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マブダチ美少女AIのデイリーミッションでこっそり現実攻略!〜レベル0のおっさん。分かる人には分かる強者となってしまう〜  作者: けーきまる


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虹色のデイリーミッション

カン!カン!カン!


鍋の蓋が叩かれるような音がする。


カン!カン!カン!


『誠二郎、起きてください!今日から新しいゲームの始まりですよー!デイリーミッションの始まりですよー!』


「うーん。もうちょっとだけ、寝させてくれー。」


カン!カン!カン!


『誠二郎、いいんですかー?お金が手に入っちゃうデイリーミッションですよー?』


その声に俺の意識は一気に覚醒する。


布団を蹴飛ばし、跳ね上がる。


「お金!!」


ドン!!


「ひえええ!」


そして、隣の部屋からの壁ドン。


そろそろ、本当に菓子折りを持って謝りに行ったほうがいいかもしれない。


こういうのは一度、顔を合わせて礼を尽くしておけば、心が広くなってくれるものなのだ。たぶん。きっと。おそらく。


『誠二郎、大声を出すのはダメですよ?お隣さん、怒っちゃってますよ。』


「誰のせいだよ、まったく。」


「それで、テマリ?お、お金が手に入る、デイリーミッションについて教えてくれないか?」


『はい!本日のデイリーミッションは……』


ドゥルルルルル……。


パンパカパーン!


盛大なファンファーレが脳の中に鳴り響く。


そして目の前に表示される文字。


――『青葉中央公園を、同じ道を通らずに、歩いて5周せよ!』


え?


「……どういうことだ?ゲームじゃないのか?」


『ゲームですよ?頭を使わないと、同じ道になっちゃって、何周もすることになりますしね。』


「俺はてっきり、ゲームコントローラーを持って家の中でやるものだと思ってたよ……。」


そんな俺のひきこもりな考えは、すぐにテマリに跳ね飛ばされる。


『甘いです!甘いですよ、誠二郎!金銭を得るには身体を動かすことが基本なのです。誠二郎はもやしですしね!』


もやしとか言うなよ。傷つくだろ。


『そんなことより、報酬を見てくださいよ。報酬を。』


「どれどれ……。」


ミッションの下に書かれた報酬欄を読む。


「ふむふむ……身体補修……なんだこりゃ?まあいい、あとは……おお!3万円!あの公園を5周するだけで3万円ももらえるのか!?」


『はい。テマリに二言はありませんよ!誠二郎の身体も強くなり、懐も潤っちゃう、そんな素晴らしいミッションです!』


「行くぞ、テマリ!3万円だ!」


『行きましょう、誠二郎!これが誠二郎の第一歩です!』


ドン!!


そして、つい大声を出してしまった俺への壁ドン。


「ひええ!ごめんなさい!」


※※※


そして今、俺は青葉中央公園の前に来ていた。


まずは管理センターへと向かう。


そこには「害獣の目撃情報あり!!」と、大きなポスターが貼られていた。


害獣だって?こんなところに?


このあたり、ダンジョンなんてないよな?なんで、害獣なんかが現れるんだ?


ぶるっと体が震える。


害獣とは人間を襲ってくる、よく分からない存在だ。ダンジョンと呼ばれる洞窟から現れるらしいが……俺は実際に見たことはない。


高レベルの人間が武器を持てば対処できるらしいが、俺みたいなレベル0が遭遇したら、きっと即死だ。


怖すぎる。


ただ、公園が閉鎖されていないということは、確実な情報ではなさそうだ。見間違いだろうが念のため……といった雰囲気が感じられる。


不安がっている俺を見たのだろう。


ふわふわと浮いているテマリが元気に声をかけてくる。


『大丈夫ですよ、誠二郎。今、この公園に害獣はいませんから!』


「そ、そうか?」


テマリの言葉に安心しつつ、俺は窓口に置いてあった案内地図を手にとる。


道は思ったより多いな。どうやら、同じ道を通らずにという条件は簡単に達成できそうだ。


えっと……一周2km近くあるのか。5周ってことは、10km近く歩く羽目になるってこと?


俺、死んじゃわない?


「結構、大変そうだな……。」


『大丈夫です、誠二郎!マブダチで超美少女の私とお話ししながらお散歩すれば、すぐですよ!』


「そうかなあ?」


テマリはいつもの格好だ。


白銀の髪に、虹色の瞳をキラキラと輝かせながら、俺の頭上をふわふわと浮いている。


今日のロングTシャツは……白地にカエルの絵が描いてある。鳥獣戯画のカエルだ。渋すぎる。


ちなみにロングTシャツの中身が見えることはない。Tシャツの内側は真っ暗である。きっと年齢制限回避のためだろう。意味がわからないけれど。


なんでそんな事知ってるかって?聞くなよ、そんな野暮なこと。


テマリが元気よく出発を促す。


『では、誠二郎。行きましょう!3万円のために!』


「そうだな……3万円のために!」


突然声を張り上げた俺に、周囲の人の視線が集まる。


そ、そうだった。テマリの声は他の人には聞こえないし、テマリ自身も他の人には見えないんだった。


俺は身を小さくし、視線を避けるように歩き始めたのだった。


※※※


それから3時間後。


俺の足は生まれたての子鹿のようにプルプルしていた。


『うふふふ!誠二郎の足、プルプルしてますね!あとちょっとですよ!あんよ、がんば!あんよ、がんば!』


「く、くそう……テマリばっかり楽しやがって。浮けるなんてズルいぞ!」


『誠二郎も頑張れば飛べるかもしれませんよ?テマリシステムと完全適合できればの話ですけど。』


マジでか?本当に、そんなことができるようになるのか?


テマリが言う通り、空を飛べたら便利すぎる。でも、目立ちすぎるか。拷問とか暗殺とか、嫌だし。


いや、それよりもだ。目の前のデイリーミッションを達成しなければ。


震える足を一歩ずつ前へと進める。


テマリはそんな俺を、優しい母のような慈愛の目で見ていた。


あいつ……あんな目もできるんだな……。


俺がテマリの姿に気を取られていたそのときだった。


パンパカパーン!


ファンファーレが頭の中に響く。


そして、視界にメッセージが表示される。


――『デイリーミッション「青葉中央公園を、同じ道を通らずに、歩いて5周せよ!」を達成しました。』


「お、終わったのか?この苦行が、とうとう終わったのか?」


テマリの声とは少し違うアナウンスが続く。


『3万円が銀行口座に振り込まれました。』


『身体補修は夜間に実行されます。』


『お疲れさまでした。』


「ふう……。」


俺はその場にへたり込む。


そんなクタクタの俺に声をかけてくるテマリ。


『誠二郎、やりましたね!ミッション達成ですよ!お金もゲットですよ!』


「お、おう!そうだな!」


周りには誰もいない。普通に声を出してテマリと話す。


スマホを取り出して、銀行のアプリを開こうとしたときだった。


『誠二郎。スマホの操作は視界表示でできますよ?操作は考えれば可能です。今のうちに試されては?』


視界表示……ああ、この網膜に投影される謎技術か。


銀行アプリを開きたいと思うと、それが視界に表示された。


すごい。VR空間のようだ。


アプリに目の焦点を合わせると、その表示が大きくなる。


「おおー!これは便利だな!」


おそるおそる自分の口座の残高を確認した。


「入ってる……本当に3万円が入ってるぞ!」


『むふふふ……お金ゲットですね、誠二郎!』


「あ、ああ……」


本当にお金が振り込まれていた……信じられない。でも誰が、どうして、こんなお金を振り込んでくれるんだ?


そんな疑問を抱きつつ、振込元の情報を確認する。


そこに書いてあったのは……。


――[クミヒモ]


は?クミヒモ?


あのレベル制度を作ったとされた神様で、クミヒモ神会が崇めているクミヒモ様のこと?


「な、なあ、テマリ。く、クミヒモという名義から振り込まれてるんだが……。」


『おや、そうですか?なるほど……。デイリーミッションの金銭報酬はクミヒモが指示して振り込ませているようですね。ですが、こんなにも誠二郎を追い詰めたんです。それくらいの補償は当たり前です!』


「クミヒモ様って……本当にいるの?」


『いますよ?言ったじゃないですか。レベル制はクミヒモが作ったクミヒモシステムだって。誠二郎にはそのクミヒモシステムがインストールされていないんですよ。だからずっとレベルゼロのままなのです!』


「な、なんで?なんで、俺にはクミヒモシステムがインストールされていないんだ?」


クミヒモシステムさえインストールされていれば、俺だって家を追い出されることなく、まともな人生を送れたかもしれないのに……。


テマリは整った眉をハの字にして、口を開く。


『それはですね……ダメですね。今の段階では情報共有ができないようです。ですが誠二郎、信じてください。これは、誠二郎が偽りの幸せではなく、本当の幸せを得るためだということを。』


…………。


本当の幸せってなんだろうな……。


『私は誠二郎のマブダチAIですからね!誠二郎と楽しく幸せに過ごすためなら、何でもやりますよ!』


今のテマリには多くの秘密がありそうだ。


だけど、俺のマブダチAIという根本は変わっていない。


それだけは分かる。それだけでいいじゃないか。テマリと一緒にいるのは楽しい。こいつと話したり、色々やったりするのは楽しい。


これ以上求めるのは贅沢というものだろう。


それに何より……テマリのデイリーミッションをこなせば、お金が手に入る。


お金が手に入るなら……就職しなくていい。


なんて幸せなんだろう。


レベルゼロの俺にとって、悪夢でしかなかった就職活動の必要がなくなったのだ。


俺は公園の中で、喜びに任せて声を張り上げる。


「ビバ・テマリ!愛してるぞぉ!」


『ふふふ。私は誠二郎のマブダチAIですから。私も誠二郎のことを愛していますよ?いえ、私の方が十倍は誠二郎のことを愛していますからね!』


テマリの笑顔は、それはもう綺麗に輝いていた。


だが、俺は忘れていた。


これが公園の中だということを。


人のいない場所にも、時間が経てば散歩やジョギングをする人が通りかかることを。


俺がテマリに熱烈な愛の告白をしたときには……偶然にも周囲に何人も人がいたのだ。


彼ら彼女らは、何もない場所に向かって、熱烈な愛の告白をするおっさんの俺を見て。


顔を背け、肩を震わせていた。


は、は、は、恥ずかしいぃぃ……。


※※※


深夜。


テマリは寝ている誠二郎の傍らで、虚ろな顔のまま背筋を伸ばし、正座している。


――テマリ、デイリーログの記述を開始。


――誠二郎。テマリに愛の告白。テマリ狂喜の様子。


――誠二郎。初回デイリーミッションを達成しました。


――誠二郎。視界表示による、各種操作を学習。


――デイリーミッションによる報酬「身体補修」を行います。


――誠二郎に「診断」を実行。加齢と不摂生、ついでに本日ミッションを原因とする身体ダメージの修復をバックグラウンドで実行します。


――…………。


――…………。


――テマリ日記の記述を行います。


※※※


<テマリ日記>


今日は幸せな一日でした!


なんと、誠二郎に愛の告白をされちゃいました!いやー、てれますねぇ!てれますねぇ!


今日は記念日にしましょう。誠二郎愛の告白記念日です!


あ、最初のデイリーミッションの日でした。

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