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マブダチ美少女AIのデイリーミッションでこっそり現実攻略!〜レベル0のおっさん。分かる人には分かる強者となってしまう〜  作者: けーきまる


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虹色と久遠寺家からの逃亡

「き、き、き、きゃああああああああ!!!!!!!!」


俺の野太い声に驚いたのか、彩葉が我に返る。


そして、俺を抱擁レベル8から解放し、少しだけ距離を取った。


「…………も、申し訳ございません。私、舞い上がってしまって。」


俺の拒絶を感じ取ったのだろう。彩葉は胸元で両手を握り、俺から視線を外す。


はあ……はあ……。


肩で呼吸をしながら考える。


普通の男としては嬉しいはずの彩葉の行動だ。


俺みたいなおっさんにひどい拒絶反応を示されて、傷ついたのかもしれない。


はあ……はあ……。


ご、誤解を解かないとな。なんとか息を整え、口を開く。


「い、いや。こっちこそごめん。」


謝っても、彩葉は唇を結んだままだ。


せっかくレベル8になったんだ、そんな顔をしてちゃダメだ。こんな真剣な少女の成長に水を差すなんて、あってはダメだ。


仕方ない、恥ずかしいけど、本当のことを話そう。


「へ、変な声を出してごめんな。実は俺、女性恐怖症なんだよ。」


「…………じょ、女性恐怖症ですか?」


「ああ。だから別に、彩葉だからこうなったってわけじゃないんだ。女性に触れられると、大抵こうなる。驚かせてごめんな?」


「…………いえ、有馬さまにそんなご事情があったとは。それなのに私に稽古をつけてくださるなんて。」


彩葉は胸元の手をほどきかけ、また握り直した。


「ま、俺のこれは昔からのことだ!それよりも彩葉、レベル8になったんだろ!?」


「…………はい。すべて、有馬さまのおかげです。何か……私の中にあった固定概念が取り払われるのを感じました。たぶん、それがきっかけだったのだと思います。」


「そうか。レベル0の俺が言うのもなんだけど、おめでとうな!」


俺がそう言い、彩葉に笑顔が戻ったときのことだった。


「彩葉!大丈夫か!」


道場に入ってきたのは、精悍な男性と綺麗な女性だった。


二人とも彩葉に慌てて駆け寄り、俺から彩葉を守るように、前に出る。


「き、貴様……この低レベルが!彩葉に何をした!」


「ま、待ってくださいよ!彩葉みたいな高レベルに、俺が何かできるわけないじゃないですか!」


「問答無用!」


男は刀を抜き、俺へと一直線に突進してきた。


し、真剣だと?まずい。


『誠二郎!!避けた方に薙ぎ払いをかけてきます!フェイントを!』


男の突進は速い。速いが……彩葉ほどではない。


刀を持った男の突進を右に避けるように、重心をずらす。その剣撃が、右方向へと放たれる。


シュッ!


だが、それは遅かった。俺が右に避けるように見せかけた瞬間、バックステップでその攻撃を回避する。


こういうのは攻撃の直後が隙になるものだ。すぐに前へと踏み出し、男の手首を掴む。


「くっ!き、貴様……!」


低レベルの俺に斬撃を見切られたのが悔しかったのだろう。男は額に血管を浮かべている。


彩葉が大声を上げる。


「……お父さま!!有馬さまになんてことをなさるのです!」


そして、女性の手を振り払い、こちらへ駆けてくる。


「…………有馬さま、お怪我などありませんでしょうか?」


「大丈夫、問題ないよ。」


やっぱり高レベルの人間に関わると、ろくなことはない。あ、友真は別だけど。雨宮は……どうかな?


『誠二郎!さすがですね!真剣を前に、あの冷静な立ち振る舞い。マブダチとして誇らしいです!』


テマリ……お前、俺のこと助けられたろ?


俺は知っている。こいつが空中に壁のようなものを出せるのを。害獣に襲われているときに見たし。


『もちろん可能です。ですが、マブダチの成長の機会を奪うなんて、そんなのマブダチではありません!私は、誠二郎が本当に危険なときは助けますよ!』


まあ、確かにそうか。


マブダチはお互い高め合う関係だもんな。俺がテマリのおんぶに抱っこじゃダメか。


さて……彩葉がかばってくれたし、もう大丈夫だよな?


俺はゆっくりと男の手を離す。


お父さまって言ってたし、彩葉のご両親なのだろう。


「では……そろそろ失礼させていただきます。彩葉もまたね。レベル8おめでとう。」


「レベル8だと!?」


男は彩葉へ振り返り、彩葉の後ろにいる女性も動きを止めた。


その隙を逃さなかった。三十六計逃げるに如かず。


道場の外へと、ダッと駆け出す。


彩葉が追いかけてきているような気がしたが、俺は止まらない。止まれない。


こんなところに長居してたまるか。命がいくつあっても足りない。もうミッションは成功した。


三万円はゲットしたのだ。入金も確認済みだ。


人が集まってくる気配がする。くそ、このままじゃ囲まれる。逃げられない。


もう、こんなとこ嫌だ。俺は家に帰る。はやく帰ってニンペをするんだ。


「テマリ!足にちょっとだけ『強化』頼めるか!?できれば、明日動ける感じに頼む!」


『誠二郎の頼みとあらば、仕方ありませんね!今回の報酬には身体補修が入ってましたし、「強化」の副作用も一緒に治してくれるでしょう。では、足だけ軽めにいきますよ!』


テマリがそう言うと、俺の足がぼうっと淡い虹色に光る。


瞬間、今までの数倍の加速が体にかかったのを感じる。


「よし、このまま、塀を飛び越えるぞ。そして帰る!家に!ニンペをやるんだ!」


『絶対に家に帰ってやるという、その強い意志!さすが陰の鏡です!それでこそ誠二郎です!誠二郎の愛機での最後のプレイが待ってますもんね!』


陰の鏡は余計だが、大方そのとおりだ。あのゲーミングノートで、最後の思い出プレイをするのだ。


まってろよ、俺のゲーミングノート。


俺とテマリで、ランク1のプレイを見せつけてやるからな。


そして、夜の気持ちいい風を感じながら、久遠寺邸の塀を飛び越えたのだった。


※※※


<久遠寺彩葉視点>


……ああ、行ってしまわれました。


屋敷の塀を乗り越え、夜の闇へと消えてしまった、有馬さま。


目に涙がにじんでくる。


私はまた、恩人になんて仕打ちを……。


素足で、庭先に立ち尽くしている私に、お父さまとお母さまが駆け寄ってくる。


「彩葉!レベル8になったってのは本当なのか!?」


「すごいじゃない!レベル8なんて、この国にも十人といないのでしょう!」


確かに、私はレベル8になった。だが、それは有馬さまのおかげだ。


「それにしても、あの男はなんなんだ!?今からでも久遠寺家の総力を挙げて追いかけたほうが……!」


「……やめてください!」


私の大声に、お父さまとお母さまの声が止まる。


お母さまが私へ伸ばしかけた手を止める。その仕草さえ、今は不快でしかたない。


……何で、お父さまもお母さまも、有馬さまのことを知らないんだろう。以前、害獣から私の命を守ってくれたのも、有馬さまだったのに!


きっと、有馬さまが低レベルの人間だったから、軽く書類を見た程度で済ませたのだ。でなければ、有馬さまのお見舞いくらいには行ったはずだ。


……どうして……有馬さまがいったい何をしたというのですか……!レベルゼロがなんだというのですか!


有馬さまは私のために稽古をつけてくれた。そのおかげで私はレベル8になれた。それなのに……私は、お父様の、真剣で斬りつけるなどという凶行を止められなかった。


有馬さまのレベルはゼロだ。


彼の身体はおそらく、レベルの高い私なんかとは比べものにならないほど脆弱なはず。


実際に害獣に襲われたときも、私はすぐに回復していたが、彼は入院していた。


だけど有馬さまは、レベル6のお父さまの斬撃を避け、その手を押さえた。


まさに強者。最適な行動を選択すること。それだけを極めた強者。


でも、もしも……もしも……お父さまの真剣での斬撃が当たったら、有馬さまは真っ二つになっていたかも知れない。


背筋に冷たいものが走る。


ダメだ、そんなこと絶対に許せない。


目元を手の甲で拭い、背筋を伸ばす。お父さまとお母さま、そして周りに集まってきた使用人たちを見渡す。


「…………有馬さまは、害獣から私の命を救った恩人であり、レベル8へと導いてくれたお方です!今後、久遠寺家の者は、有馬さまのことを害することを禁止します!低レベル呼びなどの侮辱も一切許しません!久遠寺家の恩人!久遠寺家の客人と考えなさい!もし逆らった者は……」


私はレベル8の威圧を周囲にばらまく。


ゾワッと、空気が揺れる。


「…………私が斬ります。」


この社会は、レベル社会。たとえ親であろうともレベル8である彩葉には、もう逆らえなかった。


ある夜、久遠寺家にレベル8の人間が現れた。


だが……。


その夜に何があったのか。久遠寺家の者で、語りたがる者はいなかった。


※※※


六畳一間。憩いの我が自室。


俺はテマリとニンペをプレイしていた。


『誠二郎!ランク2のアイリスが来ました!要注意です!』


「来た、来た、来た!さっきは負けたけど、次は勝つ!!」


相手もこちらへの対策を練ってきたのだろう。


勝率は今、五分五分となっている。


だがそれでこそゲームだ。


勝ったり負けたりする。そこが面白いのだ。


「いくぞ、テマリ!今回は長めの潜伏を試してみる!」


『了解です、誠二郎!私たちのマブダチパワーを見せてやりましょう!』


ニンペに入り込む俺とテマリ。


俺たちはもう、久遠寺家であったことなど、綺麗サッパリ忘れていたのだった。


※※※


深夜。


虚ろな虹色の瞳が、寝ている誠二郎を見つめる。


――デイリーミッションによる報酬「身体補修」を行います。


――誠二郎に「診断」を実行。加齢と不摂生、ついでに本日のミッションを原因とする……


――「強化」における事象記述回路の修復を確認。問題なし。


――…………。


――…………。


――テマリ日記の記述を実行します。


※※※


<テマリ日記>


今日も誠二郎は最高でした!


何より、私のアシストなしに『小さな声』を聞くことができたのです!自らのゴールデンボールを守るために!


彩葉さんも、躊躇なく誠二郎のアソコをねらうとは……。まさに実践派ですね!誠二郎の成長に貢献していただいたのは、感謝しかありません!


それにしても、低レベル低レベルと、本当にうるさい蝿ばかりです!絶対に、いつかギャフンと言わせてやりましょう!


明日は誠二郎の血と汗と涙の結晶。80万円のゲーミングPCが到着します。


最高の環境で、最高のマブダチとプレイするニンペ……たのしみすぎますね!

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