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The end of revenge

 デュカリスは全身を透明な淡い蒼から黄色に変える。完全な戦闘態勢だ。

奴はかつては母たちをまとめて相手をして勝った存在。

 生半可な力では到底勝ち目はない。故に――


<最初からクライマックスだ。母に代わり、その心臓、貰い受ける。>


 急激に周囲の温度が摂氏-100度をきる。周囲の白熊たちが次々と昏睡しているが、

そんなことを気に掛ける2匹ではない。


 先に動いたのはデュカリスであった。超々高速飛翔からの翅、脚、顎、針による切断、引き裂き、断裂、そして刺突。

怒涛のラッシュであったが、いずれもプースリーに傷を負わせるには至らない。可能性があるのは尾針ぐらいで

その他は強度的にも足りなさすぎる。だからといって針から凍霧を噴霧してもその対冷耐性能力の前では意味を持たない。

それでも、やめるわけにはいかない、恐らく現在生存する母の仔の内最強である私が倒さなくてはもう、後がないからだ。

重厚な毛皮と硬い皮膚の前では執拗な攻撃の内せいぜいその効果は針が引っ掻き傷を作るくらいであった。


<用は済んだか?虫ケラ>

そういうとプースリーはその剛腕を振るった。


 デュカリス自身は冷静なつもりでも意識が完全に攻撃にシフトしており回避が遅れた。彼女の名誉のために付け加えておくと、

プースリーの腕を振るう速度は尋常でない速さでもあった。

回避し損ねたデュカリスの頸から腹にかけてを大きく切り裂いたが、デュカリスも傷をすぐ再生させる。


 再生の後に再度攻撃に移るが効果は薄く、逆にプースリーの攻撃はデュカリスの体を大破させる。効果が薄かったためだろうか、

何を思ったかデュカリスはおもむろに足場に針を叩きつける。海の上に浮かぶ氷の大地は砕け海の中に飛び込んだデュカリスの挑発に乗り、

プースリーも海に飛び込む。戦いの場は海へと変わる。


 海の中で海面からにらむデュカリスと海底近くで構えるプースリー。デュカリスは針から水中で次々と氷柱を発生させる。

凍結温度の低く比重の想い液体を強烈に冷やして引き起こす現象。死の氷柱(ブライニクル)本来の現象よりも遥かに温度の低く、

水流操作により方向が下に固定されない。デュカリスの新たな力、死の氷柱はさながら新たな針といったところであろうか、

戦いに巻き込まれた哀れな海の住人達が白き死に触れた瞬間氷結していく。更に狙いを外し海底に落ちた死の針たちは海底一面を白く染め上げる。


 しかしその針さえ通じることはなかったブライニクルを受けてなおそのまま突撃してきたプースリーの顎に加えられ再び陸上に引きずりあげた。

引きずりあげたデュカリスを張り倒し離れた氷山にまで叩きつける。


<虫如きが我に逆らうなど笑止千万。貴様らはただ蜜をつくり、我の糧になっていればよかったのだ。>

<っ、……………宣言しよう――>


 流石に実際に対峙してみてプースリーの戦闘能力を大幅に上昇修正させたデュカリスは無傷で勝てるとはもう考えておらず、

再生が容易な身体を利用した特攻を考えていた。すなわち、反撃覚悟で強烈な一撃を加えるということ。

尾針の周囲の水分を凍らせて針をより巨大にする。自身を攻撃方法の為に改変するその姿は、

かつて、プースリーに唯一にして強烈な苦痛を与えた、とあるハチの姿を思い起こさせた。


<――ヴェスパの針が貴様を殺す>

それは、単純には現状有効な攻撃手段が尾針しかないということではない。

かつて、一度だけプースリーを刺し貫き、しかしその息の根を止めるには至らなかった母の意思を継ぐということだ。


<そうか思い出したぞ。この我に傷を負わせたあの虫の仔か。くくく、ぐはははは蜂を喰らうのは久しぶりだ

我に苦痛を味あわせた母親の罪は娘に償ってもらうことにしよう。そういえば貴様の母の針も結局我を殺すには至らなかったな。貴様もせいぜい足掻くがいい。>


 デュカリスは再びプースリーの心臓めがけて飛翔する。相手のカウンターを誘発できるぎりぎりの速度での飛翔からの、

目前での2段階急加速。当初デュカリスが抑えめの速度で飛翔していた為、なまじ相手の動きを読めたと思いカウンターの為に

腕を大きく開いたその無防備な胸に氷の槍が突き刺さる―――はずであった。硬く厚い毛皮に阻まれ心臓を突き刺すまでには至らなかった。

しかしまだ終わらない。蜂の針は貫くためだけに非ず。そのあとの毒が待っているのだから。

ブライニクルヴェスパの針からは猛毒こそは出ないが代わりに冷凍液が出る。

零距離から放たれる死の冷気がプースリーの体を冷やし、いずれはその心臓も機能を停止する。


 しかしおとなしくやられるプースリーではないかつての女王に行ったように頸を刎ねようと思ったが、既に母より大きくなったデュカリスの頸には届かない。

仕方なく腹を砕くことにして腕を振るうとその尾針で受け止められた。そのまま受け流すように再び心臓付近に押しつけようとする針を何とか両腕でつかみ、

押しつぶそうとする。ここに拮抗状態が生まれた。




 プースリーが圧倒的な対冷気耐性があるのはこの地で手に入れた周囲の冷気を吸収して自身のエネルギーに変える超激レアスキル『冷気吸収』の為だ。

デュカリスの尾針を受け止めた両腕が凍りつくどころか、そのエネルギーを得て心臓が歓喜を告げ体温すら上がっている。

その上がった体温が尾針の崩壊を早めていく。


 しかし、デュカリスは冷却をやめるどころか更に強めていく。戦闘前に淡い蒼から黄色に変わった体の色が徐々に赤く染まる。

やがて血のように昏い紅に染まったデュカリスは先程以上に熱のない極低温の世界を創り出していく。

淡い蒼から黄色、更に赤から昏い紅これは何を示しているのだろうか。


 酸素である、これらの色は全て液体個体の酸素から作り出せる色である。液体の、又は低圧状態の極低温の個体の酸素は淡い蒼。

そこから、80億Pa、通常の大気の8千倍の圧力をかけると黄色く更に1万倍を超えたとき鮮やかな紅となり圧力を加えるにつれ暗くなっていく。

デュカリスのエネルギーは現在彼女が作り出せる限界にまで到達している。


 デュカリスの魂が冷たく輝けば輝くほど、プースリーの心臓は過熱し狂喜する。それでもなお彼女は愚直に力を開放し続ける。

<がははははは、無駄だ。無駄だというのがわからんか虫ケラぁ、貴様のやっていることは我に力を与えるにすぎん。やけがまわったか。>

<…………>


 なおもデュカリスの魂は凍えるほどに輝いている。しかし、その主出力先である尾針はプースリーの力と熱により崩壊しかけている。

しかしまだ、まだ彼女は戦う意思を、勝利への信念を無くすことはない。


 デュカリスの冷気に合わせ、過熱とともに強大なエネルギーに変換し鼓動を高めていくオーバーヒートするプースリーの心臓。

プースリーの戦闘力は増大し、全快時以上である。



 しかし、膨らみきった風船に更に空気を入れるとどうなるのであろうか?    ――――――当然破裂である。

酷使されたプースリーの心臓は悲鳴をあげ機能を急激に低下させる。全身の抵抗力と免疫力とともに。

一方デュカリスも限界の様で胸から下が完全に消失していた。ふらつくように飛ぶ現在の体力では再生には時間がかかるのは間違いない。

もはや、回復は後回しで何かしら攻撃手段を模索しているのかと思えばなにやら呆けたように静止している。


 プースリーは心臓や免疫系等の機能こそ低下したものの十分に戦闘が続行可能である。

<母の声でも聞こえたか?安心しろいつでも話せるよう冥府に送ってくれるわ。>

そう告げ、立ち上がり目障りなヴェスパの系譜を断とうと立ち上がろうとしたとき






    久しく無かったスペルヴィアの劇毒による苦痛が全身を駆け巡った。


 抵抗力や免疫力で抑え込んでいた劇毒が解放されたためである。心機能の低下にも問題があるのかもしれない。

あまりの激痛にのた打ち回り仰向けのまま咆哮をあげる。そこで、―――そこで見てはいけないものを見てしまった。


 上空の雲が螺旋を描きながら自分の真上に集結してきている。激痛の中周囲にあの蜂の姿を探してみたがいない。

もしやとは思うがあの雲の上にいるのだろうか、そうしている間にも螺旋回転する雲に周囲の群雲が巻き込まれより大きく激しくなっていく。

一滴の滴がプースリーの鼻先に落ちる。苦痛の中睨むように空を見上げれば、

螺旋状の雲の先から凍りつき下に伸びてきている。ソレは、


   鋭く、  恐ろしく、     そして美しい氷の円錐は、まるで―――


―――――まるで、ヴェスパの針の様だった。

ここにきてプースリーは悟った。このままでは殺される。初めて自分の『死』を確かに感じたプースリーは必死で逃げようとするが、

苦痛で体が動かすことができない。それはまるで何かに押さえつけられているようだとプースリーは感じた。



 高度10000m  雲の上、遥か高みの世界にデュカリスはいた。驚異的な視力と超感覚で地上の狼狽えるプースリーを見ていた。

デュカリスには見えた。母がプースリーの体をがっしりと押さえつけプースリーを逃がさない。母がこちらを向いて微笑んでいるように見えた。



  ありがとうございますお母様


そう心の中で礼を告げると、彼女は限界を超えて力を開放した。雲が丸ごと完全に凍結し加速を上げて急降下していく。


<プースリー、これが貴様を殺す者の名だ。     『母より継ぎし王家の栄光(スペルヴィア)』>

<ぐぉぉぉぉ、なぜだ、 なぜ今更っ!! いやだいやだ、まだ、まだ死にたくはないぃぃぃぃ!!!!>

大いなるヴェスパの針が大地ごとプースリーの心臓をを貫いた。



しってましたか?ヴェスパの針は2度、刺すんですよ。






バーサークポーラ プースリーを倒した。

デュカリスは称号 七つの大罪『傲慢(superbia(スペルヴィア))』 を手に入れた。

デュカリスは称号 海の魔物が氷獄の魔王 に変化した。

デュカリスは称号 AREA BOSS を手に入れた。

デュカリスは称号 悠久を生きるもの を手に入れた。

デュカリスは称号 復讐を遂げしもの を手に入れた。

デュカリスは称号 王家の後継者 手に入れた。

デュカリスは更なる位階に昇るための制限が解除された。

デュカリスは特殊変異体コキュートスヴェスパに神化した。


やりました。お母様。ヴェスパの最強の誇りは取り返しました。後は安らかにお眠りください。







デュカリス=スペルヴィア    種族コキュートスヴェスパ  RANK EX 昆虫族魔皇種


幾多の魔王の内最強の魔王。多くの平行世界において恐怖と絶望の象徴である。

雀蜂の魔王。その性質は傲慢。彼女にとって眷属以外のものはエサでしかなく慈悲はない。

ありとあらゆるものを凍てつかせる氷結地獄のエリアボス。又、彼女自身の実母も汚染領域管理者の為

フィードバックも大きい。神話に語り継がれるかつて人魚の先祖を絶滅に追いやった張本虫とも言われている。

圧倒的強さの為倒す方法は存在しないとも言われている。現在生存しているかは不明。

ひとまずの区切りです。

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