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マブダチ美少女AIのデイリーミッションでこっそり現実攻略!〜レベル0のおっさん。分かる人には分かる強者となってしまう〜  作者: けーきまる


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虹色と二人だけの秘密

暗い夜の青葉中央公園の中。


害獣を三体倒し、一息ついていた時だった。


「…………誠二郎さま。お見事です。」


澄んだ綺麗な声が誠二郎の耳に響いてくる。


嫌な予感がして、その声の方に顔を向ける。


そして……そこにいたのは、やはり久遠寺彩葉だった。


俺は慌てて、黒く光る両手の「消却」を消す。幸いなことに、その黒い光は、消えろと念じたら消えてくれた。なかなか便利なシステムだ。


だけど、さすがに彩葉との遭遇率高すぎじゃないか?まさか青葉中央公園に住んでるとか……そんなわけないか。


さて、それよりもだ……彩葉にはどこから見られていた?まずはそこから確認しなければいけない。


軽い口調で、彩葉に声をかける。


「彩葉?どうしたんだ?キミみたいな子がこんな夜遅くにこんなところにいたらダメじゃないか。危ないぞ?」


軽く探りを入れてみる。まあ、彩葉はレベル8だ。彼女に何かしようとしたところで、その相手が痛い目を見るのが関の山なのだが。


「…………実は、公園の敷地内に害獣の気配を感じたので、処理しに来ました。誠二郎さまのおかげで、必要なかったようですが。」


害獣の気配だって?マジで?家からでもそんなものが感じられるのか?


黙る俺に、彩葉は眉をハの字にして、心配そうな表情になる。


「……よ、夜遊びしてたわけじゃないですよ?本当に自室にいたのです。レベル8になってから、距離があっても害獣の気配が感じ取れるようになりまして。」


なるほど。あの距離の害獣の気配が感じられるとは、やっぱりレベル8はとんでもない。


彩葉が真っ直ぐな瞳をこちらへと向けてくる。


「…………誠二郎さまの害獣との戦闘、お見事でした。消却器もなしに害獣のナノマシンを不活性化させてしまうなんて…………もしや事象記述操作というものですか?」


ぐっ。害獣との戦闘は見られていたみたいだ。まいった。どうやって誤魔化そう。これ以上のゴタゴタはゴメンだぞ。


それに、なんで事象記述操作のことを彼女が知っているんだ?俺はさっき初めて聞いたぞ?高レベルの方々には常識だったりするのか?


そこに、ぷかぷかと浮かぶテマリが口を挟んでくる。


『久遠寺家は古い家系ですからね。クミヒモシステムが普及する前、事象記述操作が普通に使われていた頃の記録が残っているのかもしれません。』


クミヒモシステムと事象記述操作?そのふたつに関係があるのか?


『ええ。クミヒモシステムがインストールされた者は、事象記述操作を直接使用することはできません。クミヒモシステムは容量が大きいので、人の事象記述領域をすべて埋めてしまうのです。事象記述操作を使える隙間がなくなってしまうのです。』


……クミヒモシステムってOSでメモリがいっぱいだから、事象記述操作ってアプリが動かないってことかな?


『そうです、そんな感じです!例えもうまいなんて、さすがに私のマブダチです!』


よせやい、照れるぜ。


そんな俺とテマリのやり取りをじっと見つめる彩葉。彩葉にはテマリが見えてないはずなのに、俺と俺の傍らの空間を交互に見ている。


「…………あの、どなたかがいらっしゃるのですか?」


しまった、彩葉を放置しすぎた。話を何とか誤魔化さなければ。


「ははは、一人ぼっちの時間が長くてさ。友達の幻がたまに見えるんだよ。えっと……事象記述操作だって?それはよく知らないけど、公園を散策していたら、害獣に襲われてさ。正直、必死でよく覚えていないんだ。」


こういうのは、知らぬ存ぜぬに限る。説明すると、ボロが出ちゃうに決まってるし。


「…………秘伝の御業なのですね。」


相変わらず、彩葉は俺を持ち上げすぎだ。


はあ……とため息をつく。それから改めて、彩葉の姿を見る。


シンプルなえんじ色のパジャマに、白いスニーカーを履いている。どうやら、部屋から飛び出してきたというのは本当のようだ。彼女の黒髪は、月明かりに照らされキラキラと光っていた。


だが、この時間に外に出てくる服装ではない。


「パジャマ姿は可愛いけど、夏とはいえ、寒いだろ?体を冷やしたらいけない。そんな格好で出てきちゃダメだ。さあ、もう帰りな?学園生が出歩いていい時間じゃない。」


俺は彼女に自分が羽織っていたカーディガンを掛けてやる。


「……よ、よろしいのですか?」


彼女は顔を赤くし、地面を見つめる。


「いいよ。でも今度返してね。俺、あんまりお金持ってないし。」


ゲーミングマシンのせいで、リアルにお金持ってないしな。


だが今日の稼ぎは、メインミッションの追加クリアで9万円だ。ひゃっぽい。


……さて、俺がこの件について話すつもりがないのは理解してもらえただろう。


あとは……この極めて難解で高度な問題について、彩葉に頼み込まなければいかない。


でないと、とんでもないことになってしまう。


俺はガバっと彩葉の前にひざまずく。そして土下座をした。


「彩葉、お願いだ!今夜のこと、内緒にしててくれえ!手が光ってたとか、秘密にしてくれえええ!」


クミヒモ神会にバレたらヤバい。あいつら、レベルゼロの俺がこんなことできるって知ったら、絶対に襲ってくる。


拉致監禁拷問される。


彩葉は、俺の土下座に狼狽しているようだった。わかる。わかるぞ。オッサンの土下座とか、見たくないよな。


だがこれだけは秘密にしてもらわなければならない。こちらも命がかかっているのだ。


「……せ、誠二郎さま、やめてください!土下座なんて、やめてください!言いません!言いませんから!」


「ほ、本当か?」


「……もちろんです!大恩のある誠二郎さまを売るようなことなど、絶対に、絶対にいたしません!」


強く言い切る彩葉。彼女が義理堅い子で、本当に良かった。


「俺たち、二人だけの秘密な?本当に、本当に頼むぞ?」


「……ふ、二人だけの秘密……?誠二郎さまとふたりだけの……ふたりだけのひみつ……?ぜ、ぜ、ぜ、絶対に守りますゆえ!」


拳を強く握りしめ、先程よりも力強く言葉を返してくれる彩葉。彼女は月明かりの下でも分かるほど、耳の先まで真っ赤になっていた。


あ、あれ……?また地雷踏んでしまった……?


ぷかぷかと浮いているテマリが、戸惑っている俺と、またゆでだこのように赤くなっている彩葉を見て、楽しげに言う。


『誠二郎はやっぱりタラシですね!誠二郎が彩葉さんを堂々と一人の女性として見れるようになってからが楽しみです!』


や、やめてくれ。


レベルゼロの俺に、変な期待や希望をいだかせないでくれ。


※※※


少し後。


素直に俺の言葉を聞いてくれたのか、彩葉は俺を追及することもなく、久遠寺邸へと戻ることになった。


「…………それでは、今夜はこれで。カーディガン、お返しに参りますね。」


そう言い残し、彩葉は、久遠寺邸の方角へと空を駆けていった。


ぴょん、ぴょん、と木から木へ飛び移っていくその姿は、まるでサル……ゴホンッ!いや、妖精のようだった。


…………。


さあ、今日やるべきことは全て終わった。俺は自由だ。


自室に戻り、絶対にニンペをする。新しいゲーミングマシンで。


本当にいろいろなことがあった。ありすぎた。


ニンペでそのストレスを発散してやるっ。今日はアイリスをボコボコにしてやるぞ。そんな気分だ。


※※※


<Ninpex ランク2 アイリス視点>


ムキーッ!なんなんですの!今日のSage、私にばかり粘着してきてません!?


私、何かやりました!?昨日までは、普通でしたよね!?


『HA!HA!HA!今日のSageは、アイリスにご執心のようだな。ランク1とランク2の戦い。配信でも、かなり注目されてるぞ!視聴者数爆増だ、もっとやれぇ!』


「う、うるさいですわ!5回に1回しか勝てないなんて、プライドズタズタですわ!」


くっ、やはり私自身だけじゃなくて、AIバディの性能を上げる必要もありそうです。これ以上の出費は痛いですが……もっともっとたくさんのAIカードを追加しないといけませんわね!


アイリスも誠二郎と同じく、無一文になりつつあったのだった。


※※※


深夜。


今夜のテマリは、虹色の瞳を光らせながら、いびきをかく誠二郎の背中にピトッと張り付き、添い寝をしていた。


――デイリーミッションによる報酬「身体補修」を行います。


――誠二郎に「診断」を実行。加齢と不摂生、ついでに本日のミッションを原因とする……


――誠二郎。メインミッションを達成しました。


――メインミッションによる報酬「行動最適化」を行います。


――誠二郎の「情報指向性弁」、第三門を解放します。


――事象記述操作「消却」を、実戦において初使用。両手での「消却」同時使用を確認。「行動最適化」による情報指向性弁の解放と、それに伴う情報指向性の上昇が起因と推測。


――今後も誠二郎の体に無理のないよう、慎重に情報指向性弁の解放をスケジューリングします。


――害獣三体のみだったため、事象記述操作「超消却」は使用せず。


――…………。


――…………。


――テマリ日記の記述を実行します。


※※※


<テマリ日記>


今日の誠二郎は最強でした!


両手に黒い光を宿し、害獣を次々と倒してしまうその姿……


イカしてました!しびれます!ゲーミング誠二郎、ここにありです!


それに、今日の誠二郎は、私の失策もフォローしてくれました!キュンキュンしちゃいましたね!


私も今は15歳のうら若き乙女です!あんなイカしたクールガイ、夢中になっちゃうのも無理はありません!


うーん……。クミヒモにバイオロイドの実体ボディを作らせるのもいいかもしれませんね。


こちらはクミヒモの尻拭いをしてやっているのです。それくらいのことを要求する権利はあると思うのです。


ですが……誠二郎と関係を持つのは、やはりマブダチとしてはライン越えでしょう。


もどかしい。もどかしいですが……ラインを踏み越えないからこそ至れる、深い深いマブダチフィールドがあると思うのです。


私はそちらを突き進んでみせましょう!

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