表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は世渡り上手  作者: 木戸陣之助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/9

第六話 なさけないわね

 囲い込む生徒達の真ん中には、ひとりうずくまる男子生徒がいた。緑色の髪は王立星光学園(スターライトアカデミー)では珍しい。その正体がわかってしまったドーラは心底あきれたように溜息をつくと、声を張り上げて、


「あんたら、何してんの?」

「なんだあ? ちんまいガキが何のようだ」

「へへへ、ちょっと遊んでるだけだから帰った方がいいぜえ」

「帰らなかったらどうなるか、わかってるだろう?」


 全部で五人、ね。ひとりを相手にそれだけたかっているのか。

 むしゃくしゃしたドーラは、


「そんな身長は変わらないでしょ。自分の見た目もわかんないの? 使えない目してるわね」

「なっ……」

「どこの家の人間か知らないけど、コイツは結構格のある家の出。バレたらどうなるかわかってんでしょうね?」


 ドーラは煽りに煽った。

 少なくとも公爵、侯爵家の中では見たことのない面子だ。外交問題に発展するから他国の人間は除外だとすれば、残るは子爵とか伯爵くらいか。格の話をすれば、簡単にひるむはずだ。そう思ってのことだった。

 実際、ドーラの推理は的確だった。格の話をすると簡単に威勢が弱まった。


「まあ、目上の人間が誰かもわかってないようなガキに、そんなことわかるわけなさそうだけど」

「は、はあ?」

「下々に何言ってもムダって話してんのよ。わかったら、さっさとどっかいってくれない? イライラしてんの、コッチは」

「……おまえ、ムカツクなァ!?」


 囲い込む生徒のリーダー格は、侮辱されて我慢がならなかったのか、激高して、大きく腕を振りかぶった。


「遅いわよ」


 ドーラは舞踊が得意である。その根本たる理由は体のしなやかさと使い方の上手さにあった。振りかぶったパンチをひらりと避けると、そのまま足払いして、体勢を崩す。軸足を失った生徒は、そのままひっくり返って頭から芝の上に落っこちた。


「ぎゃんっ!?」

「お前、生意気だな!?」

「ナマイキなのはアンタ」


 もうひとりがドーラの前にぬっと現れると、ひと回りは大きな体を大に広げて、捕まえようと突っ込んできた。これも流れるように避けて足払い。顔面から地面に突っ込んだところで、金的に思いっきり蹴りを入れた。

 ヒールの先でそれを受けた生徒は声にならない声を上げて、そのまま悶絶して動かなくなってしまった。それを見下ろして、


「よわすぎんのよ」


 鼻で笑った。それからすぐ、


「……ドーラっ、うしろ!!」

「おまえええええええ!!」


 今度は二人がかりで挟み撃ち。流石に分が悪い状況だが、


 すっと身を引いた。矛先がなくなった二人は、勢いあまって頭からぶつかると、大の字になって伸びてしまった。頭の上にはお星さまが回っている。


「のろますぎ」

『おお、やるじゃんアンタ』

「あとひとりね。どうすんの? アンタもやる?」

「ひ、ひい!!」

「今なら見逃してあげるけど。それとも、あたしの下僕にでも――」


 その時、


「つかまえたっ!!」


 ドーラの体に何かがまとわりつく感覚がした。

 最初に倒したはずのリーダー格だ。羽交い絞めにして身動きを取れなくしていた。

 鼻血こそ垂らしているが、意識は既に回復していたのである。


「早くやれッ、すきだらけだ!!」

「いっひっひ、さすがリーダー!! かくごしろ!!」


 どいつも、こいつも。ドーラは思わず顔をしかめた。

 それでも敵の拳はみるみる迫ってくる。愚痴をこぼしたところで現実は変わらない。助けを呼ぶ余裕も当然ない。

 仕方ない、とドーラはすうっと息をすった。


「……むんっ」


 あと数歩で拳が、というところでドーラは思いっきり地面を蹴った。

 そして体を持ち上げたかと思えば、ちょうど近づいてきた生徒の顎先に勢い付けた蹴りをクリーンヒット。ぎゃん、という情けない声でひっくり返った。

 そのまま、呆然としているリーダー格の顎にも渾身の頭突きをお見舞い。

 死角からの一撃というのもあって、リーダー格は声を上げる間もなく、するすると力なく倒れてしまった。


『えっ、えっ!? アンタ、格闘術でもやってた!?』

「やってないわよ。お姉さまの訓練で少し、ね」


 全員を倒してしまったドーラは、動かなくなった連中をちらりと見ると、踵を返してへたついている緑髪の少年に歩み寄り、顔を近づけた。


「ごきげんよう、エルウィンド家のおぼっちゃま」

「……どうも」

「お怪我はない?」

「……おかげ様で」


 仰々しいドーラの挨拶に、緑髪の少年はばつが悪そうに返した。()()()()()()()()()()()()に顔をしかめると、ドーラは捨てゼリフを吐くようにこう告げた。


「王の護衛を司る家なのに、自分すらも守れないのね」


 それから、ドーラは全員を放って中庭を後にした。

 この時、ヒカリはドーラが十分にストレスを発散できたのだと思っていた。

 しかし、実際は特に誇らしげになるでもなく、寄り道もせずに教室の自席へと戻ると、真っ先に腕枕に顔をうずめた。


「やっちゃったわ」

『え、どういうこと? むしろちょっと見直したわよ』

「どこがよ。もんだいこうどうってヤツで、またお父様とお母様に迷惑が掛かるわ」


 ヒカリの賞賛にドーラはぶっきらぼうに答える。

 彼女を囲む遠巻きの視線の一つの理由がこれである。ドーラは散々姉と比べられてきたせいで、家の格を落としているヤツ、といちゃもんを付けてくる生徒が絶えなかった。

 始めは泣いてばかりだったが、泣いていると付けあがる連中も少なくなかった。そして、自分だけが嫌な思いをするのに納得がいかなかったドーラは次第にやり返す道を選ぶようになる。

 それが、大人からの評価をさらに下げる理由になっていたのだ。


「ほんとはガマンしなきゃなのに。またお姉さまやお父様、お母様たちに悪いことしちゃった」

『怒られるのはイヤ?』

「怒られるのもイヤだけど、わたし以外のみんなはがんばっているのに、みんなが悪く言われるのはもっとイヤ」


 声を殺して泣くドーラに、ヒカリは困惑した。

 ゲーム上のドーラは、周囲を振り回す台風みたいな人間だった。しかし、実際に向き合った幼き頃の彼女は、確かにお転婆でこそあるが、彼女なりに人を大切にしているようにも見える。


『……周りがどう言おうと、アタシはアンタのやったことが間違いとは思えない』

「えっ」

『理由はどうあれ、結局はいじめられてた子を助けたんでしょ。何もしなかったヤツの意見なんて無視しちゃえばいいのよ』

「……ほんとに、それでいいのかな」

『わかんないけどさ。でも、迷ったときには話してよ。何か意見言えるかもよ?』


 ヒカリの助言にドーラは小さくうなずくと、か細い声で「わかった」と返した。


 一方、ヒカリはゲームのシナリオを振り返り、ある確信を抱いていた。

 先ほどドーラがキツく言った緑髪の少年。彼こそ七色のスターライトのルートキャラである、カイル・エルウィンドなのだと。

ブックマーク、高評価お待ちしております!!

広告の下にある★マークを「☆☆☆☆☆⇒★★★★★」にいただけると、ありがたいです!!

非常にモチベーションがあがります!!


レビュー、感想も頂けるとさらにうれしいです。


さいごに、いつも見て頂き誠にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ