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【南北朝の終焉とその後の火種編】第三段 兼好、召喚さるること

【南北朝の終焉とその後の火種編】第三段 兼好、召喚さるること


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さて、ここからはようやく我自身の話になる。

ある日――いや、冥府に「日」という区切りがあるのかどうかも定かではないんだが、便宜上そう言っておく――突然、見知らぬ使いの者がやってきて、「閻魔様が御前へお呼びである」と告げられた。

正直、面食らった。死んでからというもの、我はそれなりに静かに過ごしていたつもりだった。生前さんざん「世は無常、無常」と書き散らしてきた身としては、死んだ後くらいはのんびりさせてもらえるものだと、勝手にそう思い込んでいたのだ。それがいきなり閻魔様のお呼び出しとくれば、心中穏やかではいられない。

「何か悪事でも働いたか」と、我が身を振り返ってはみたものの、これといって思い当たる節もない。強いて言えば、生前あれこれと他人の振る舞いに苦言を呈しすぎたきらいはあるが、それを咎められるのだとしたら随分と理不尽な話だ。

そんな心持ちのまま御前に参上すると、そこには噂に聞く閻魔様が、思っていたよりずっと落ち着いた様子で座しておられた。傍らには、立ち姿が凛としていて美しい男性がおられた。この方が、生前より歌人として、また学者としてその名を知らぬ者なき、あの小野篁様であった。

まさか小野篁様と、こうして相まみえることになろうとは。百人一首にも歌の残る、あの伝説の御方だ。昼は朝廷に仕え、夜は冥府にて閻魔様の裁きを補佐していたという噂、生前に幾度となく耳にしたことがあるが、まさかそれが本当のことで、しかもこうして自分がその御方の下で働くことになろうとは、夢にも思わなんだ。

閻魔様は我の顔をしげしげと眺めて、こう仰った。

「そなたが吉田兼好か。篁が申すには、世間を見るのが好きな性分だそうだな」

「は、はあ……好きと申しますか、まあ、そういう質ではございました」

我ながら間の抜けた返事をしたものだと思うが、何しろこちらは事情が飲み込めていない。すると閻魔様は続けてこう仰った。

「近頃、下界の見張りが足りぬでな。そなたには、これより下界の様子を見張り、篁の下で働いてもらう」

これを聞いた時の我の心境ときたら、驚きの一言に尽きる。死んでからも仕事をするとは、一体誰が想像しただろうか。生前、あれほど「つれづれなるままに」と暇を持て余すことを美徳のように書いていた男が、まさか死後に「役目」を仰せつかることになろうとは。

とはいえ、閻魔様の御前で「嫌にございます」などと言えるはずもなく、我は「謹んでお受けいたします」と頭を下げるより他になかった。

こうして我の下界監視の任は始まったわけだが、思えばこれも一興かもしれぬと、この時にはまだそんな呑気なことを考えていた。


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