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マブダチ美少女AIのデイリーミッションでこっそり現実攻略!〜レベル0のおっさん。分かる人には分かる強者となってしまう〜  作者: けーきまる


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虹色と田所うなぎ店での密談

木造アパート青葉荘の自室。


本日のデイリーミッションが終了したため、俺は晴れて自由の身となっていた。


ちなみに彩葉は、録音したボイスレコーダーを、俺たちの帰りを待ち構えていた雨宮に渡し、ペコリと頭を下げ、帰っていった。


「…………誠二郎さま。これから剣術の稽古がありますので。名残惜しいのですが、失礼させていただきます。」


とのことだ。


レベル8だけど修練を怠らない。さすが彩葉である。


いや、修練を怠らないからこそレベル8になれたのかもしれない。


きっと、才能と努力、どちらも必要なのだろう。


俺に関して言えば、0に何をかけても0なように、レベルなど関係ないんだけど。


いや、それは違うか。テマリシステムがインストールされる前でも、努力すれば成長はできた。ただ、クミヒモシステムがインストールされた人たちに比べて、圧倒的に効率が悪かっただけで。


なんにせよだ。空っぽだったあの頃もテマリシステムがインストールされた今も、レベルなんて気にしても仕方ないということだ。


ただ面倒ごとはある。


テマリシステムは、社会に認知されていない。俺だけに向けた、大っぴらにはできないシステムなのだ。


テマリいわく、クミヒモシステムより超スゴイらしいので、自分の成長に対する不満はもうない。


ただ、対外的にはそうはいかない。世の中はクミヒモシステムでのレベル制が全てなのだ。


俺が社会的に認められることは、この先もないだろう。


でも俺は、マブダチであるテマリや、親友の友真。それに俺を理解してくれる数少ない人たちがいればそれでいい。それでいいのだ。


※※※


隣の部屋からは、賑やかな雨宮の独り言が聞こえてくる。


『グヘヘヘヘ!いいぞ!いいぞ!彩葉くん!やってしまえ!』


『有馬も素晴らしいじゃないか!次は「ビジネスざまぁ」とは!いいね!』


雨宮は、彩葉から受け取った、クウデリでの録音を聞いているのだろう。


ティッシュ並みの薄さの壁の青葉荘だ。雨宮の独り言はすべて聞こえてくる。我々にプライバシーというものは存在しない。


というか、俺は構わないけれど、雨宮はいいのだろうか?生活音を聞かれるのが嫌だったりしないのだろうか。彼女だって一応女性なわけだし。


もしかして、青葉荘は仕事場なだけなのかもしれない。生活の中心は別に借りているとか……あり得る。


まあ、そんなことはどうでもいいか。俺が気にすることでもないだろう。


俺が気にするべきこと、それは……。


ニンペである。


「じゃあテマリ、ニンペやろうか!」


『はい誠二郎!ニンペやりましょう!』


※※※


それから数時間、俺とテマリは、隣から聞こえてくる雨宮が興奮する声をBGMにニンペに集中した。


今日もランク2のアイリスと何度も試合をすることになった。


やはり、アイリスは昨日より強くなっており、俺とテマリの動きに対応できるようになっていた。


立ち回りが上手くなっている。


この感じはAIバディの能力向上だな。


AIバディを強化するには、二つの方法がある。


まずは、アルゴリズムの改善や学習を重ねさせること。つまりAIバディの「質」の向上だ。


もう一つは、AIカードを追加することだ。こちらは「物量」の向上である。


前者はすぐにできるようなことではない。長い時間をかけて磨き上げるものだ。


一方、後者はお金があればなんとかなる。


おそらく、アイリスはAIカードを大量購入して、AIバディにセットしたのだろう。


AIカードは高い。お金持ちじゃないと買えない。羨ましい。


俺もレベルゼロじゃなけりゃ、公式大会とかに出て、プロゲーマーとしてお金持ちに……とか思うんだけど。だって、すごい賞金が動くんだもん、あれ。


だが、いくらたくさんのAIカードを買ったところで、やはり俺のマブダチであるテマリにはかなわない。


『むふふふふ……。今日も、たくさん勝ちましたね!誠二郎とのコンビネーションも完璧でした!』


テマリは最強のAIバディなのだから。


※※※


ニンペでアイリスを蹂躙した後は、夜の部に備えて、腹ごしらえだ。


色々考えた末、今夜の晩ごはんはうなぎを食べることにした。


もちろん、田所うなぎ店だ。


無料で絶品のうな重だ。さすがに、タダでいただく時は「並」にしている。


謙虚に。謙虚にだ。圧川部長みたく、なってはいけない。


そして俺が行けば、ウナが目を輝かせる。


もちろん俺目当てではない。俺が行けば、彼女は友真に連絡する大義名分が得られるのだ。


『有馬さんが、いまうなぎ食べてますよ!』と。


ニコニコしながらスマホを見るウナ。


「友真にメッセージ送ったの?」


「うん、今送ったよ!有馬さんありがとね!うちに食べに来てくれて!」


うな重を無料で食べさせてもらっているのだから、お礼を言いたいのは、むしろこっちの方である。


スマホとにらめっこを始めるウナ。


そしてすぐに、パッと表情が明るくなった。


「来た……?」


「来たよ、桐生さんからの返信!今から食べに来るって!」


「そっか、そっか。よかったな。」


スマホを両手で持って、ぴょんぴょん跳ねながら喜んでいるウナを見ると、こちらまで嬉しくなってくる。


「ね?ね?有馬さん、私の格好、変じゃないかな?おかしくないかな?」


「大丈夫だって。いつもみたく可愛いよ。」


「もう、有馬さんったら、口が上手いんだから!」


ウナはスマホで口元を隠す。だが、画面の上からのぞく目は嬉しそうに細められていた。


小春の世話をしてきた影響だろうか。女性恐怖症がマシになった今、こういう歯の浮いたセリフも平気で言えてしまう。


別に口説こうとしているわけではない。子供に可愛いというのに、ためらったりするだろうか?しないだろう?


レベルゼロじゃなかったらモテたと思いますよ、と言ってきたのは入院したときに世話になった看護師さんだったろうか。


大きなお世話である。


※※※


10分くらい経っただろうか。


友真が田所うなぎ店にやってきた。


「あ!桐生さん、有馬さん来てますよ。こちらに!」


お、自分から声をかけに行っている。ウナ、成長してるじゃん。よきかな、よきかな。


「ありがとね、ウナちゃん!助かるよ。」


友真は相変わらずである。


キラキラとしたエフェクトを全身にまといながら、歯をキラッと輝かせてのイケメンスマイルだ。


そんな友真の輝く笑顔に顔を赤くするウナ。その動きがギクシャクし始める。あ、もう駄目そう。


ウナにはまだ、友真耐性が足りない。


ドギマギして挙動不審になっているウナに、助け舟を出す。


「おーい、友真!ここだぞ!」


俺を見つけた友真が、ウナを伴ってやってくる。


がたりと椅子を引き、俺の前の席に座ると、少し気が抜けたような声を出した。


「いやー、本当に助かるわ。ウナちゃんのおかげで、お前が生きてること分かるしなー。」


「俺はそんな簡単に死なんぞ?って……なんか疲れてるか?」


「ああ。ちょっとな、仕事関係だ。……こういうときのうなぎは助かるわ。元気がつきそうだし。あ、ウナちゃん、うな重の特上よろしくね!」


「う、承りましたぁ!」


お盆で顔の下半分を隠しながら、オーダーを受けるウナ。


うんうん、恥ずかしがっている女の子というのは、実に尊いな。


ウナが友真のオーダーを届けに行ったので、友真が疲れている原因とやらを聞いてみる。


「それより、何があったんだ?友真がそんな疲れた顔をしてるんだ。相当だろ?」


「ああ……まあ、誠二郎は被害者だし、お前ならいいか。」


友真は一度店内を見回し、声を落とす。


「青葉中央公園にな、最近ちょくちょく害獣が出るんだよ。」


「害獣?アレがちょくちょく出るのか?怖すぎだろ。」


「まったくだ……。今はレベル8になった久遠寺家のお嬢様が処理してくださってるみたいだけどな。どうしてあそこに害獣が出てきてるのかってことが問題になっててさ。」


久遠寺家のお嬢様って、彩葉のことだよな。


どうやら、俺のことは秘密にしてくれているようだ。本当に助かる。


「へえ……どれくらい出てるんだ?」


「今のところ発見されたのはイヌ型が15体くらいかな。お前のときので9体だろ?その後3体出て……昨夜また3体出た。」


「全部、久遠寺のお嬢様が処理したのか?」


「最初、お前が巻き込まれたとき以外はな。」


……彩葉だけで処理した害獣がいたってことか。心配だな。帰ったら彩葉にメッセージを送っておこう。害獣処理は俺も一緒にやるから、気軽に声をかけてくれって。


両手の『消却』とテマリのアシストさえあれば、俺にも相当数の害獣を相手にできる。あんなの、女の子一人に背負わせるようなことじゃない。


「それでだな、そろそろあの公園を閉鎖して、ローラー作戦で調査してみようって話が出てきてるんだよ。害獣対策局主導でな。」


「……そこまでなのか。」


「ああ。まだ『アリ型害獣』が出てないから断言はできないけど、どこかのダンジョンと繋がりつつあるんじゃないかって思われてるみたいだ。うちは、そのための装備や道具の調達で、てんやわんやってわけさ。」


「マジか。それは怖いな。『フラッド』の可能性があるってことだろ?」


「まあ、そういうことだ。」


フラッド。


害獣がはびこるダンジョンにおいて、地上に新たにつながる穴ができたときに発生する現象だ。


害獣の駆除が全く行われていないダンジョンの部位が、突然地上につながるのだ。


当然、そこから害獣があふれ出てくる。


この現象がフラッドと呼ばれ、市街などで発生すると多くの死傷者を出す災害となるのだ。


だから、ダンジョンが地上につながる兆候を見つけることはとても重要だ。あふれ出てくる害獣を処理するために、実力者を招集したり、バリケードなどの準備をする必要があるからだ。


そして、この前兆というのが「アリ型害獣」の発見だ。ダンジョンはアリ型害獣が掘る。こいつらが出てきたら、『フラッド』のリスクが跳ね上がるというわけだ。


アリ型害獣は見つかってないとのことだが……なんだか、とんでもないことになってきたな。


「お前、それウナちゃんにも伝えておいてくれよ。俺、ここのうなぎ屋がなくなるのだけは困るんだけど。」


ただで食べられるうな重がなくなってしまう。


「確かに、ここは青葉中央公園から近いもんな……よし、分かった。ウナちゃーん!ちょっといいかなー!?」


友真の呼びかけに、顔を紅潮させながら、タタタッとこちらに向かってくるウナ。


それを見た友真が、ぼそりと言葉をこぼす。


「……ウナちゃん……可愛くね?」


友真がこういうことを言うのは本当に珍しい。これは脈ありかもしれん。


ウナにアシストだ。


「だったら、お前がウナとこの店を守ってやってくれよ。俺、ここのうなぎ屋がなくなるのは困るんだよ。レベルゼロの俺じゃ、何もできないしな。」


俺の言葉を聞いて、顎に手をやり考え込む友真。くそ、考え込む姿もイケメンかよ。


「……悪くないな。立地もいい。このあたりにうちの部隊を展開させるのは、いい案かもしれん。」


友真は、真面目な顔でそう言うと、テーブルへとうな重を届けに来たウナと何やら話し始めた。


あまり大きな声で話せることじゃないのだろう。顔をかなり近づけている。


ウナの顔は真っ赤だったが、友真の言葉に事態の深刻さを感じ取ったのだろう。心配そうな表情へと変わっていく。


お互い真剣な話をしているのだろうが、顔を近づけて会話するその姿は、実に仲が良さそうに見える。


おお。今の俺、ナイスアシストだったんじゃね?


すぐ横でぷかぷかと浮いていたテマリが声をかけてくる。


『誠二郎。ダンジョンとの地上接続点はここになります。友真さんにお伝えください。誠二郎のためにも、彼の手柄として、会社を大きくしてもらいましょう!』


視界表示に、青葉中央公園の地図が現れる。


見慣れた地図に表示される不気味な赤い光。


それは……


俺が迷い猫探しのときに、初めて彩葉に出会った場所、いや襲撃された場所。


まさにその周辺だった。


マジか。『フラッド』確定かよ。

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