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マブダチ美少女AIのデイリーミッションでこっそり現実攻略!〜レベル0のおっさん。分かる人には分かる強者となってしまう〜  作者: けーきまる


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虹色とノリノリな小説家

<有馬小春視点>


誠二郎おじさんと知らない女の人のいかがわしいやり取りが、ドアの向こうから聞こえてくる。


『ああ、もうダメだ!出ちゃう!出てしまう!』


『ムフフフ……出ちゃうのか?出しちゃえ!出しちゃえよ!』


外に丸聞こえである。


こんなの、通報されたりしないのだろうか?警察に捕まったりしないのだろうか。


古い木造建築のアパートだとはいえ……青葉荘、どれだけ壁が薄いんだろう。


彩葉さまから放たれる圧迫感がフッと消える。


目を虚ろにし、刀に手をかける彼女。


銘刀綾取(あやとり)。彩葉さまの愛刀だ。


そしてそれを……鞘から引き抜いた。


止める間もなかった。


彩葉さまの刀がキラリと煌めく。


直後、おじさんの部屋のドアは細切れにされていた。


これが……レベル8の本気の剣閃。全く見えなかった。


そして部屋の中には、握手をしている二人。


目をぎゅっと閉じて歯を食いしばっている誠二郎おじさん。


もう一人はメガネの奥からこちらを驚きの視線でみつめてくる、すらっとした女性だった。


それを見た彩葉さまは、二人が握り合う手へ視線を落とし、自分の勘違いを瞬時に理解したのだろう。


静かにおじさんの部屋の玄関まで移動し、膝をついた。


「い、彩葉さま?」


なめらかな動きで頭を下げた。土下座である。それはもう見事な土下座だった。


さすがレベル8。土下座も様になっていた。土下座レベル8である。


ってそうじゃない。そうじゃないだろ、私。


「い、彩葉さまぁぁぁ!」


※※※


時は遡る。


「き、き、き、きゃああああああああ!!!!!!!!」


取材対象として独占しようと興奮する雨宮に抱きつかれ、悲鳴を上げる俺。


はっと気づき、俺を解放する雨宮。


「す、すまん。つい、興奮してしまった」


はっ!はっ!はっ!はっ!はあ!はぁ!


なんとか呼吸を整える。


「ふぅ……。い、いや、こっちこそすまん。俺だって、雨宮みたいな綺麗な女性に抱きつかれて、本当は嬉しいんだよ。で、でも体が受け付けないんだ。」


ドクッドクッとうるさい胸を押さえながら、そう雨宮に伝える。


彼女は悪くない。悪くないんだ。俺が普通じゃないだけなんだ。


雨宮が心配そうに聞いてくる。


「有馬……女性恐怖症って、キミ、今まで何があったんだ?」


聞いちゃう?それ聞いちゃう?悲しい悲しい話だぞ?


ふーっと息を整えた俺は、ぼそりぼそりと雨宮の問いかけに答えた。


「色々あったさ……まずウソ告白だろ?痴漢冤罪だろ?美人局だろ?あと……」


次々と俺の口から明かされる、女性恐怖症の原因に、雨宮の顔が青くなり、ひきつっていく。


「一番痛かったのは、付き合ってた幼なじみが俺がレベルゼロだと分かった瞬間、手のひらを返して他の男と付き合いはじめたときだな。ベタベタしている様子を俺に見せつけるようにしてきたときは……なんて邪悪な生き物だろうって思ったよ。」


短く沈黙する雨宮。


「……そりゃ、仕方ない。キミがそうなっちゃうのも無理ない。有馬、キミの女運、悪すぎだろ……」


申し訳なさそうにしている雨宮。同性として思うところがあるのだろうか。


でも雨宮が悪いわけじゃない。雨宮は壁ドンしたくらいだ。


正直、雨宮は小春の次くらいに、俺にとって付き合いやすい相手だ。


「そう、色々あったんだよ……」


そういえば、小春以外の女の人にこのことを話したのは初めてだったかも。やっぱり女性から見ても酷い話なんだな。


畳に座りこみ、天井を見上げる。


そこにはぷかぷかと浮いている、テマリがいた。


まあ、今の俺には信頼できるマブダチがいる。過去のことなんて気にしても仕方ない。仕方ないんだけど、体が受け付けないんだよな。


『私は超美少女で性別はカテゴリ上、女性ですけど、何があってもずっと誠二郎の味方ですからね!マブダチですから!』


必死な様子で俺に訴えかけてくるテマリ。


わかってるって。あんな連中のことなんて、考えるだけ無駄だ。正直、全て忘れてしまいたい。


そう言えば……今日のデイリーミッションまだだったな。軽いのだといいんだけど。


デイリーミッションをお願いしていいか?


俺の視線を受け、テマリが頷く。テマリが言うには、こういう言語外の意思疎通がスムーズになるのも、テマリシステムへの適合度が上がっている証拠とのことだ。


『デイリーミッションですね!行きますよ!』


ドゥルルルルル……。


パンパカパーン!


――――『30秒間女性と握手をせよ。』


女性恐怖症関連、今来るか。ミッションさん、空気読めなさすぎだろ。あとスパルタが過ぎない?もうちょっと俺に優しくしてくれよ。


だけど、ある意味都合が良かったのかもしれない。今ここには雨宮がいる。


彼女は俺に女性恐怖症の理由について聞いてしまったことに負い目があるようだ。哀れむ視線をこちらに向け、珍しく居心地悪そうにしていた。


弱みにつけ込むようで申し訳ないが、ミッション達成のための協力をお願いしよう。


「なあ雨宮、ニンペに関してはあとでプレイしてるところ見せるからさ……」


そして、一呼吸おき、続ける。


「少しだけ……いや、30秒間俺と握手してくれないか?」


雨宮は顔を明るくする。


「女性恐怖症克服のためか?」


「ああ、そろそろ直さないとダメだなって思ってるんだよね。いいかげん、みっともないし。」


雨宮はキラキラと目を輝かせる。


「うむ!うむ!それでこそ有馬だ!努力で自分を変えていく……素晴らしい!まるでキミは物語の主人公のようだな!」


そして少しだけ顔を紅潮させ、俺に手を出してくる。


「握手だな!ボクでよければ喜んで!」


ニコニコ顔の雨宮の伸ばした手に、恐る恐る、手を重ねる。


ゆっくりと握られる、二人の手。


彼女の手は小さく、握った手のひらはすべすべで、とても柔らかかった。


小さな喜びや高揚とともに、全身に走る鳥肌と拒絶反応。だが俺は耐える、必死に堪える。う、うぐぐぐ……雨宮の善意を無駄にしてなるものか……。


そして、交わされたのが先ほどのいかがわしく聞こえる会話なのだった。


「ほら……ほら……これならどうだ?こんなのはどうだ?」


握手しながら、親指で俺の手の甲をさすってくる雨宮。


「ぐうっ!うはっ!ああっ!待って、限界!限界かも!」


「こんなので限界なのかい?有馬、キミは情けないな!もうギブアップなのかい!?恥ずかしくないのかい!?」


雨宮の親指はモゾモゾとうごき、俺の親指と人差し指の間に潜り込もうとしてくる。雨宮の鼻息は荒くなっていた。しゅ、趣旨が変わってない?


ただ握手してくれるだけでいいのにっ。


「ああ、もうダメだ!出ちゃう!出てしまう!」


出てしまう。あの、情けない悲鳴が出てしまう。


「ムフフフ……出ちゃうのか?出しちゃえ!出しちゃえよ!」


雨宮はノリノリだ。


歯を食いしばりタイマーを見る。あと5秒。あと5秒の我慢だ。


5……4……3


ぐぐぅ……。時間の流れが遅い。


ガタガタという音が玄関の方から聞こえてくる。何かが下に落ちる音だ。


だが今はそれどころではない。あと2秒。


2……1……ピピピピピ……。


『誠二郎、デイリーミッション達成です!おめでとうございます!』


底抜けに明るい、テマリの声が響く。


その声に、握手していた二人の手が下に落ちる。俺は疲れ果て、その場にへたり込んだ。


なんとか雨宮を見あげる。


「……雨宮、ありがとうな。君のおかげで、少しだけ女性恐怖症が克服できた気がする。また……思いついたことを、お願いしていいか?」


きっと、ミッションさんは女性恐怖症克服のための似たような指示をまた俺に出してくることだろう。そのとき、雨宮がいれば、相手を探さずに済む。これは素晴らしい。


雨宮は玄関の方を見ていた。そして何とも言えない顔で俺へ向き直り、顎でそちらを指す。


「私は一向に構わないのだが……彼女たちはどうするのだね?」


玄関に立っていたのは、「あはは……」と申し訳なさそうに笑う小春と、土下座している彩葉だった。


なんだ?なんで彩葉がウチの玄関で土下座しているんだ?

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