【南北朝の終焉とその後の火種編】第二段 篁様、我を推す
【南北朝の終焉とその後の火種編】第二段 篁様、我を推す
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これも後になって篁様から聞いた話なんだが、我を推薦した時のやり取りがなかなか振るっていたので、ここに書いておこうと思う。
閻魔様に「心当たりがある」と言った篁様に、閻魔様はすぐさま「誰だ」と尋ねたそうだ。篁様はこう答えたという。
「吉田兼好という者にございます。生前は歌人にして随筆家、『徒然草』という書を残しております」
「徒然草とな。どのような書か」
「はい。これがなかなかの変わり者でして……世間の些事から人の心の機微まで、実によく見ておりました。人の噂話一つとっても、ただ聞き流すのではなく、そこに何があったのか、何が本当で何が誇張かを、いちいち吟味せねば気が済まぬ性分でございます」
閻魔様は少し面白がるような調子で「ほう」と仰ったそうだ。篁様はさらに続けた。
「几帳面なることこの上なく、些細な言葉遣いの乱れにすら苦言を呈するほどにて。加えて、俗世の栄華にも権勢にもさして執着せず、むしろそうしたものの儚さを好んで書き記す性分。下界の有様を、私情を交えず淡々と見張るには、うってつけの人材かと存じます」
これを聞いて、我は思わず苦笑いしてしまった。篁様、我のことをよくもまあそこまで見抜いていたものだ。生前は誰かに評価されるために書いていたわけでは全くなかったんだが、まさか死んでからこんな形で「実績」として引き合いに出されるとは。
閻魔様は帳面に何やら書き付けながら、こう仰ったそうだ。
「よき。その者、すぐに呼び出せ。」
こうして、我の与り知らぬところで話はどんどん進んでいったわけだ。次の段では、いよいよ我自身が閻魔様の御前に呼び出される場面を書こうと思う。正直なところ、当時の我の心境は「戸惑い」の一言に尽きるのだが、それはまた次で。




