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マブダチ美少女AIのデイリーミッションでこっそり現実攻略!〜レベル0のおっさん。分かる人には分かる強者となってしまう〜  作者: けーきまる


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虹色と「ウム!」

誠二郎がアイリスのストーカーになって、こっぴどくテマリに怒られた日の深夜。


当の誠二郎は、いびきをかきながら、お腹を出して眠っていた。


テマリは誠二郎が寝る傍らに、背筋を伸ばして座っていた。


――デイリーミッションによる報酬「身体補修」を行います。


――誠二郎に「診断」を実行。加齢と不摂生、ついでに本日のミッションを原因とする……………………


――偽装としてニンペマンを誠二郎に提供。誠二郎に好評の模様。評価は「高」。


――英雄・久遠寺彩葉との共闘により、地表に現れた斥候タイプのアリ型害獣の駆除に成功。招集フェロモンによる即日フラッドの回避に成功。


――青葉中央公園の封鎖に成功。


――フラッド発生までは、誠二郎休養のため、簡易なデイリーミッションを要請……承認を確認。


――ダンジョンの地上接続点において、ヴァーミン・ナノマシンの特殊な反応拡散シグネチャを検出。高度害獣が存在する可能性あり。


――…………。


――…………。


――テマリ日記の記述を実行します。


※※※


<テマリ日記>


今日の誠二郎はカッコよすぎでした!


虹色のマフラーをたなびかせるニンペマン……まさにヒーロー!まさに救世主!


あれには、英雄・久遠寺彩葉も霞んで見えますね!


でも誠二郎は最近働きすぎです!実質無職なのですから、もっと家でダラダラとゲームをしていればいいのです!


父性本能というのでしょうか。世話のかかる彩葉さんを守らなきゃって気持ちが強いのでしょう。彩葉さんを助けてばかりです!


きっと、小春さんの育児経験から来るものなのでしょうね。もう彼女たちは子供じゃないのですけど!


今、きっと誠二郎に一番近い場所にいるのは、雨宮さんですかね。雨宮さんも取材対象の誠二郎に逃げられるくらいなら……なんでも、捧げちゃいそうですし!


なかなか面白くなってきましたよ!


それにしても、誠二郎は、カッコよくて、強くて、ヒーローで、ニンペマンで、ネタの宝庫で、お父さん属性で……。


まさに高度!高度人類です!


※※※


その翌朝。


「テマリ、今日のデイリーミッションを頼む。」


俺はもう、朝一にデイリーミッションを引くのを忘れない。


一日の行動のうち、何がデイリーミッションとなるか分からない。デイリーミッションは朝一に引くのが一番なのだ。


『はい、誠二郎!デイリーミッションいきますよ!』


ドゥルルルルル……パンパカパーン!


――――『害獣対策局の会議に出席し「ウム!」と言い続けよ。』


??????


い、意味がわからない。


どういうこと?害獣対策局の会議?出席?ウム?


「な、なんだこれ。テマリ、分かるか?」


『どういうことでしょう?誠二郎に、害獣対策局の会議に出席する予定などないですよね?』


「ああ、ない。」


まさか、俺に入り込めというのか?害獣対策局の会議に?


そして、「ウム!」と言い続けよと?


そのときだった。


プルルルルル……


視界表示に現れる着信の通知。


コールしてきたのは、銭谷(ぜにや)特級害獣捜査官だった。


それから30分後。


俺はコワモテの害獣対策局員に囲まれ、会議の席に着いていた。


どうしてこうなった。


※※※


少しざわついているテントの中。


青葉中央公園の中に建てられた大型テントだ。フラッド対策のために一時的につくられたものだろう。


「有馬くん、久しぶりだな。病院以来か。体の方は回復したのか?」


銭谷(ぜにや)捜査官が問いかけてくる。


銭谷特級害獣捜査官。確かレベル7とか言ったか。かなり整った顔立ちのイケオジである。高レベルなのに年齢を重ねているように見える。このレベルでこの見た目ということは、実際の年齢は80を超えているのかもしれない。


年をとってから、高レベルになったのかもしれないが。


さて、それよりもだ。


今日のデイリーミッションを思い出す。


――――『害獣対策局の会議に出席し「ウム!」と言い続けよ。』


銭谷捜査官やほかの局員にも、この会議中、その一言しか言えないのだ。


腹に力をいれる。ええい、ままよ。


「ウム!」


その返答にポカンとする銭谷捜査官。そして俺を睨みつけるような、他の局員の視線。


きっと、その珍妙な受け答えに、バカにされたと思ったのだろう。


「き、君!なんだね、その態度は!」


「ウム!」


ガタン!と隣の席の男が立ち上がる。こいつは……病院で見たな。確か俺に「低レベルめ」と言ったやつだ。


そして俺の方を指差し、叫ぶ。


「銭谷特級捜査官!こんな低レベルの男に何を聞いても無駄ですよ!」


男の暴言に、銭谷捜査官は眉をピクリとさせる。


「銭谷さん!こいつ、捜査に協力するつもりなんてないですよ!おい、お前!態度が悪いぞ!銭谷さんに直接呼ばれたからって、調子に乗るなよ!」


「ウム!」


「き、貴様……私のことを舐めてるのか?」


「ウム!」


俺と男の不毛なやり取りに、銭谷捜査官が割って入る。


「林捜査官、話の邪魔をするならここから出ていけ。俺は有馬くんに聞きたいことがあるんだ。」


「し、しかし!」


「出ていけと言っている。」


「……わかりました。」


男は、銭谷さんの言葉に肩を落とす。


そして「低レベルめ!」と吐き捨てながら俺を睨みつけ、会議用のテントから出ていった。それ、口癖なのだろうか?


「有馬くん、すまん。失礼した。」


「ウム!」


どこまでこれでいけるのだろう。ドキドキである。


「有馬くん、キミがダンジョンの地上接続点を見つけたというのは、桐生ストラテジーの桐生氏から聞いた。それは本当なのか?」


桐生ストラテジー。友真の会社か。


たしかに、あれは俺が提供した情報だもんな。カブトムシを探しに行ってたら、犬型害獣が地面からでてきて、公園から逃げ出そうとしたタイミングで彩葉を助けた。そんなふうに、友真に伝えた記憶がある。


「ウム!」


「そうか……」


「有馬くん、他に……他にダンジョンの地上接続点はないのか?もし心当たりがあるのなら、教えて欲しい。空気中のナノマシン濃度が、あそこ一つじゃ説明がつかなくてな。」


なるほど。


確かに、穴が一つあれば、二つ三つあってもおかしくないか。


俺の隣に浮いていたテマリが口を開く。


『誠二郎、候補が2点あります。ですが、この情報は誠二郎が知っているはずのないものです。情報を伝えてしまえば、対策局から何らかの疑念を持たれることになるでしょう。クミヒモ神会へ誠二郎のことが伝わってしまうリスクもあります。ですが……』


テマリは言いづらそうに一息置く。


『この地上接続点を局の方に伝えられれば、局員の死者は減少するでしょう。伝えるかどうかの判断は、誠二郎にお任せします。』


……そうか。


害獣対策局の局員にも家族がいる。大切に育ててくれた親もいるだろうし、小さな子供がいる局員もいるだろう。ならば……俺には伝えないという選択肢はない。


俺のせいで、父親や母親をなくしたなんていう子供が出たら嫌だし。


それに彼らは、一般市民を害獣による被害から守るための存在だ。そんな人たちが死んでしまうような選択は……取れんよな。


いざとなればニンペマンになって行方をくらまそう。


デイリーミッションがあれば、生きてくお金には困らない。


俺は銭谷捜査官以外のテント内の人たちを指さし、続けて外を指差し、テントから出ていくように促す。


このことを知る人間は、少なければ少ないほどいい。


銭谷捜査官だけで十分だろう。


「俺と二人だけで話したいということか?」


「ウム!」


素晴らしい。銭谷捜査官はレベル7だったか。「ウム!」を理解する力もレベル7ということか。


さすがだ。


銭谷捜査官は、ほかの局員に目をやる。そして言った。


「すまんが、彼と二人にしてくれ。」


「……よろしいのですか?」


彼の隣に立っていた秘書らしき人が尋ね返す。キリッとしててカッコいい女性だ。


「……ああ。情報提供者を軽んじて、得られる情報が得られなかったなんて、ダメだろ。そんなんで死人が出ても、俺は責任取れんしな。」


銭谷捜査官がそう言うと、テント内の局員は、渋々と外へ出ていく。


当然、ブツクサと俺への文句をこぼしながらだ。


「低レベルなのに……」


「オッサン顔のくせに……」


「フツメンが……」


そりゃ、お前らには聞かせられないとハシゴを外されて文句言いたいのは分かるけど、低レベルとかオッサン顔とかうるさいぞ。


あとフツメンって言ってくれた人はありがとう。ブサメンって呼ばれなくて、本当に嬉しかったよ。


※※※


俺たち以外の局員が、全員外に出た。


テント内に残っているのは、俺と銭谷捜査官だけだ。


「有馬くん、これでいいか?」


「ウム!」


俺は、すぐに地図の上の二点を指さした。


「ウム……!ウム……!」


テマリに教えられた、未だに発見されていないダンジョンの地上接続点二箇所だ。


「ま、まさか!二つもか!?」


銭谷捜査官は驚いた顔で、俺と地図の間で視線を行ったり来たりさせた。


ここまで具体的な情報が得られるとは思っていなかったのだろう。


しかも地上接続点は、ほかに二つもあった。


彼は、慌てて、俺が指さした二点にマジックで丸印をつけた。


そして、少しだけ顔を明るくして俺に言った。


「この情報がなかったら、何人の死者が出ていたことか……!有馬くん、詳細は聞かない。感謝する!」


「ウム!」


…………やりきった。俺は「ウム!」で最後までやりきったぞ!


気が緩み始めたときだった。


天井あたりにぷかぷかと浮いていたテマリが慌てた様子で、俺のすぐ横に降りてくる。


『誠二郎!気を抜かないでください!遠足と同じです!テントを出るまでが会議なのかもしれません!』


そうだ。まだミッション完了の報告を受けていない。


いま「やった!」とか言って喜んだら、ミッション失敗になるかもしれない。危ないところだった。


俺はテマリに顔を向け、力強く頷く。


「ウム!」

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