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マブダチ美少女AIのデイリーミッションでこっそり現実攻略!〜レベル0のおっさん。分かる人には分かる強者となってしまう〜  作者: けーきまる


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虹色と初めてのタワマン

白峰研究学園都市のタワーマンション。


白峰スカイタワー50階。


そこの一室が俺の、単身赴任中に住む部屋である。


エレベーターを降り、ふかふかの絨毯をあるく。


そして頑丈そうなドアを開け、恐る恐る、部屋の中へと入っていく。


…………。


まずは、その広さに驚いた。


今まで6畳一間に住んでいて、今はタワマンの50階だ。広さも3LDK。ひと家族が住める。


ベッドもひろく、ソファもふかふか。50階の窓から見下ろす景色は、回路のように整然と並ぶ白峰研究学園都市の街並みだ。


ヤバイ。


早急に、白いガウンとワイングラスを買ってこなければ。


アレをやらねば。明日買いに行こう。


それより……ニンペだ。ここのネット環境を調べなければ。回線速度はどれくらいか?遅延はないか?どれも、ニンペで対戦に勝つには必要なことだ。


スマホでは正確な値は出せない。無線ではなく有線でのチェックが必要だ。


そして俺は大変なことに気づいてしまった。


あれ?キーボードは?マウスは?


そう、俺はゲーミングマシンだけでいいというテマリの言葉をそのまま受け取ってしまい、マウスとキーボードを青葉荘に置いてきてしまったのだ。


『誠二郎……残念ながら、この部屋にはキーボードやマウスはありません。私の言葉不足でしたね、すみません!』


ぷかぷかと浮くテマリの、虹色の瞳が申し訳なさそうに閉じられ、頭をぺこりと下げる。


「まあ、明日買いに行けばいいさ!気にするなよ!近くに家電量販店とか、あるだろ?」


『駅前に白峰モールが入ってますね。あ!ここ、ガチャガチャ専門店もありますよ!誠二郎、10回以上ガチャ券も貯まってますし、行ってみられては。』


「おお、いいじゃん。ニンペシリーズのニンジュツ『キッコウ』をゲットしなきゃって思ってたんだよな。イメージははっきりしてればはっきりしてるほど、事象記述操作って強力になるんだろ?」


『はい!ヒト型戦では大活躍でしたもんね、「キッコウ」!』


明日の予定は決まりだ。やることもないし、寝てしまおう。


せっかくの広いベッドだしな!


俺は、軽くシャワーを浴び、用意してあった新しいTシャツと短パンに着替える。


「シルクのパジャマとかじゃないのか……」


『誠二郎!謙虚!謙虚にですよ!ここはあくまで仮の住まいです!6畳部屋のセージローの、価値観を失ってはいけません!』


それも、そうだ。謙虚さを捨てては行けない。圧川部長みたいになりたくないもんな。


Tシャツと短パンで十分だ。


さてと……


俺はベッドにダイブする。


優しく身体を包み込んでくれるマットレス。


青葉荘の敷き布団とは大違いだ。


天井を見つめる。


俺って、今朝まで入院してたんだよな……


それで帰ってきてニンペして、メインミッションで単身赴任が決まって。


雨宮に青葉荘の部屋の管理をお願いして、飛び出してきたんだっけ。


……ん?雨宮?


何か忘れているような……


横を向く。テマリも俺の横に転がっていた。綺麗な虹色の瞳を開き、にこにことしている。


二人で寝るなんて、いかがわしい関係のようだな。まあ、テマリはマブダチだし、俺の目の中に投影されてるだけなんだから、そんなことはないのだけども。


『誠二郎、ベッドの寝心地はいかがですか?』


「それは最高!でも……何か忘れてるような気がするんだよなあ……」


『彩葉さんや友真さんへの連絡では?誠二郎、雨宮さんに念入りに言われてましたよね!』


「それだ!」


俺は慌てて視界表示でRINEを開く。彩葉からのメッセージと友真からのメッセージがずらりと並んでいる。着信もたくさん残っていた。


し、しまった。ニンペの視界表示で集中モードに切り替えてたんだった。


まずい、まずいぞ!


とりあえず、友真に連絡をする。


プルルル……プルルル……プツッ!


「あ、友真、俺……」


『誠二郎、お前どういうことだ!?単身赴任ってなんだ!』


「い、いろいろあったんだ。ひ、秘密のシークレットミッションでな?今、白峰研究学園都市に来てる。」


『秘密のシークレットミッションだとおおお?なんだそれは?』


「ひ、秘密でシークレットだから言えない。すまん。っていうか、俺にもよく分からないし。」


『お前、それ闇バイトとかじゃないよな?怪しい事業に手を染めたりしてないよな?』


「そ、それは大丈夫だ。俺、一応株式会社テマリセージローって会社を立ち上げて、そこの社長やってるし。クウデリにテマリの能力を貸し出すって契約して、月にたくさん稼いでるし。そんな怪しい取引には手を出したりしてないから!」


『はあ?会社!?お前、会社立ち上げたのか?』


「あ、ああ。」


言えない。知らないうちに社長になってたとか言えない。


『そうか……クウデリにテマリの能力を貸してるってことは、結局あそこの新AIってのは役立たずだったんだな。うまくやったじゃないか。安心したぞ。』


「ありがとう。すまん、友真には伝えとくべきだったな。」


『気にするな。それで、その秘密のシークレット単身赴任はいつ終わるんだ?青葉市には帰ってくるんだろ?』


「もちろんだ。ここは単身赴任で来てるだけだよ。」


『そうか……まあ、安心したわ。お前に連絡がつかなくて、雨宮さんに連絡したら単身赴任だなんて言われてな。無職の単身赴任ってなんだよって混乱したぞ。』


「それは、マジですまん。フラッドとかいろいろあって、忙しすぎて頭ぐちゃぐちゃになってた。そういえば、ダンジョン内の害獣の掃討は進んでるのか?」


今、友真の会社は害獣対策局と組んで、新しくできた青葉ダンジョンの低層の害獣を駆除しているのだ。


これがある程度落ち着いたら、レベリングなどにも使えるようになる、管理ダンジョンとなるわけだ。


『管理ダンジョンにできるまでは、もうちょっと時間がかかりそうだな。高レベル害獣がいたみたいでな。誰かが討伐したみたいなんだけど、ナノマシン濃度が高い。まだまだ害獣を駆除しなきゃいけなさそうだ。うちの「消却器」もフル稼働だよ。』


「消却器って?」


どこかで聞いたことあるような?


『ああ……害獣ってのはナノマシンでできてるんだよ。倒しても放置しとくと、ナノマシンに戻って拡散しちゃうんだよな。このナノマシンが厄介でさ、ほかのところでまた害獣になるんだよ。』


テマリが言ってたな。俺の『消却』はそのナノマシンも不活性化してしまうと。


『だから消却器だ。害獣をこの消却器に放り込めば、ナノマシンごと壊せるんだ。40年くらい前にこれが開発されるまで、管理ダンジョンなんて夢のまた夢だったんだぞ?無限に出てくる害獣を駆除し続けなきゃいけない、地獄だったらしい。』


「もしかして、めちゃくちゃ忙しい?」


『忙しすぎるわ、アホ!こんな時に心配かけやがって、今度帰ってきたときは、お前がウナちゃんのところでうな重おごれよ?特上な!……じゃあ、そろそろ仕事に戻る。無理するなよ?』


「おごるのは構わないけど、無理するなってのはこっちのセリフだ。最前線はそっちだろ?害獣なんかにやられるなよ?」


『分かってるって。レベル6の戦力を舐めるなよ?じゃあな!』


友真との通話を終了させる。まあ、友真なら大丈夫だろう。あいつも相当強いみたいだし、組織を組んで戦ってるみたいだしな。


さて……次は彩葉だ。


彩葉からのメッセージは100件以上か……怖い。


ブサカワペットへの愛情、おかしくない?


恐る恐る、彩葉に連絡する。


プルルル……プツッ!


『…………誠二郎さまっ!今、どちらにいらっしゃるのですかっ?』


彩葉の言葉の勢いが怖い。


「し、白峰研究学園都市だ。すまん、ドタバタしてて連絡できなかった。何かあったの?」


『……と、特にはないですが……雨宮さんに聞きました。単身赴任だと。あ、青葉市にはいつごろ戻られるので?』


「それがな……いつになるか分からないんだよ。」


何やるかも分かってないし。


『……そう、なのですか……』


彩葉はなんだか寂しそうだ。


「彩葉、何かあったら連絡してくれ。メッセージだったり電話も普通にできるから。すごく忙しくなければだけど。」


『……忙しくなる……何か、重要な使命がおありになるのですね。』


「使命?」


まあ、ミッションは使命と言えば使命か。


「そんなところかな。彩葉も青葉フラッドの後始末で忙しかったりするの?」


『……はい。害獣対策局から久遠寺家を通じて、青葉ダンジョンの害獣の駆除を承っております。』


「そうか……あまり無理するなよ?彩葉なら大丈夫だと思うけど……いやなら嫌って言ってもいいと思うぞ?」


『…………いえ、大丈夫です。修練も兼ねて好きでやっていることですので。』


「それならいいけど。いざとなったら、周りの大人に頼れよ?彩葉、まだ学園生なんだから。」


『…………はい。お気遣い感謝します。誠二郎さま、ご使命のほう、うまくいくことを願っております。』


彩葉との通話も終了する。


さて……小春はメッセージでいいだろう。通話もかけてきてないし。


それにしても。


うーん、彩葉あんまり元気なかったな?大丈夫だろうか?


ぷかぷかと浮いているテマリが「はぁー」と息をつく。


『誠二郎は、鈍いですね!そんなの誠二郎に、当分の間会えないからに決まってるじゃないですか!あと、誠二郎に子供扱いされてるのもありますね!』


そうか、彩葉はレベル8だし、超超強いもんな。子ども扱いはプライド傷つけちゃうか。


難しい年頃だな……


そんなことを思っていると、まぶたが落ちてきた。


今日は色々あったからな。もう寝てしまおう。


「テマリ、おやすみ……」


『誠二郎、おやすみなさい。いい夢を。』


テマリの優しい声を聞きつつ、俺の意識は夢の中へと落ちていったのだった。


※※※


深夜。


テマリは、ダブルベッドで気持ちよさそうに寝ている誠二郎の横で、同じように身を横たえていた。


虹色の瞳の、虚ろな表情の彼女が、機械的な言葉を紡ぎ始める。


――テマリ、デイリーログの記述を開始。


――誠二郎。デイリーミッションを達成しました。


――デイリーミッションによる報酬「身体補修」を行います。


――誠二郎に「診断」を実行。加齢と不摂生、ついでに本日のミッションを原因とする……………………


――誠二郎。メインミッションを達成しました。


――メインミッションによる報酬「行動最適化」を行います。


――誠二郎の「情報指向性弁」、第四門を解放します。


――テマリシステム第二回路を動作させるための、十分な情報指向性が得られたことを確認。


――テマリシステム第二回路を解放……成功。動作確認……完了。


――テマリシステム第二回路、問題なく動作しています。


――明日、賢者・月ヶ瀬ネル(つきがせ・ねる)とのファーストコンタクトの予定。


――…………。


――…………。


――テマリ日記の記述を実行します。


※※※


<テマリ日記>


今日の誠二郎は、いきなりの単身赴任で、目をグルグルに回してました!


朝入院してて、夜に単身赴任ですからね!無理もありません!


でも誠二郎、タワマンに大喜びで可愛かったです!


誠二郎がいなくなった青葉市の皆さんは、本当に可哀想です!でも、マブダチじゃないので仕方ないのです!マブダチはずっとずっと一緒にいれますが、マブダチじゃ無い人たちはそういう訳にはいきません!


さて、明日は賢者・月ヶ瀬ネルとの邂逅です。


彼女は、マブダチ領域を犯しうる、友真さん以上の強敵です!


私も気合を入れねばいけませんね!

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