第3話 放浪する二人 1
おはようございます。
投稿です。
その時、赤子が泣きだした。
顔を真っ赤にし、手足を動かし、何かを叫ぶように!
ゴーストは周囲を彷徨うだけで、何も出来ない。
《ああ、私の赤ちゃん!》
この言葉がユウバのキーワードだった。
電脳呪縛による記憶の封印。
その呪縛が解放された今、数々の記憶が蘇ってきた。
「どこかで……聞いた言葉……」
ああ、そうだ、呪縛が解けたから、思い出したのだ。
封印されていた家族の記憶。
何度削除されても蘇ってくる場面。
パンッ!
銃声が響く。
そうだ!私はマシンダガンの適合者だったから、母親と引き離されたのだ。
そして母さんは……。
パンッ!
「私の赤ちゃん!」
《きさま、これは共和国大統領命令だぞッ!》
《消せ、後々面倒になる》
パンッ!
ユウバは愕然として自分のボディーを見る。
機械の身体。
人工筋肉に装甲板、強靱な身体だ。
最早人族であったころの血肉は一欠片も残っていない。
全て金属と合成体液に置換されているのだ。
「私の赤ちゃん!」
もう私は、お母さんとの繋がりは何も無いのだ。
なんで生れてすぐの記憶があるのだろう?
そう思った瞬間、脳内検索が始まり、答えが出てきた。
(高魔力?母親との絆?ああ、お母さんの思いが私に伝わって残っているんだ)
一瞬、聖女の残留思念があの時の母親と重なる。
巨大なドラゴンは地響きと伴に大地に降りた。
ドラゴンに比べれば、赤子なんてゴマ粒みたいなモノだ。
だが、その魔力は軽くドラゴンを凌駕する。
牙だらけの口が、赤子を呑み込もうと迫る。
(食べてる隙間に逃げよう!)
そう考えるが、足が動かない。
思考とは別に、感情が膨れ上がる。不条理に対する感情だ。
身体や記憶、感情を奪われ、命令のままの行動。
思い出しただけでも、悔しさや悲しさで心が潰れそうになる。
ゴーストはドラゴンの前に立ち、両手を広げる。
《誰か!》
(思念だけだ、あのゴーストに明確な意思はない、何の力も無い……)
ばくん!
大地諸共、赤子をその口に収めるドラゴン!
ゴーストは両手を広げたまま、立ち尽くしている。
プチ。
(なんか切れた?)
食べられた赤子が、自分のような気がした。
ゴーストの姿とユウバの母親の姿が重なる。
(バグかな?感情が制御できない?)
あまりの怒りに、自分が母親なのか子供なのか分からなくなる。
冷静で感情の起伏が少なく、保守的なマシンダガンのユウバ。
唯一、その感情が爆発するのは閉所恐怖症の時だけだ。
《私の赤ちゃん!》
数十年にわたり、呪縛されてきたユウバ。
ユウバは気づいていなかった。
自分の中に目覚めた者を。
その電脳呪縛から解放されたとき、抑圧されてきた人格が動き出したのだ。
それは、お母さんが大好きで、子供や動物が大好きな本来のユウバ。
子供を奪い返そうと、政府高官のマシンダガンに挑むお父さん。
パンッ!
軽い音が耳に残る。
全てが脳内で再現される。
数々のシーンがフラッシュバックする。
「……私を洗脳するために、残していたデーターか?」
怒りは怒りを超え、その怒りは目の前のドラゴンに向けられた。
「……バ……バ……バ……」
身体が小刻みに震え、装甲板が展開を始める。
「バトルモードッ!」
使用可能な武器が全身から溢れ出す!
武装展開に両脚は耐えきれず折れたが、痛みは感じなかった。
今は全力でドラゴンに挑む!それだけである!
出来れば木曜日の夜に投稿したかったのですが。
今回はこの時間になりました。




