表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は世渡り上手  作者: 木戸陣之助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/13

第十一話 どうしてこうなんのよ!!

「やっちゃった」

『……』

「やっちゃったわ。どうしましょう」


 この独り言はすべてヒカリに聞かせたやつなのだが、自室はしんと静まるばかりでまったく反応がない。


「ねえ、きこえてるんでしょ」

「……もしもーし」

「ねえ、あたしの中に住まわしてるんだから、返事くらいしなさいよ」


 反応がない。ドーラの眉間はピキピキだった。


「んああああああああああああん!! なんなのよ、もう。ほんっと、なんでわたしだけこうなんのよ!!」


 ふかふかのベッドの上、仁王立ちのドーラはひどく憤慨した。

 ここしばらく人生最大の不幸みたく意気消沈していたが、よくよく考えてみたらドーラは大好きなお友達を救っただけなのに、その友達からはひどく怒られて、その挙句父親からは異常者として扱われた。

 やっぱりわたしって――と、泣きたくなったが、父親に不満を思う存分ぶつけたら、ぐっすり眠れて目覚めすっきり。

 ちゅんちゅんと鳥のさえずる声で目が覚めて、おはようの伸びをするくらいにはドーラは元気を取り戻していた。


「そもそも、わたしだって何がなんだかわかんないんだから、どうしようもないじゃないっ。そんな風におちつけるのなんて、あの王子くらいでしょ!? そうでしょ!? ヒカリ」

『つーん』

「なんで、あんたがすねてんのよっ。なんかもう授業も全部行きたくなくなってきたわ、もう退学しちゃおっかしら」


 そんなことをすれば、間違いなくご両親からのお尻百叩きだが、今この瞬間だけドーラは無敵だった。シワシワのシーツをひっぱって、ぶおんぶおんと揺らしまくると、思いっきりベッドの上でぴょんぴょん跳ねまくった。


「んわああああああああああああああ!!」

『うっさいなあ、もう!! だまってなさいよ、アンタ!!』

「へっへーん。あんたには散々おちょくられたからね、仕返ししてやるんだから。あんたの声は誰にも聞こえませええええん!! わああああああああああい!! わああああああああい!!」

『うるさあああああああああああああああい!!』

「だまりませえええええええええええええん!! あんたの嫌がる顔が見たくてたまんないわああああああ!!」

 

 奇声に奇行。イタズラ魂ゆえのフラストレーション発散にすぎないが、その前日が前日なので、傍から見ればいよいよ気がふれたと見れてもおかしくない。

 本当はこんな姿見られたくないが、ひとたびやってしまえば、今まで我慢していたひと時をこの上なく後悔した。

 ドーラは決して良い子ではないのである。


 その時、2回ノックが鳴った。

 

「どう――」

「ドーラッ、いったい何があった!?」


 乱暴にドアが開けられると、そこにはくたびれた様子の父アデルがそこにいた。正装こそしているが、服はところどころしわくちゃになっている。


「へっ、おとうさま」

「ゴーストが現れたのか!? それともデーモンでもとりついたのか!? ドーラああああああああああああああ!!」

「な、なにがどうなってんのおおおおおおおお!?」


 アデルは取り乱したかと思えば、さっとドーラを担ぎ上げ、一目散に部屋を出ていこうとした。

 何がなんだかわかっていないドーラは、「うえええええ!?」と声にならない叫びでじたばた暴れた。しかし、アデルも負けじと「ドーラああああああああ!!」と叫ぶせいで、にっちもさっちもいかない。

 わらわらとメイドや執事達がやってきて、落ち着かせようとするが、娘の為ならアデルは無敵になれる。多勢であろうと、止まることはなかった。


「はあっ、ドーラ。なんということでしょう」


 ちなみに部屋の入り口付近では、母のローザが口に手を当てて、地べたにへたりこんでいた。ひとりで奇声を上げる九歳の娘に、つい貧血を起こしてしまったのである。

 そういうわけで、ブリュンヒルデ一家の朝は、とてもけたたましく始まった。

 そして、彼らは揃いも揃って、大事なことを忘れていたのである。


「あのう、とりあえず皆さん」


 ん? と、一斉に声の主に目を向ける。当の本人は気まずそうに苦笑いを浮かべながら、それでもめげずにはっきりと告げた。


「一旦、落ち着きませんか?」


 彼の名はアレキサンダー・エル・ハイネス。

 ハイネス王国の第一王子であり、この事件の闇を暴いた張本人である。


「出過ぎた真似をっ!! 大変申し訳ございませんっ」

「そんな、お気になさらず。僕だって気が動転しても仕方無いと思うので」

「身に余るお言葉、感謝いたします!!」

「感謝いたします!!」

「本当に気にしなくていいんだけど……まあ、それが出来たら苦労しないよね」


 深々と頭を下げるアデル、ローザ、使用人たちをとりなすアレキサンダー王子。しかし、一番の当事者であるドーラはまるで事態に追いつけていなかった。

 それもあって、あわあわした顔で人様に向かって指を差す。とんでもない不敬である。


「あ、あんた!! なんでここにいんの!?」

「そりゃあ、お友達を救うためでしょう」

「おともだち?」

「ドーラ。僕は友達じゃないやつに、カバンの中にねこじゃらしを詰められたのかい?」

「あっ」

「ドーラ、どういうことだ?」

「詳しく話を聞かせてくれないかしら」

「な、なんでもないよっ。アレクとはおともだち!!」

「よろしい」


 前科を数えたら指がいくつあっても足りやしない。

 そして、両親の笑顔に宿る鬼のような圧に、ドーラはお口をチャックするしかできなかった。


「まあ、本当なら僕が出しゃばる番ではないのですが、事が事なので僕なりに調べてみたんです」

「それが、先ほどお伝えされた?」

「ええ。アリシア・ヴィクトリアスのティーカップに、毒物が混入されていました」


 とんでもない事実に、ドーラの顔からさあっと血の気が抜けた。

 

「ほ、ほんとなの?」

「ああ。うちの密偵を使ったから間違いない。カップのへり、飲み物の中身それぞれに毒が入っていたよ。それも、ひとたび飲んでしまえばあっさり死んでしまう強烈なヤツが、ね」


 淡々と告げるアレキサンダーだが、内心は戦慄していた。

 貴族の関係とは、陰謀うずまくのが当たり前の世界。だからこそ、他に出し抜かれなきよう、陥れないように最善を尽くす。それが、公爵家という国で二番目に権力を持つ家系なら、なおさらだ。

 しかも、その権力を持った貴族の包囲網を搔い潜ったうえで、敵は毒物を混入してきたのである。


「ここで皆にお伝えしたいのは、標的が僕らの可能性もある。ということです」

「なっ……!? それは、最早国家に対する宣誓布告ではないですか!?」

「ブリュンヒルデ公、その通りです。今、僕たちは何者かの見えない力によって、国そのものが脅かされている。そう言っても良い」


 スケールが大きすぎてまったく話が頭に入らないドーラ。

 国そのものを陥れる脅威、そんなものが見えないところで隠れている。何かの本で読んだことがあるわね、その程度の認識だった。


「ちなみに、国が乗っ取られたらドーラがいつもすやすや寝ているベッドも、当たり前のように食べ残している食事も、大好物も全部没収だよ」

「んなっ!? どうして!?」

「だって、王様が王でなくなってしまったら、他の貴族が貴族でいられる保証、あると思う?」


 王子の問いにドーラは頭をこねくりまわす。

 もしも、わたしたちの国から王様がいなくなってしまったら。貴族という枠組みが他の誰かに奪われてしまったら。


「それって、つまり、このお家から追い出されて、ぼろっちい小屋でひもじい生活するってこと?」

「そうだよ」


 ドーラはしばらく首をかしげる。そして、頭にこり固まった情報が正しい形で一つになったその時、


「いやよ!! ぜったいいや!! あんな硬い床の上なんて、いっしょうゴメンだわ!!」


 全力でだだをこねた。

ブックマーク、高評価お待ちしております!!

広告の下にある★マークを「☆☆☆☆☆⇒★★★★★」にいただけると、ありがたいです!!

非常にモチベーションがあがります!!


レビュー、感想も頂けるとさらにうれしいです。


さいごに、いつも見て頂き誠にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ