第39話 選択の無い世界
おはようございます。
投稿です。
「……ゴ、ゴゴガラダゼッ!」
(出すわけないだろ?)
(ですな、若)
「出すわけないじゃろ?」
ガガガガッ!
医療ポットが振動し始める!
「一の君、これは?」
「ポッド内で血液浄化を強めた、その結果じゃろ」
「だ、大丈夫なのですか?その、勇者の力を使って破壊とか?」
「呪いでは勇者の力を100%発揮することはできない。命令は実行するが、力は制御しておる。まぁささやかな抵抗じゃな」
「忌々ジイ勇者メ!アレボド目ノ前デ聖女ヲ弄ンダノニ!コイズハ精神ヲ病マナイ!ナゼゴイヅノ心バ壊デナイ!?」
「勇者の肉体を完全に乗っ取る気か?」
「乗ッ取ル?クダラン!」
「では何を望む?」
「聖女ヲ廃人ニ堕ドシ、勇者ヲ壊ズ!コレホド痛快ナゴトハアルマイ?」
(ゴンザ、こいつぶん殴っていいか?久々にキレたぞ)
(喋っているのは呪符の主ではありませぬ、おそらく呪いが形をとっただけの存在)
(式神みたいなものか?)
(おそらく)
「呪符の意思が強く出ているなぁ、このまま進めれば呪いは解けるのじゃが……まぁ理論上だが……」
((!))
(き、聞いたかゴンザ!)
(まさか!?この呪いを解く!?ならば若の呪いもっ!?)
「解ける……のですか?」
「解ける……このままポッドで浄化を続ければ、呪われた血と骨が分解され塵になる」
「え?」
「身体から血と骨が無くなるということだ」
((!!))
(死んじゃうじゃん!)
(パーフェクトではありませんな)
「それは……死では?」
「そうだ、ワシの望む結果では無い」
ガタガタガタッ!
医療ポットが激しく動き始める。
ここでエリ・ナリ隊長はそっと、白黒ネコを降ろした。
「逃げなさい、ここは危険です」
優しい声と目。
白黒ネコは、じっとエリ・ナリを見上げ、見つめる。
「ナァーン」
「動けないの?」
「ナァーゴ」
周りを見るが、誰もいない。
「ふむ、どれ、ではワシが!」
嬉々としたシワシワの手が伸びてくる!
「シャアアアアアアッ!」
「なっ!?」
慌てて手を引く一の君。
「ふふっ」
思わず笑ってしまうエリ・ナリ隊長。
四月世界、最高の頭脳と行動力を有する一の君がネコ一匹に威嚇されて、落ち込んでいるのだ。
一の君のお顔は、明らかに悲しそうで、なんと涙目である。
「猫よ、そう威嚇するな。ワシはお前を助けようとしているのだぞ?この四月世界、最高の賢者がだぞ!」
(はん!嫌なモノはイヤなんでね!)
「シャーッ!」
白黒ネコはびよん!と飛びあがりエリ・ナリ隊長の腕にしがみつく。
「ウニャーン」
(おい、早く抱いてくれよ!いてーんだよ!その……あそこが……)
「君は甘えん坊だな、怪我が酷くなっても知らないからな」
そう言って優しく抱きしめるエリ・ナリ隊長。
(へっ、逆だ!オレ様がイザとなったら、お前ら全員助けてやるぜ!)
「……一の賢者、このまま浄化を進めろ!……データが欲しいんだろう?僕の死でこの呪いが解けるヒントにでもなれば、それでいい……」
「死に急ぐな、勇者よ」
「生きている意味が無い、自由が無い、何もできないのだ……生きているとは言えない……死なせてくれ」
「帝国の王族達が喜びそうなセリフだな?一矢報いるつもりはないのか?」
「どうやって?王族に対して、悪意の目を向けることすらできない、王族の前であろうと見えないところであろうと、僕達はなにもできない」
ここでエリ・ナリが一の君に質問した。
問わずにはいられなかったのだ。
「王族?一の君、かつて雷神王がレッド・ブーツ帝国に討ち入り、王族を皆殺しにしたと聞きましたが」
(え?)
(なんと!)
「事実じゃ、だが呪いは解けなかった。討ち漏らした可能性はゼロとは言えぬが、数日後、また支配が始まった」
「どういうことでしょう?」
「どんなに王族を討っても、必ず復活するのじゃ、そのシステムも分からぬ。それに無闇に王族を討つと帝国の国民が苦しむのじゃ」
「苦しむとは?」
「支配に慣れ、権力者との繋がり切れると不安になり、動けなくなってしまうのじゃ。最悪、心に頼る者がいなくなったことに対し、絶望し、ショック死する者もいた」
「なっ!?じ、自由になったのではないのですか?」
「彼らにとって、支配こそ日常、自由なのじゃ。ただ命令通り動けば、結果がどうであれ、満足に生き、満足して死んでいくのじゃ」
「ば、ばかなっ!?己の意思はないのですか!?」
「そのように国民を仕立てたのじゃ、レッド・ブーツ帝国は。支配に抵抗できる者は少ない」
(支配とは恐ろしいモノだな、ゴンザ)
(はい、人が物扱いされ、それが日常となり物扱いされないと逆に不安になり死んでしまうとは……四月世界は……恐ろしい世界ですな)
次回投稿は未定ですが木曜日の夜になりそうです。
ならなかったら、ごめんなさい。




