第38話 勇者と聖女
おはようございます。
投稿です。
(ゴンザ、聞こえていないよな?)
(賢者とは言えこの世界の賢者、三月世界から来た我々とは魔力量が違いますし、若の呪いは喩え賢者でも解呪は無理でしょうな)
(解けねーかぁ。いいんだか、悪いんだか……お?こいつ、ネコ好きか?)
シワシワのデカイ手が、わなわなと動き出す。
早速シャー、の用意をする若。
一の君が手を伸ばそうとすると、エリ・ナリはまるで子供を庇うように白黒ネコを抱きしめ、ゆるり、と下がった。
(お!?……そ、そんなに抱きしめるな!あ、圧迫されて痛―んだ!)
「実験動物ではありません、この街の大切なネコです」
(!)
「おいおい、ワレは全てを実験動物と見ているわけではないぞ?」
誰がその言葉を信じるの?と、言う言葉をゴクリ、と呑み込むエリ・ナリ隊長。
(ゴンザ、このじーいちゃんの目!なんか邪なモノを感じるぞ!)
周囲には、もう街の住人はいない。
子供達など、一の君を見た瞬間、ダッシュで逃げている。
それ程異様な雰囲気を纏っているのだ。
ここは、話題を作って意識を逸らさなければ!
エリ・ナリはそう思い、疑問をくちにする。
「勇者一行を捉えたようですが?医療ポットに収め、治療中とか?」
「ああ、命は繋いだ、さすがはワシの医療ポット!彼奴らには話がある!ちょうどよい国境警備隊、付き合え!」
「はっ!」
返事をしたのは副長。明らかに隊長を逃がそうとしている。
「お前ではない、お前はポッドに入っておれ!」
一の君が一睨みすると、近くのポッドが音も無く開いた。
「制服のままで構わん、ほれ!」
そう言ってドカッ!と高齢とは思えない速さで副長を蹴り飛ばした!
「おわっ!?」
ひょい、と動く医療ポット!
収納されていた、腕と脚が展開され、まるで捕食者のようにパックン!と副長を呑み込む!
(ゴ、ゴンザアアアアッ!な、なんだ今のっ!?一角?いやカワズ(作者注:カエルさんのことです)みたいに動いたぞっ!)
目がまんまるになる白黒ネコ。
痛さも忘れてエリ・ナリの胸にしがみつく。
(なんだありゃ!?医療ポット!?副長のヤツ!食べられたぞっ!)
(ゴーレムのようですな……一の君とは何者でしょうか?明らかにこの世界の魔科学力を上回っておりますぞ!)
「ん?どうした?」
驚くのは若だけではなかった。エリ・ナリも驚いている。
「こ、これが最新式の医療ポットですか?」
「おお、そうじゃ、今までは騎士団やら専用部隊が持ち運んでいたが、これからは自律、自ら進んで現場に赴くぞい!どうだ?凄いであろう!」
「……これだけの医療ポット、どうやって運び込んだか疑問でしたが、自らここまで来たのですね?」
「わはははっ!首都ホワイトパレスから歩いてここまでな。護衛は必要だが多少の敵なら蹴散らすぞ!ははっ!」
(は?蹴散らす?医療ポットとは?我ら国境警備隊もその内ゴーレムに取って代わる!?)
エリ・ナリ隊長は考えた。戦闘用医療ポットとか作り出したりするのでは?と。
「ついて参れ!」
一の君の後について行くエリ・ナリ隊長。
(おい、ゴンザ、なぜオレを放さない?)
(さあ?お守りでしょうか?)
(はぁ?なんだよそれ!)
「これが勇者御一行の医療ポットだ。まだ完全回復はしていないが……開けるわけにはいかんなぁ」
「それは呪符の分離ができていないからですか?」
「そうじゃ……このワシの力をもってしても、この呪符の解除はむずかしい……哀れな……勇者、聖女、御一行殿……」
(ゴンザ、解呪は無理か?)
(不可能でしょうな)
「一の君、そもそもどんな呪符なのです?」
(お、いい質問じゃん!)
「血に溶け込む呪符、呪いじゃ、血に溶け込むから分離が難しい。隊長、そもそも血液はどうやって作られる?」
「え!?血、ですか?……??」
(若、お教えしましたよね?)
(確か骨だったよな?ゴンザ)
「血は骨から作られる」
「え?骨は硬く、とても液体を作るようには見えませんが?」
「見かけではない、ということじゃ。この呪符は血の次に骨を支配する」
「!……恐ろしい呪符ですね」
「ああ、だが考えたヤツは天才じゃな。そして最後に意識を支配する。決して逆らえない民の完成じゃ。命令は必ず実行される、全てが支配者に逆らえない。支配者にとっては最高の呪符じゃな」
「逆らうこと自体できないと?」
「そうじゃ、聖女は外交の性接待に利用され、勇者は見世物として弄ばれる。己の意思とは関係無しにな」
「一の君!」
慌てるエリ・ナリ隊長。
ポッド内の勇者と目が合ったからだ!
「……すまんな、勇者。ここで話す会話ではなかったな」
「……いえ、事実ですよ、一の賢者」
ポッドから警告音が響き出す。
「一の君、これは?」
「……僕らは一の賢者の確保、できなければ殺害の命令を受けている」
(……ゴンザ)
(はい)
(せいせったいって、なんだ?)
(……若、今は勇者を抑えるのが先では?)
「ワシの確保?殺害?勇者御一行よ、そのポッドからは出られぬよ、喩え勇者でも」
「!……デマカセヲ」
その声はもう勇者の声ではなかった。
次回投稿は未定です。




