【南北朝の終焉とその後の火種編】第五段 明より冊封のこと
【南北朝の終焉とその後の火種編】第五段 明より冊封のこと
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いよいよ役目に就いて最初に見た出来事なんだが、これがなかなか皮肉の効いた話でな。片方では祝い事、もう片方では負け戦、というのが同時に起きたのだから、下界というのはつくづく人の思い通りにはいかぬものだと、しみじみ思わされた。これは大事なことなので、篁様への報告書としてまとめておく。
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篁様へ申し上げ候。
此度、下界にて見届け候仔細、左の如くに候。
南朝方の懐良親王、かねてより九州にて勢威を張られ候えども、~~~~~~~~~
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現代語訳
篁様、報告します。
今回、下界で見た出来事はこんな感じです。
南朝の懐良親王が、これまで九州で勢力を張ってたんですが、今回、明の国からわざわざ使者が来て「日本国王」の称号をもらいました。理由は、倭寇っていう海賊集団が明の沿岸を荒らし回ってて、それに手を焼いた明が「その海賊を何とか取り締まってくれるなら、あんたを日本の代表として認めるよ」って持ちかけてきた、というわけです。
親王からすれば、南朝の権威が遠く海の向こうにまで認められたわけで、そりゃあ鼻が高かったとおもいます。
ところが皮肉なもので、その翌年には、北朝・幕府側から派遣された今川了俊っていう男が九州に攻め込んできて、親王の本拠地だった大宰府をあっさり落としてしまったんです。祝い事に浮かれてる裏で、足元がもう崩れかけてたわけで……こういうのを見せられると、人の世の先行きなんて本当に読めないものだと、つくづく思い知らされます。
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……というわけで、明から「国王」と認められたその翌年に、肝心の拠点を奪われるというのだから、笑うに笑えない話だ。生きていた頃の我なら、こういう巡り合わせを見ては「あはれ」だの何だのと簡単に片付けていたかもしれない。だが、こうして実際に下界を見張る身になってみると、当事者たちの必死さがよく分かる分、単なる無常の一言では済ませられない気持ちにもなる。




