であった。コオニヒルガオは知らない話だが、事情により巣から離されることとなり、1匹で餌をとらなくてはならなくなった

ヴェスパ姫種の幼虫がおり、その幼虫が長らえて巣に戻り新たな女王となった際、その仔らに食料の一つとして示されたのが植物類である。

もし、最初の原因を殺しておけば違ったのかもしれないがそうしなかったためにのちのちヴェスパに食まれ続けることとなる。


それからしばらく経ち、巷ではどうやら熊のモンスターが暴れまわっているらしいがここらには来たことはない。

熊といえば昔、今まで見た中でもTOP5に入るキメっぷりをみせたあの熊の子供はどうしてるだろうか?

長い年月をかけ若干の知性をつけたオオオニヒルガオがそんなことを考えたかどうかわからないが、

その熊の仔の話が無くなった頃、今度はヴェスパだけでなく、翅を無くしたヴェスパに似たような何かにもオニヒルガオは狙われるようになる。

むしろ、その翅無しの方が来る機会が多い。しかも植物に対してのある程度の優位スキルがあることも増え、

オオオニヒルガオが噂の熊がいるならそいつがこいつらをやっつけてくれと1回くらい思ったのは、

たぶん間違いない。


長く生きていると、オオオニヒルガオもどんどん力をつけるようになった。そんな中、もう何代目になるか判らないが翅無しの女王が戦争を仕掛けてきた。

戦争の目的は、広がりすぎたオニヒルガオ群生地の縮小、管理。オオオニヒルガオが生きている限り、同群生地のオニヒルガオが倒されても、

ストックの分だけ地下茎上から再生できる。

また、そのオオオニヒルガオの強さによって補正をうけるオニヒルガオの群生をあまりにも広がりすぎて危険だと判断した翅無し、

『蟻種』の女王はこの際に狩って狩って狩りつくしストックも消費させ、弱体化させた群生地を定期的な食事場にし管理下に置こうとした。


群体と、群体。2つの群体が戦えばそれはすなわち戦争である。ここに戦争の火ぶたが切って落とされた。

当初オニヒルガオは若干優勢であった。しかしそれは当初のみの話である。途中から翅あり、昆虫族最強種『ヴェスパ』が参戦してきた。

当然、かつて祖が姉妹であったとされる蟻の側へ。

先程の優勢が嘘であったように、どんどん領地であり自らの体が侵略され包囲網が狭まる。もはやストックが追いつかなくなって来るのは目に見えている。


オオオニヒルガオは意を決した。遂に自ら指揮官ではなく戦士として戦おうと。

自らと根により繋がっている眷属全てを吸収する。中心から離れた眷属は一斉に枯れて萎み、新たに周囲に高密度に生やす。

密集したオニヒルガオの『群体』はオオオニヒルガオを中心に互いに互いの体を添え木とし、捻じれながら空へと登り新たな『個体』となった。顕われたのは、


領民全てを飲み込んだ孤高の王   タバナルタイジュ RANK A+++


多数の獲物を管理し、農場のようなものを作ろうとした蟻の女王は遂に管理不能な魔物を創り出してしまった。






まぁ、だからどうってことはないのですけどね、動けない相手には近づかなければいいだけなのですから。そういったのは蜂の女王だったのか蟻の女王だったのか

判らないが、島全てを覆う勢いであった群生地を食い止めるという目標には達成できたので、虫たちは解散していった。


眷属とはいえ多数の意識と融合したためかもともと意識が薄弱だったためか、大樹は基本ボケーッとしており、思い出したかのように近くに虫がいれば、

ツタを伸ばし叩き潰したりなどした。

更に永い年月がたち、枝は空の上に根は地の底へ伸び、高い魔力と確かな意思を持ち始め大樹は神樹になった頃、例の蟻や蜂たちの一族は寒冷化による大地の氷結の為か、

もう島には見当たらなかった。






そんな中、1匹の女王蜂がやってきた。

「こんなところに大きな木がありましたっけ?…時代を感じますね。 そうだ、これを私の権威の象徴にしましょうか。デュカリスタワー。な~んて、センスないでしょうか?」


虫がなにを言ってるのか大樹には全然わからないが、とりあえず叩き潰す。枝をツタを一斉に振るうが、そのすべてが近づいただけで凍っていく。

えぇ、え、え、え、ぇぇぇぇ?せっかく得た高い知性は恐怖と混乱と、絶望しか演算せず、そんな神樹を嘲笑うかのようにその蜂は尾針を当てると、瞬く間に氷の巨塔となった。






神樹は神の名と体を残しながら、その魂は消し飛ばされた。もっとも、そのことが後に『大神災』を呼ぶのだが、それは別の話。

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